ライバルとヒロインの関係性

山田 ぽち太郎

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仕組まれたイベント

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菜々花に華麗な土下座を披露されてから一週間、瑠璃と菜々花そして圭人に文吾も同じ場所に居た。
もちろん、瑠璃の働きかけである。

「瑠璃先輩、そろそろ自己紹介でも…?」

おずおずと申し出る圭人の視線の先には、静かに腕組みをした文吾が立っている。
今日も今日とてスリーピーススーツだ。
彼のクローゼットには私服という概念が存在しないのだろうか。

「あぁ、紹介するわね。こちらは文吾叔父様よ。私の母の弟なの」
「いつも瑠璃がお世話になっているね。君は瑠璃の後輩かい?」
「アルバイト先の後輩の小鳥遊 圭人です。瑠璃先輩には僕のほうこそお世話になっています!!」

牽制するような態度の文吾に臆することなく、圭人はハキハキと答えた。
そして、今日はよろしくお願いします!と綺麗なお辞儀をしてみせる。

「あ…、わ、私は、瑠璃り…瑠璃さんと仲良くさせて…いた、頂き…」

挙動不審な菜々花が顔面を真っ赤にしながら蚊の鳴くような声で話し出す、だが、悲しいことに文吾までその声は届いていない。
仕方がないわね、と瑠璃は菜々花の背中に手を当てると、彼女を一歩前に出してから文吾に声をかけた。

「文吾叔父様、この子は小鳥遊くんの幼馴染の橘 菜々花ちゃん。名前の通り、綺麗な菜の花色の瞳でしょ?」
「…よ、よろし…っく、お願いしゅましゅっ!!!!!」

ブンッと効果音が付きそうなほどの勢いをつけて、菜々花は直角に頭を下げる。
瑠璃が菜々花の瞳を引き合いに出したのに、そのまま地面と睨めっこしていては、文吾の少ない興も覚めると言うものだ。
本当に仕方のない子ね、と菜々花の頭を2.3度撫でてやり、瑠璃は文吾へ目くばせをする。

「この子、文吾叔父様があまりにも素敵だから緊張しちゃってるの。優しくしてあげてね?文吾叔父様」
「…あぁ」

文吾は、菜々花には聞こえないように小さくため息を吐くと、できるだけ優しい声を出した。

「菜々花さん顔を上げてごらん。せっかく瑠璃が紹介してくれた、君の美しい瞳が見えないだろう」

表情には出さなかったが、瑠璃は叔父の気障きざなセリフに内心身震いをしていた。
ゲームのキャラだから、と頭では分かっていても、砂を吐くような甘い言葉に眩暈さえ覚える。

(今日一日の辛抱よ。私たちの未来の為に頑張らなくちゃ…)

瑠璃は文吾の言葉で顔の赤みを増した菜々花と、胡散臭そうな目を文吾に向ける圭人を見つめて決意した。

四人は文吾の運転で、デートスポットと名高いテーマパークに来ている。

「今日は保護者役を頼んでしまってごめんなさい。でも文吾叔父様のお陰で楽しめそうだわ」
「瑠璃の頼みなら何てことはないさ。しかし、瑠璃もまだまだ子供だな、テーマパークに行きたがるなんて」
「あら、私はいつまでも叔父様にとって可愛い姪っ子でしょう?」
「違いない。瑠璃、お土産が欲しいときは遠慮なく声をかけなさい。何でも買ってやるぞ」
「ふふふ。あの大きなテディベアでも?」
「勿論だ。瑠璃が望むならこのパーク中のぬいぐるみを買い占めてやろう」
「やだ、叔父様ったら!」

アハハハハ、ウフフフフと大変メルヘンな空気を振りまきながら、瑠璃はいつも通り中身のない会話を繰り広げて文吾と軽いスキンシップをとる。
すると文吾は気分を良くして、極上を笑みを浮かべるのだ。
その極上の笑みを浮かべながら、震えるほどの美声で菜々花に囁いた。

「あぁ、瑠璃の言う通り、春の川原を閉じ込めたように輝くような瞳だね。美しい」

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