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大福とライスバーガー
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私は株式会社ベルフィーユジャパンで経理を担当している26歳、女、いたって健康です!
健康ではあるけれど、少し、いや、かなり?太めの体型でして…。
父からは『米屋の娘として最良の体格!!』と絶賛され、同じ様な体型の母には『女の子は少し太目な方が可愛いわよ』と甘やかされています。
きっと、世の中の女性たちは恋愛のためにダイエットをしたりするのだろうけど、私はそれよりも食べる事が幸せ♡
お米のない生活なんて考えられません!
名は体を表す、って言葉があるけれど
私のあだ名は自分でもピッタリだなって思っちゃいます。
【大野 福子】みんなは私を『大福』と呼びます。
美味しいですよね、大福。
スタンダードな大福も、こし餡でも、粒あんでも、塩豆大福でも、何でも好きです。あぁ…ヨダレが出ます……。
朝ご飯が足りなかったのかな…、お腹が空いて来ましたね。
ちょっと、休憩室で午前中のおやつタイムにしようかな。
我が社には嬉しいことに、お昼休憩以外にも午前・午後にそれぞれ15分ずつ休憩時間が設けられています。
先代社長が導入したらしいです。素晴らしいですね。ヨッ!社長!!
「今から午前休頂きます」
経理部の皆さんにペコリと頭を下げると、今日のオヤツは何かと問われます。今日は我が家特製のライスバーガーですよ。
もちろんお昼ご飯とは別に、です!
「この甘辛のタレが美味しいんだよねぇ~」
あぁ、麗しのライスバーガー…
牛肉とゴボウを甘辛く煮付けた具材を、バンズに見立てた米飯を圧縮したもので挟んだ私の大好物の一つです。
もちろん、父が自信を持ってお薦めするお米を使っています。フライパンで焦げ目が少しつくくらい焼いたので、お米のサクサクとしたおコゲの食感が更に食欲を唆ります。
くぁ~口の中が美味しいで埋め尽くされるよ~~♡幸せ~♡
ガランとした休憩室でライスバーガーに齧り付いていると、自販機に商品を補給に来た飲料メーカーの人が入って来ました。
社内の女子から「強面だけど格好良い!」と囁かれている人です。
私と目が合うと、ペコリと会釈をしてくれます。
確かに、人相が悪いですね。顔色も悪いし…ちゃんと食べているのでしょうか?
でもでも、礼儀正しい人は良い人です。因みに、食べ物をくれる人はもっと良い人です!
ライスバーガーを頬張りながら、私もお辞儀を返します。
ぐぅぅぅぅぅ~
飲料メーカーのお兄さんは、クンクンと匂いを嗅ぐ仕草をして、お腹を盛大に鳴らしました。
「…」
「…」
「食べますか?」
「…え」
夕方休に食べようと思っていた塩ダレ味のライスバーガーの包みを、苦渋の決断で差し出しました。
「…や、悪いっス」
「そんな事言わずに、どうぞ!」
うぅぅ…。これは豚バラを塩ダレでコーティングしてレタスも挟んだ一品で、今食べている牛肉ゴボウと二つで一対と言って良いほどの存在…!!
でも、このお兄さんお腹空いてるみたいだし、人命救助だと思って我慢せねば……!
自分の食欲とせめぎ合いながらも包みを渡そうとしたのに、お兄さんに断られてしまいました。
そうなってくると、こちらは意地になってしまいます。
「さすがに受け取れないっス。お気持ちだけで」
「いえいえいえ!空腹は人生で一番の不幸ですよ!気持ちでお腹は膨れません!良いからどうぞ!」
「ぶふっ」
「笑い事じゃないですよ!お兄さん、朝ご飯は食べましたか?」
「や、食ってない…です」
「ダメですよ!もしも今、突然死んじゃったら、お兄さん空腹のまま死んじゃうんですよ?悲しくないですか?悔しくないんですか?」
「…俺、そんなに食い物に興味ない…っス」
「え゛ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
思わず大声を出してしまいました。
だって、食べ物に興味がないって、ないって…。
「信じられない…。生きる事は食べる事、食べる事は生きる事じゃないですか!!そんなんだから顔色が悪いんですよ!…ちょっと、聞いてますか!?」
「…は……い…………」
お兄さんは口元を掌で覆いながら、笑い声を押し殺しつつも答えてくれます。
押し殺しきれずに漏れてますよ、お兄さん。『ぶくく』って小学生みたいな笑い声が!
