香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫

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誘拐事件勃発

決意

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 金明ジンミン妃は強く首を左右にふった。そして頭を下げ、賊を捕えた兵たちを見送る。
 曹朱ツァオジュきびすを返した。すると……


「…………あ、あの!」

 金明ジンミン妃が声を上げる。少女へと向けば、金明ジンミン妃は唇を噛みしめていた。

曹朱ツァオジュ様、わたし──」


 ■ ■ ■ □ □ □

 妃誘拐事件から一週間が経った。
 香 麗然コウ レイランは殴られたこと、誘拐されたことが精神的に参ってしまったよう。しばらくの間、高熱で寝込むこととなった。そして一週間ほどが経ち、ようやく体調も回復してきた頃……

「お姉様、氷、ここに置いておきますね?」

 桃色の服を着た幼い少女が彼女の部屋へと訪れ、水を置いていった。おけの中にある布をぎゅっと絞り、それを香 麗然コウ レイランの額へとつける。
 この少女の名は金明ジンミン。かわいらしい笑顔が似合う幼い少女だ。
 
「ありがとう……っていうか、もうほとんど熱は治ったんだけど」

「駄目です。しっかりと寝てください」

「はーい」 

 渋々と、布団の中へともぐる。ふと、あることを思い出し、顔をひょっこりと出した。

「……そういえば、妃、辞めたんだって?」

「はい。わたしには文武不相応ですし……元々、妃になりたかったわけでもありませんから」

「そっか。それで今は、侍女見習いってわけ?」

「ふふ。はい」

 金明ジンミンは子供らしい笑顔で笑う。

 金明ジンミンは亡き皇帝の命を受け、妃になっていた。けれどそのことが原因で、少女は後宮に潜む闇に巻き込まれてしまう。幸いなことにその事件が切っ掛けで、金明ジンミンは妃を辞退する決意を固めることができた。
 本来ならば妃を辞めた時点で後宮を去らなければならないのだが……前帝の娘でもあり、現皇帝の異母妹という立場から、特別に後宮に住むことを許された。
 そして希望だった侍女になったという。

「憧れていた権姜クォンカン、そしてお姉様、二人に追いつきたいんです。今のままのわたしじゃ、本当に何もできなくて……」

 二人の優しさ。そしてまことの強さを知る少女だからこそ、地位よりも夢を追いかけることを選んだのだろう。

 香 麗然コウ レイランは「そっか」と、微笑んだ。
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