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第三章 雪山へ
一族の秘密
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『一応、言っておくわね? 曹朱、あんたは國のためにとか言っているけど……この山の結界を解除したら、封印されていたあるものが解き放されるわ。そうなったら、人間じゃあ対象できなくなるわよ?』
この山はある者を封印しておくために結界を張っている。それを解除するということは、その存在を解き放つ意味を持っていた。彼ら、あるいは彼女たち人間に、封印された者を倒す力があるのか。
いつものおちゃらけた、かわいい鳥の姿はない。あるのは小さいけれど凛々しい、美しい翼を持つ何かだった。
『言っておくけど、あたしたちの助けは期待しないでよ? それこそ専門外のことだし、用途が違うもの』
「用途?」
【やきとり】は胸をはる。そして香 麗然の手のひら乗った。つぶらな瞳で人間を見つめ、ジュリリと鳴く。
『そう。用途よ。あんたも知ってるでしょ? あたしたちは、死者の声を聴くの。そして、あの世へと送る。それがあたしたち、シマエナガの役目なのよ』
ジュリリ、ジュリリと、何度も鳴いた。
香 麗然は自分の一族について、最低限のことしか知らない。教えてもらえないからだ。後宮へ来たのも修行の一貫として、母に命令されたからにすぎない。
それでも後宮で過ごした日々は彼女にとっては本物だった。たくさんの出会いや別れ。ときには体をはって少女を助けたときもあった。それらを体験したことにより、香 麗然は少しずつ成長できている。そう実感していた。
けれどそれは表面的なものにしか過ぎず、一族の大きな秘密には辿り着けていない。
「【やきとり】、【もち】、教えてほしいわ。私たち一族って、本当は何なの? 線香を使って死者の魂を導く。そう、聞かされていたけど……本当に、それだけなのかしら?」
『ええ。そうよ。もっともそれは、あんたたち人間に対して。だけどね』
「……?」
意味深な言葉だった。けれど香 麗然にはその言葉の意味がわからないまま。
小首を傾げながら、【やきとり】のふわふわな羽毛を撫でた。
すると【やきとり】はにっこりと微笑み、玄偽を凝視する。
玄偽は頷き、背負っている琴を雪の上に置いた。腰を下ろして座り、琴を弾きはじめる。
この山はある者を封印しておくために結界を張っている。それを解除するということは、その存在を解き放つ意味を持っていた。彼ら、あるいは彼女たち人間に、封印された者を倒す力があるのか。
いつものおちゃらけた、かわいい鳥の姿はない。あるのは小さいけれど凛々しい、美しい翼を持つ何かだった。
『言っておくけど、あたしたちの助けは期待しないでよ? それこそ専門外のことだし、用途が違うもの』
「用途?」
【やきとり】は胸をはる。そして香 麗然の手のひら乗った。つぶらな瞳で人間を見つめ、ジュリリと鳴く。
『そう。用途よ。あんたも知ってるでしょ? あたしたちは、死者の声を聴くの。そして、あの世へと送る。それがあたしたち、シマエナガの役目なのよ』
ジュリリ、ジュリリと、何度も鳴いた。
香 麗然は自分の一族について、最低限のことしか知らない。教えてもらえないからだ。後宮へ来たのも修行の一貫として、母に命令されたからにすぎない。
それでも後宮で過ごした日々は彼女にとっては本物だった。たくさんの出会いや別れ。ときには体をはって少女を助けたときもあった。それらを体験したことにより、香 麗然は少しずつ成長できている。そう実感していた。
けれどそれは表面的なものにしか過ぎず、一族の大きな秘密には辿り着けていない。
「【やきとり】、【もち】、教えてほしいわ。私たち一族って、本当は何なの? 線香を使って死者の魂を導く。そう、聞かされていたけど……本当に、それだけなのかしら?」
『ええ。そうよ。もっともそれは、あんたたち人間に対して。だけどね』
「……?」
意味深な言葉だった。けれど香 麗然にはその言葉の意味がわからないまま。
小首を傾げながら、【やきとり】のふわふわな羽毛を撫でた。
すると【やきとり】はにっこりと微笑み、玄偽を凝視する。
玄偽は頷き、背負っている琴を雪の上に置いた。腰を下ろして座り、琴を弾きはじめる。
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