何がそんなにおかしいんでしょうか。こっちは衝撃の発言で一大事だと言うのに!
「だから、これを、こうして…」
私は握り締めていた包みを手早く外し、息を吸い込む為に手をどけたお兄さんの口へ押し込みます。
「こうだ!!!」
「んぐっ」
「しっかり味わって食べて下さいよ~。お米を選んだのは父、お米を炊いて丸めたのは母、そしてそれをこの形にしたのが私です!我が家、大野家の集大成ですっ!!!」
むんっ、と鼻息が荒くなってしまいました。
お兄さんは目をパチクリしながらも口を動かしています。
やれやれ、世話が焼けますね。最初から素直に食べてくれたら良いのに…。
ふぃ~、と一仕事終えた気持ちで息を吐くと、不意にお兄さんに腕を掴まれました。
あぁ!私の幼気な二の腕のお肉ちゃんが捕まりました!!
急に食べ物を突っ込まれて怒ったんでしょうか…。さっきよりも人相が悪くなってしまった気がします………。
今更ながらビクビクして様子を伺っていると、お兄さんはビックリするくらい優しい笑顔を浮かべました。
あ、笑うと可愛いんだぁ、お兄さん…
「すっげぇウマイ!ありがとう!!」
にひひ、と笑うお兄さんが信じられない程に可愛くて、危うく放置したままの牛肉ゴボウライスバーガーまで差し出すところでした。
健康ではあるけれど、少し、いや、かなり?太めの体型でして…。
父からは『米屋の娘として最良の体格!!』と絶賛され、同じ様な体型の母には『女の子は少し太目な方が可愛いわよ』と甘やかされています。
きっと、世の中の女性たちは恋愛のためにダイエットをしたりするのだろうけど、私はそれよりも食べる事が幸せ♡
お米のない生活なんて考えられません!
名は体を表す、って言葉があるけれど
私のあだ名は自分でもピッタリだなって思っちゃいます。
【大野 福子】みんなは私を『大福』と呼びます。
美味しいですよね、大福。
スタンダードな大福も、こし餡でも、粒あんでも、塩豆大福でも、何でも好きです。あぁ…ヨダレが出ます……。
朝ご飯が足りなかったのかな…、お腹が空いて来ましたね。
ちょっと、休憩室で午前中のおやつタイムにしようかな。
我が社には嬉しいことに、お昼休憩以外にも午前・午後にそれぞれ15分ずつ休憩時間が設けられています。
先代社長が導入したらしいです。素晴らしいですね。ヨッ!社長!!
「今から午前休頂きます」
経理部の皆さんにペコリと頭を下げると、今日のオヤツは何かと問われます。今日は我が家特製のライスバーガーですよ。
もちろんお昼ご飯とは別に、です!
「この甘辛のタレが美味しいんだよねぇ~」
あぁ、麗しのライスバーガー…
牛肉とゴボウを甘辛く煮付けた具材を、バンズに見立てた米飯を圧縮したもので挟んだ私の大好物の一つです。
もちろん、父が自信を持ってお薦めするお米を使っています。フライパンで焦げ目が少しつくくらい焼いたので、お米のサクサクとしたおコゲの食感が更に食欲を唆ります。
くぁ~口の中が美味しいで埋め尽くされるよ~~♡幸せ~♡
ガランとした休憩室でライスバーガーに齧り付いていると、自販機に商品を補給に来た飲料メーカーの人が入って来ました。
社内の女子から「強面だけど格好良い!」と囁かれている人です。
私と目が合うと、ペコリと会釈をしてくれます。
確かに、人相が悪いですね。顔色も悪いし…ちゃんと食べているのでしょうか?
