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女の戦い
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「で、これどういう状況?」
セッカの部屋に置かれている、セッカの体にはあまりにも巨大すぎるベッド。
その真ん中に俺は仰向けで横になり。
その右腕をフェリアス。左腕をセッカが枕にするようにして横になっている。
「見ての通り、腕枕よご主人様。両手に花、しかも二人とも王族だなんて、光栄に思いなさい?」
「いや、確かに状況だけ見れば身に余る光栄なんだろうけど。 花はないんじゃないか? いくら身に余るといっても、このままだと花を持ってるだけじゃ絶対に溢れないようなものが溢れるぞ?」
「溢れるって何がよ?」
「血」
「物騒ね」
「そう思うならその殺気を抑えてくれよフェリアス……セッカも。姫さまを腕枕って言えば字面はいいかもしれないが、気分的にはギロチンに腕を差し込んでる気分だ」
「ふん、仕方なかろう? 我は大海のごとき器の広さを持つ故、セッカの右半分と眠ることまでは許してやったが。 敵であることは変わらぬ。与えた領土を侵犯せぬように常に気を張っているのじゃ」
おいこいつ今領土って言ったぞ。
和平交渉のために割譲されたのか俺は。
「なにが大海のごとき器の広さよ。 関節決められて泣く泣く承諾したのはどこの誰だったかしら?」
「記憶の捏造はよくないぞフェリアス? 我のヘッドロックに先に音を上げたのは貴様の方じゃっただろうに‼︎?」
ちなみに真相は、互いに技を掛け合った状態でほぼ同時にギブアップを宣言したというのが正解だ。
本当はすごい仲良しなんじゃないだろうかこの二人。
「いい加減にしてくれ二人とも、まさか俺を挟んで朝まで言い争いを続けるんじゃないだろうな? 人狼族の村でも眠らせないなんてひどい扱いを受けたことはなかったぞ?」
「む、むぐぅ」
もちろん嘘だ。
盗賊が襲ってきた場合は、警戒も兼ねて一週間寝ずの番をさせられたこともあるし、仕事を失敗した時は三日睡眠禁止の懲罰を受けるなんてざらなことであった。
そのため一日程度眠らなくても問題はないのだが。
これが毎日続くのもうんざりであるし。
何より、生まれて初めて体験するベッドでの睡眠という好奇心が俺にそんな悪知恵を授けてくれたのだ。
もちろん嘘をつくのはいけないことだ。
だがこんなことセッカが知る由もないし、こう言ってしまえばセッカは逆らうことはできない。
俺がこのギルドに入ったのは待遇改善を約束されたから。
つまりは人狼の村にいた時よりも待遇が悪くなるようならばそれは約束を反故にされたことになる。
当然それはフェリアスにも言えることであり、二人はその言葉に大人しくなる。
「……む、むぅ。 まぁ確かにルーシーの言う通り、このままでは埒があかぬ。今日のところは一時休戦とするか」
「そ、そうね……寝不足はお肌の敵だって言うものね」
「うんうん、夜はしっかり寝るものだ……おやすみ二人とも」
「むぅ……お休みじゃ、ルーシー」
「おやすみなさい、ご主人様」
二人は俺の腕に頭を置き、互いに顔を合わせないようにそっぽを向き、あかりを消す。
静かになったセッカの部屋。
暗闇に身を投じると、途端に存在感を主張し始めるのは、酔ってしまいそうなほど甘く優しい香り。
瞳を閉じれば感じるのは枕の柔らかい感触。
右腕に伝わるフェリアスの絹のようなすべすべとした髪の毛と、左腕に伝わるセッカの綿毛のようにふわふわとした髪の毛の感触。
俺の腹部に乗っているのはセッカの尻尾だろうか。 ふわふわで暖かい。
おまけに、ベッドは俺の体に合わせて沈むようで、なんだか背中から抱きしめられているよう。
多幸多福。
本で読んだことはあるが、理解することができなかったその状況に、俺は抗うことなどできるはずもなく。
自分でも驚くほどあっさりと、深い眠りに落ちていくのであった。
幕間―
「ルーシーは寝たか?」
「みたいね……すごいいい寝顔してる」
その後、スヤスヤとルーシーが寝息を立て始めた頃、セッカとフェリアスの二人は起き上がり睨み合う。
「まさか、あれでおいそれと引き下がるわけあるまいな?」
「もちろん、ここではっきりどっちが上か白黒はっきりさせるわよ」
ルーシーを起こさないように小声で火花を散らす二人は、ベッドを抜け出すと寝間着のまま部屋にある机と椅子に向かい合って座る。
「……ルーシーを起こしては意味がない、不満はあるが取っ組み合いはなし……純粋な飲み比べで雌雄を決しようではないか」
そう言ってセッカはベッドの下から【八塩折(ヤシオリ)】と書かれた酒を取り出しグラスに注ぐセッカ。
「当然よね。深夜を騒がす女に良妻なし、ってやつよ」
それに対しフェリアスは望むところと言わんばかりに、なみなみと注がれたグラスを受け取り、一気に飲み干す。
「……前々からおもってたんじゃが、其方のそのことわざ、一体なんなの? 毎度毎度聞いたこともないんじゃが」
そんなさまを見ながら、セッカはふと浮かんだ素朴な疑問を投げかけると。
