変身が出来ないと追放された人狼だけど、剣聖だったので亡国の姫の剣になります

nagamiyuuichi

文字の大きさ
18 / 39

なりそこない

しおりを挟む
「セッカ‼︎」

「あ、あのバカ‼︎? だから油断すんなって言ったのに‼︎」

  飲み込まれていったセッカを救出するためフェリアスは剣を抜き、俺もそれに続くように剣を抜く。

  だが。

【あlk;はふぁkljふぇkj‼︎】

   魔獣塊は不気味な音を立てると、セッカを飲み込んだまま村の中へと引っ込んで行く。

「に、逃げた‼︎? お、おい。 魔獣塊って知能なんてないんじゃなかったのかよ」

  仮に待ち伏せが偶然だったのだとしても、剣を構えた俺たちから逃走した泥の行動は、間違いなく知性が確認できる動きだ。
 
  俺は話が違うとフェリアスを見るが、フェリアスも慌てた表情を見せている。
 
「知らないわよ‼︎少なくとも今までは知能なんてカケラもなかったし……ってかそんなことよりも追いかけるわよ‼︎ ご主人様‼︎」

「あぁもうなんだか嫌な予感がするぞまじで‼︎」

  セッカを飲み込んだ泥の後を追いかけるフェリアスに、俺はそう悪態をつくように叫んで人狼の村へと入る。

「うっ……ひどい」

「そんな……飲み込まれたって……本当だったんだな」
 
  村の中は文字通り泥に飲み込まれていた。

  俺の記憶の通りに立っている建物は何一つなく。 代わりに建物だったものの残骸が村の中央に集められるように泥まみれになって固まっている。

  中央に集まる水たまりならぬ泥溜まり。 
 
  きっとこの泥が村中を駆けずり回り、民家を一つ一つ丁寧に、しかし確実に飲み込んで肥大化をしていったのだろう。

   今、泥は村の中心から入り口付近までひろがっており、まるで一匹の巨大なスライムが如く、中央付近は呼吸をするように盛り上がったり沈んだり泡を吹き出したりをしている。

「これ以上ないってくらいひどい惨状ね……全滅とかいう陳腐な言葉は使いたくないんだけれども……。 全滅って言葉しか思い浮かばないわ」

  フェリアスは顔をしかめながらも、泥の中を歩いていく。

「お、おい。 そんなに泥の中を歩いていっていいのかよ。 魔獣塊ってやつは危険なんじゃなかったのか?」

「それは核に近い部分の話よ。 泥は狐の尾が宿主にした人間の老廃物みたいなものだから。 
 泥自体にはさして毒性があったりするわけじゃないの。 死ぬほど不衛生だけどね」

「老廃物?」

「そう、狐の尾っていうのは、宿主を見つけるとその体を乗っ取って新しい九尾の狐を作ろうとする。 実力や精神力、呪いや穢れに対する耐性が高ければ呪いに飲み込まれることはないんだけれども、一度飲み込まれれば最後。 体がどんどん狐になろうとする。 体の代謝は異常なほど早まり、ありえない形に肉や骨はドロドロに溶けて新しく作り変えられる」

「全然作り変えられているようには見えないけどな」

「ええ、もちろん。呪いに体を奪われるような存在が九尾の尾の願いを叶えることができる訳ないもの。 そういうのはただ呪いに飲み込まれて、呪いと泥を生み出すだけの災厄になる。そうしてなってしまったらあとは、近づくものを飲み込みながらに泥を生み出すだけの化け物よ」

