香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫

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睡蓮の夢

鯉の願い

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『亀のおじいちゃんを慰めてあげて。それから、ボクたちに毎日、ご飯をくれるあの子。金明ジンミン妃って言ったけ? あの子は絶対に、こんなことをしない。だから、あの子の汚名……晴らし……あ……』

 言葉を最後まで紡ぐことなく、鯉の魂は天へと昇っていく。そして鯉の背中に乗っている線香の煙が消えていった。瞬間、【もち】の毛並みと瞳の色が元に戻る。

「…………」 

 元気に周囲を飛び回る二匹のシマエナガに微笑みかけ、すぐに真剣な面持ちになった。鯉の亡骸むくろへ向かって、深々と頭を下げる。そして起き上がり、鯉を両手に抱えて部屋を出て行った。

 □ □ □ ■ ■ ■

 部屋の外に出ると、廊下で曹朱ツァオジュが待ち構えている。彼は香 麗然コウ レイランの姿を見るなり静かにやってきた。

「何か、わかったか?」

「ええ、あの池の鯉たちは、金明ジンミン妃に随分ずいぶんと可愛がられていたようね。金明ジンミン妃が、そんなことするはずがないって。汚名を晴らしてほしいって言ってたわ。それから……」

 二人は横に並びながら廊下を歩く。道行く兵たちが、彼の顔を見るたびに拱手した。曹朱ツァオジュは慣れた様子で、出会うたびに頷く。

 (この人、一般の兵よね? それなのに……もしかして、かなり偉い地位にいる兵なのかしら?)

 余計な詮索と思いつつも、ついつい考えてしまった。

「……ん? どうした?」

「あ、ううん。何でもないわ。あっ、この子を返すわね。他の子たちと一緒に、埋葬まいそうしてあげて」

 抱いていた鯉を彼に渡す。

「話を戻すけど……あの池に亀なんているのかしら? この子が言ってたのよ。亀のおじいちゃんが、寂しがってるって」

「亀? ……どう、だろうな? 俺はあまり、あの池には行かないからな。興味もないし」

「あら、そうなの? 亀とか、鯉とか、可愛いと思うのだけれど……」

「いや。可愛い、可愛くないの問題ではなく。単に、興味がないだけだ。それよりも亀か……まあ、探してみるか」

 頭をポリポリ搔いた。ぶっきらぼうに口を尖らせ、盛大なため息をつく。

「じゃあそっちの方は、あなたにお任せするわ。私は鯉たちを殺した毒の方を探ってみるわ」

「そういえば、そんな話をしていたな。そもそもあの毒は、いったい何なのだ?」

 彼からの質問に、香 麗然コウ レイランは答えることができなかった。首を左右に振り「時期が悪かったから」と、顎に手を当てて答える。

「時期?」

「ええ、そうよ。線香を使うにしても、魂の声を聞きやすい時期っていうものがあるの。清明節せいめいせつって知ってるかしら?」
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