でもでも、礼儀正しい人は良い人です。因みに、食べ物をくれる人はもっと良い人です!
ライスバーガーを頬張りながら、私もお辞儀を返します。
ぐぅぅぅぅぅ~
飲料メーカーのお兄さんは、クンクンと匂いを嗅ぐ仕草をして、お腹を盛大に鳴らしました。
「…」
「…」
「食べますか?」
「…え」
夕方休に食べようと思っていた塩ダレ味のライスバーガーの包みを、苦渋の決断で差し出しました。
「…や、悪いっス」
「そんな事言わずに、どうぞ!」
うぅぅ…。これは豚バラを塩ダレでコーティングしてレタスも挟んだ一品で、今食べている牛肉ゴボウと二つで一対と言って良いほどの存在…!!
でも、このお兄さんお腹空いてるみたいだし、人命救助だと思って我慢せねば……!
自分の食欲とせめぎ合いながらも包みを渡そうとしたのに、お兄さんに断られてしまいました。
そうなってくると、こちらは意地になってしまいます。
「さすがに受け取れないっス。お気持ちだけで」
「いえいえいえ!空腹は人生で一番の不幸ですよ!気持ちでお腹は膨れません!良いからどうぞ!」
「ぶふっ」
「笑い事じゃないですよ!お兄さん、朝ご飯は食べましたか?」
「や、食ってない…です」
「ダメですよ!もしも今、突然死んじゃったら、お兄さん空腹のまま死んじゃうんですよ?悲しくないですか?悔しくないんですか?」
「…俺、そんなに食い物に興味ない…っス」
「え゛ーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
思わず大声を出してしまいました。
だって、食べ物に興味がないって、ないって…。
「信じられない…。生きる事は食べる事、食べる事は生きる事じゃないですか!!そんなんだから顔色が悪いんですよ!…ちょっと、聞いてますか!?」
「…は……い…………」
お兄さんは口元を掌で覆いながら、笑い声を押し殺しつつも答えてくれます。
押し殺しきれずに漏れてますよ、お兄さん。『ぶくく』って小学生みたいな笑い声が!
何がそんなにおかしいんでしょうか。こっちは衝撃の発言で一大事だと言うのに!
「だから、これを、こうして…」
私は握り締めていた包みを手早く外し、息を吸い込む為に手をどけたお兄さんの口へ押し込みます。
「こうだ!!!」
「んぐっ」
「しっかり味わって食べて下さいよ~。お米を選んだのは父、お米を炊いて丸めたのは母、そしてそれをこの形にしたのが私です!我が家、大野家の集大成ですっ!!!」
むんっ、と鼻息が荒くなってしまいました。
お兄さんは目をパチクリしながらも口を動かしています。
やれやれ、世話が焼けますね。最初から素直に食べてくれたら良いのに…。
ふぃ~、と一仕事終えた気持ちで息を吐くと、不意にお兄さんに腕を掴まれました。
あぁ!私の幼気な二の腕のお肉ちゃんが捕まりました!!
急に食べ物を突っ込まれて怒ったんでしょうか…。さっきよりも人相が悪くなってしまった気がします………。
今更ながらビクビクして様子を伺っていると、お兄さんはビックリするくらい優しい笑顔を浮かべました。
あ、笑うと可愛いんだぁ、お兄さん…
「すっげぇウマイ!ありがとう!!」
にひひ、と笑うお兄さんが信じられない程に可愛くて、危うく放置したままの牛肉ゴボウライスバーガーまで差し出すところでした。
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