香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)

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金明《ジンミン》妃の侍女

合格、不合格

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 他の女性たちは大きな扉の前だったり、他にいくつかある部屋の前に集められた。

 (……これは、いったいどういうことだっぺ?)
  
 たまたま一緒にいる女性と顔を見合せる。
 そのとき、出入口の扉が開いた。そこにいた数人の女性たちは兵たちに道を塞がれ、邸の外へと追いやられていく。

「廊下にいる二名、そして各部屋の前の者たち。君たちは合格だ。よって、これからそれぞれの配属先へと案内する。ただし。出入口の前にいる貴殿らは不合格者である。早々に帰られよ!」

 その瞬間、有無をいわさずに扉が閉まった。扉の外からは抗議、そして泣き崩れる娘たちの声がする。けれど扉は開くことはなかった。

 (あー……落とされた子たちの悲痛な叫びですら、この人たちには聞こえてないのね?)

 少しだけ、不合格者たちに同情してしまう。

 邸の中に残っている兵たちは感情を見せない。女性の泣き声など毎年のことだと言わんばかりに、淡々と次へ進んでいった。

香 麗然コウ レイラン楊凛ヨウリンの二名はこちらへ。これから仕える妃、金明ジンミン妃の元へと案内する」

「え!? 金明ジンミン妃!? ほ、本当だべか!?」

 黙々と業務をこなす兵をよそに、香 麗然コウ レイランは両手を挙げて喜ぶ。ともに合格した楊凛ヨウリンという少女と一緒に、廊下を渡っていった。

「あ、そういえば……おら……じゃなくて。私は香 麗然コウ レイラン、あなたは?」

楊凛ヨウリンです」

 妃の元へつく間の自己紹介をする。

 楊凛ヨウリンという少女はまだ幼く、年の頃は十二歳前後のよう。背は低く、香 麗然コウ レイランの肩よりも下だ。少しばかりのふくよかな体が特徴の、かわいらしい少女だった。
 丁寧な口調。そして女の子らしいおしとやかさがあり、香 麗然コウ レイランは悶えてしまう。

「んんー! かわいいっぺ。あ、私は十五歳なんだ。楊凛ヨウリンは、十二歳ぐらいかしら?」

「え? あ、えっと……わ、私も十五歳、です」

 恥ずかしそうに言った。

 香 麗然コウ レイランは彼女と視線を合わせ、ともに頑張ろうと誓う。

 そうこうしていると、前を歩く兵の足がとまった。踵を返し、香 麗然コウ レイラン楊凛ヨウリンを交互に凝望する。そして新たな扉を背に、彼女たちへと忠告をした。

「ここから先にいるのは、皇帝の妹君でもあらせられる金明ジンミン妃だ。君たちはこれから、金明ジンミン妃の侍女として働くことになる。くれぐれも、失礼のないように」

 すっと、二人の横を通りすぎる。振り返ることなく、香 麗然コウ レイランたちを置いていってしまった。

「……ど、どうしましょう?」

「どうするも何もないわ。さあ楊凛ヨウリン、これから頑張りましょう!」

 率先して、眼前にある扉をたたく。すると中から「入りなさい」という、女性の声が聞こえた。
 二人は意を決して扉の中へと足を踏み入れる。
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