「もちろん自作よ?」
フェリアスは空になったグラスを机の上に置き。
自慢げにそう言う。
二人の夜はこうして、とっぷりとふけていくのであった。
セッカの部屋に置かれている、セッカの体にはあまりにも巨大すぎるベッド。
その真ん中に俺は仰向けで横になり。
その右腕をフェリアス。左腕をセッカが枕にするようにして横になっている。
「見ての通り、腕枕よご主人様。両手に花、しかも二人とも王族だなんて、光栄に思いなさい?」
「いや、確かに状況だけ見れば身に余る光栄なんだろうけど。 花はないんじゃないか? いくら身に余るといっても、このままだと花を持ってるだけじゃ絶対に溢れないようなものが溢れるぞ?」
「溢れるって何がよ?」
「血」
「物騒ね」
「そう思うならその殺気を抑えてくれよフェリアス……セッカも。姫さまを腕枕って言えば字面はいいかもしれないが、気分的にはギロチンに腕を差し込んでる気分だ」
「ふん、仕方なかろう? 我は大海のごとき器の広さを持つ故、セッカの右半分と眠ることまでは許してやったが。 敵であることは変わらぬ。与えた領土を侵犯せぬように常に気を張っているのじゃ」
おいこいつ今領土って言ったぞ。
和平交渉のために割譲されたのか俺は。
「なにが大海のごとき器の広さよ。 関節決められて泣く泣く承諾したのはどこの誰だったかしら?」
「記憶の捏造はよくないぞフェリアス? 我のヘッドロックに先に音を上げたのは貴様の方じゃっただろうに‼︎?」
ちなみに真相は、互いに技を掛け合った状態でほぼ同時にギブアップを宣言したというのが正解だ。
本当はすごい仲良しなんじゃないだろうかこの二人。
「いい加減にしてくれ二人とも、まさか俺を挟んで朝まで言い争いを続けるんじゃないだろうな? 人狼族の村でも眠らせないなんてひどい扱いを受けたことはなかったぞ?」
「む、むぐぅ」
もちろん嘘だ。
盗賊が襲ってきた場合は、警戒も兼ねて一週間寝ずの番をさせられたこともあるし、仕事を失敗した時は三日睡眠禁止の懲罰を受けるなんてざらなことであった。
そのため一日程度眠らなくても問題はないのだが。
これが毎日続くのもうんざりであるし。
何より、生まれて初めて体験するベッドでの睡眠という好奇心が俺にそんな悪知恵を授けてくれたのだ。
もちろん嘘をつくのはいけないことだ。
だがこんなことセッカが知る由もないし、こう言ってしまえばセッカは逆らうことはできない。
俺がこのギルドに入ったのは待遇改善を約束されたから。
つまりは人狼の村にいた時よりも待遇が悪くなるようならばそれは約束を反故にされたことになる。
当然それはフェリアスにも言えることであり、二人はその言葉に大人しくなる。
「……む、むぅ。 まぁ確かにルーシーの言う通り、このままでは埒があかぬ。今日のところは一時休戦とするか」
「そ、そうね……寝不足はお肌の敵だって言うものね」
「うんうん、夜はしっかり寝るものだ……おやすみ二人とも」
「むぅ……お休みじゃ、ルーシー」
「おやすみなさい、ご主人様」
二人は俺の腕に頭を置き、互いに顔を合わせないようにそっぽを向き、あかりを消す。
静かになったセッカの部屋。
暗闇に身を投じると、途端に存在感を主張し始めるのは、酔ってしまいそうなほど甘く優しい香り。
瞳を閉じれば感じるのは枕の柔らかい感触。
右腕に伝わるフェリアスの絹のようなすべすべとした髪の毛と、左腕に伝わるセッカの綿毛のようにふわふわとした髪の毛の感触。
俺の腹部に乗っているのはセッカの尻尾だろうか。 ふわふわで暖かい。
おまけに、ベッドは俺の体に合わせて沈むようで、なんだか背中から抱きしめられているよう。
多幸多福。
本で読んだことはあるが、理解することができなかったその状況に、俺は抗うことなどできるはずもなく。
自分でも驚くほどあっさりと、深い眠りに落ちていくのであった。
幕間―
「ルーシーは寝たか?」
「みたいね……すごいいい寝顔してる」
その後、スヤスヤとルーシーが寝息を立て始めた頃、セッカとフェリアスの二人は起き上がり睨み合う。
「まさか、あれでおいそれと引き下がるわけあるまいな?」
「もちろん、ここではっきりどっちが上か白黒はっきりさせるわよ」
ルーシーを起こさないように小声で火花を散らす二人は、ベッドを抜け出すと寝間着のまま部屋にある机と椅子に向かい合って座る。
「……ルーシーを起こしては意味がない、不満はあるが取っ組み合いはなし……純粋な飲み比べで雌雄を決しようではないか」
そう言ってセッカはベッドの下から【八塩折(ヤシオリ)】と書かれた酒を取り出しグラスに注ぐセッカ。
「当然よね。深夜を騒がす女に良妻なし、ってやつよ」
それに対しフェリアスは望むところと言わんばかりに、なみなみと注がれたグラスを受け取り、一気に飲み干す。
「……前々からおもってたんじゃが、其方のそのことわざ、一体なんなの? 毎度毎度聞いたこともないんじゃが」
そんなさまを見ながら、セッカはふと浮かんだ素朴な疑問を投げかけると。
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