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甘いひととき

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「どうしたんだ、これ?」

 いつもの二人のお茶の時間。イリムが盆にのせてきたのは大量のチョコカップケーキだった。

「えへへ、村の女の子に教えてもらって作ったんだ」

 実に楽しそうな笑顔。どうやら一緒に作ってきたらしい。少しだけ胸がざわつくのを気付かないふりをした。

「……まったく、変に期待させると後で傷つけるぞ」

 彼に気のありそうな女の子たちの顔がいくつか浮かんで、思わずため息をつく。

「期待? なんのこと?」

「……いや、なんでもない。それで、どういう風の吹き回しだ?」

 きょとんと小首を傾げる姿に、彼女たちの好意が全く伝わっていないことを悟る。だめだ、こいつは全くわかっていない。

「うん、今日は大事な人とチョコ食べる日なんだって」

「……そうか」

 今日がどんな日なのか、一応いわれは聞いてきたらしい。

「だからね、グジムといっぱい食べようと思って」

「……俺と?」

「うん!思い切り甘い時間にする日なんだって」

「あ……甘い時間って……」

 きらめくような笑顔から飛び出した、いきなりの爆弾発言に思わず目を白黒させる。それはいったいどういう意味だ……

「だからお砂糖は倍にしたよ!」

「……それ、甘いの意味が違うぞ……」

 ……やはり、こいつは全くわかっていない。全くわかっていないぞ。
 彼に想いを寄せているであろう少女たちに、俺は心の中で合掌した。


※バレンタインなので甘々です(笑)
イラストはきせかえアプリのピュアニスタで作成しました。
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みんなの感想(1件)

ツクヨミ
2023.11.30 ツクヨミ

イラストのイメージでほんわかな想像ができました♪
鈍感な可愛さは罪ですね〜( ̄▽ ̄)

歌川ピロシキ
2023.12.04 歌川ピロシキ

感想ありがとうございます!
学校行事続きでお返事がおそくなり、大変申し訳ありません。
この二人、本編ではハードな目にばかり遭っているので、プライベートではほのぼのしてもらいました(n*´ω`*n)
イリムの天然っぷりにグジムもやきもきしていることでしょう。

解除
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