香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)

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第一章 後宮の出会い

香(コウ)一族の秘密

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 昔、香 麗然コウ レイランたちが生まれるよりも遥か昔。ここ、天欄テンランコクは、病魔に蝕まれていた。國民の半数が謎の病に犯され、國は滅亡の一歩を辿っていた。
 そんなとき、どこからともなく、一人の少女が現れる。彼は天欄テンラン國にはない、薄い髪色と瞳をしていた。彼は不思議な香を使い、病原菌を突き止めたと言われている。そして、病気で死した者の無念を次々と解決していき、遺族の気持ちを和らげたという話があった。
 彼女がどこから来て、なぜ、そのような不思議な香を持っていたのか。それは未だにわかっていない。

 ただ、今となってはコウ一族というものは忘れさられた存在になっていた。彼らの名すら記憶、歴史からも消えている。
 唯一残されているのは月のような髪色。そして、土にも似た色合いの瞳を持つことだけ。それらが國の中で密かに、ひっそりと知られるだけだった。




 
「──文献に載っていたコウ一族については、それだけ。もっと言うなら、香を操るということ……」

 自らを香一族と名乗る少女に、青年は怪訝な顔を向ける。

「それ自体が、人の身技ではないと聞く」

「そりゃあ、そうでしょ? 香を自在に操るなんて、どう転んでもおかしなことだもの。でも何で、そこまで知ってるの?」

「…………」

 香 麗然コウ レイランはいつもと変わらない様子で、彼からの返事を待った。けれど、待てども青年からの応えなどない。
 青年を見れば、深刻そうに眉を歪めている。ぶつぶつと何かを呟きながら、空を仰ぎ見てはため息をついていた。

(……変な人)

 今のうちに退散しよう。そう考え、風呂敷を背負い直した。けれど……

「ぐえっ!?」

 風呂敷を後ろから引っられてしまう。一瞬だけ息が詰まり、涙が目に溜まった。

「ちょっ…何すんだべさ!?」

「あ、いや……すまない」

 やってしまった本人の青年は罰が悪そうにしている。申し訳ないといった様子だ。何かを言いたげにしている。目を泳がせては、しどろもどろさせていた。

「……ハッキリ言ってけろ。おらみたいな田舎もんに、妃なんて似合わんって」

 香 麗然コウ レイランはただ、真実を言う。諦めというよりも、初めから期待をしていなかった。そんな瞳をする。
 それでも受けなければいけないのだと、ぼそっと呟く。
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