「……うぇ」

  俺は想像しただけで吐き気を催す。
 
  森で見た、いろいろな魔物が複合されたような姿の泥の塊。
 
  目の前にある泥はただの泥だが。

  森の魔獣塊は一体どれほどの被害をうみだしていたのだろう。
 
  今まで気にしてはいなかったが、魔獣塊という存在の恐ろしさがひりひりと伝わった。

  と。

 【ああああぁぁぁ……】

  不意に足元の泥から不意に手が伸び、俺の足を掴む。

 「なっ‼︎? ななななな‼︎」

  泥の深さは足首程度。
 
  しかしその腕は深い泥のそこから這い上がるように伸びてきている。

「きゃっ‼︎? きゃあぁ‼︎ 何よこれぇ‼︎」

「フェリアス‼︎」


  気がつけば俺たちが歩く泥一面に腕が生えて海藻のように揺れており、フェリアスもまた無数に泥から生える腕にその足や服を捕まれ、泥の中に沈みそうになっている。

「くそ‼︎ どうなってんだ一体‼︎?」

  俺は手にもっていた剣で泥から生える腕を切り落としてみるが。

  生まれてくるかのように、泥の中から生えてくる。

「ら、拉致があかない‼︎」

フェリアスはそう叫び、自ら剣で足を掴む腕を切るがそれでも腕はさらに伸びる。

「お、おいおい‼︎? これ本格的にやばいぞフェリアス」

「あぁもう仕方ない‼︎ ご主人様、合図するから一瞬だけ跳んで‼︎」

「跳ぶ? なんで?」
 
「いいから‼︎ 私を信じて‼︎ いくわよ、3……2……1‼︎ 跳んで‼︎」

「ああぁもう‼︎? なんなんんだよ‼︎?」

  フェリアスの言葉の足らない説明に俺は苛立ちながらも、俺はなにかをしようとしているのが理解できたため、言う通り周りの腕をすぐさま切り落としその場でジャンプをする。

  と。

【アイスエイジ‼︎‼︎】

  フェリアスの身につけているペンダントから膨大な魔力が放出され、同時に足元の泥を全て氷漬けにする。

「お、おおおぉ‼︎? や、やったなフェリアス」

  氷漬けにされた腕と泥は、流石にこれ以上動くことはなく、俺は氷の上に着地をすると惜しみなくフェリアスをたたえる。

「大したことじゃないわ……だけど、あの腕は一体……っ‼︎ 避けて‼︎」

  不意に響くフェリアスの声。
 
  俺はその言葉に反射的に前方に跳んで、回避行動を取ると、「チッ」と頭を刃のようなものが掠める音がする。

「なっ……なっ、なな‼︎? 一体なんだ‼︎」

   完全な不意をついた一撃に俺は慌てて背後を確認すると、そこには水たまりより少し大きい程度の泥溜まりがあり、その泥溜まりからカマキリの鎌のようなものが伸びている。
 
  やがて泥溜まりは鎌を吸い込むように吸収すると、なにやら泥人形のように、人の形へと変ぼうする。

  ぽたぽたとどろを垂れ流しながらも、人のように、なにやらこちらの様子を興味深そうに伺う泥人形。

  それは、子供の無垢な姿と、子供の残酷な姿を両方混ぜ合わせたかのよう。

「あれは……思い出した……」

  その存在を前に、フェリアスは苦虫を噛み潰したような渋い顔をする。 

「知ってるのかフェリアス?」

「いやね……見るのは初めてだけど、ごく稀に、本当に一握りなんだけれど。 魔獣塊が知性の多い存在を飲み込み続けた場合……ああして泥も操れるようになることがごく稀にあるって、文献で読んだことがあってさ」

「そんな奴がいるのか?」

「えぇ、人間と同等の知識を有する魔獣塊。文献で見ただけだから見るのは初めてだけど、
 そいつらはこう呼ばれてた。【なりそこない】ってね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

Sランクパーティーを追放された鑑定士の俺、実は『神の眼』を持ってました〜最神神獣と最強になったので、今さら戻ってこいと言われてももう遅い〜

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティーで地味な【鑑定】スキルを使い、仲間を支えてきたカイン。しかしある日、リーダーの勇者から「お前はもういらない」と理不尽に追放されてしまう。 絶望の淵で流れ着いた辺境の街。そこで偶然発見した古代ダンジョンが、彼の運命を変える。絶体絶命の危機に陥ったその時、彼のスキルは万物を見通す【神の眼】へと覚醒。さらに、ダンジョンの奥で伝説のもふもふ神獣「フェン」と出会い、最強の相棒を得る。 一方、カインを失った元パーティーは鑑定ミスを連発し、崩壊の一途を辿っていた。「今さら戻ってこい」と懇願されても、もう遅い。 無能と蔑まれた鑑定士の、痛快な成り上がり冒険譚が今、始まる!

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

RPGのストーリー開始前に殺されるモブに転生した俺、死亡フラグを回避してラスボス助けたら女主人公が現れてなぜか修羅場になった。

白波 鷹(しらなみ たか)【白波文庫】
ファンタジー
――死亡フラグのあるモブに転生した。なぜか男主人公の姿で。 王国に孤児院の子供達を殺された少女ミュライトがラスボスのRPG『プリテスタファンタジー』。 物語後半でミュライトと主人公は互いに孤児院出身であることが分かり、彼女を倒した主人公がその死を悲しむ絶望的なエンディングからいわゆる「鬱ゲー」と呼ばれているゲームでもある。 そして、そんなゲームの物語開始前にミュライトと同じ孤児院に住んでいた子供に転生したが…その見た目はなぜか男主人公シュウだった。 原作との違いに疑問を抱くものの、このままストーリー通りに進めば、ミュライトと主人公が戦って悲惨なエンディングを迎えてしまう。 彼女が闇落ちしてラスボスになるのを防ぐため、彼女が姉のように慕っていたエリシルの命を救ったり、王国の陰謀から孤児達を守ろうと鍛えていると、やがて男主人公を選んだ場合は登場しないはずの女主人公マフィが現れる。 マフィとミュライトが仲良くなれば戦わずに済む、そう考えて二人と交流していくが― 「―あれ? 君たち、なんか原作と違くない?」 なぜか鉢合わせた二人は彼を取り合って修羅場に。 こうして、モブキャラであるはずのシュウは主人公やラスボス達、果ては原作死亡キャラも助けながらまだ見ぬハッピーエンドを目指していく。 ※他小説投稿サイトにも投稿中

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

処理中です...