変身が出来ないと追放された人狼だけど、剣聖だったので亡国の姫の剣になります

nagamiyuuichi

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一難去って

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「す、すげー火力……」

  ぽっかりと穴が開くように泥の上半身部分は蒸発、ジタバタと下半身のみがもがき苦しむように体に残った火を消そうと這いずる。

 だが。

「無駄よな、我の炎が我の許しなく消えることなかろう?」

  セッカはニヤリと笑うとパチンと指を弾く。

  と同時に、残り火はガルドラの体を食い破るようにその体を最後まで貪り尽くす。

「がlk;あbmkqけえ‼︎?」

「死体を操るとは考えたが、剣で切れぬならば燃やせばいい……形が残ってしまうなら蒸発させてしまえば良い。 鉄であろうが人であろうが、霧散させてしまえば呪いもクソもなかろう?」

  悲鳴をあげるガルドラへ悪辣な笑みを向けるセッカは、高笑いをあげながらその体を全て霧散させた。
 
  やがて残ったのは、宝石の砕けた首飾りのみであり。
 
  セッカはそれを踏み潰すと黒い煙のようなものがセッカの中へと吸い込まれていく。

「ねぇルーシー。 本当にあの子についていくつもり? 勇者か魔王かって言われたらあいつ魔王を裏で操ってる邪神の類よ?」

「あぁ、もしかしたら俺は世界終焉の片棒を担がされているのかもしれない」

「誰が邪神じゃ誰が‼︎? 助けてやったというになんじゃその態度はお主ら‼︎ 我がおらんかったら、この泥に飲み込まれてはいそれまでよーであっただろうに‼︎」
 
  振り返ったセッカに俺とフェリアスは顔を見合わせる。

「いや、そもそもの話あんたが迂闊に飲み込まれてなきゃここまで苦戦はしなかったんだよアホギツネ」

「なっ‼︎? なんじゃとぉ‼︎」

「おまけに助けてもらっておいて、俺に飛び蹴りかましてくるし……とんだ雇い主だ」

「むっ‼︎? むぐぅ……」

  ジンジンと痛む後頭部をさすりながら、俺は恨めしげにセッカを睨むと、セッカは額から汗を流してたじろぐ。

「おまけに、格好つけてるけど、さっきの魔法もご主人様の狐の尾を借りてるし。結局ご主人様に頼りきりじゃないあんた。虎の威をかる狐ってまさにこのことね」

「うぐぐぐ……むぅぅう‼︎? そんなことないもん‼︎ 狐の尾を手に入れたからこれからはちゃんと自分一人で使えるもん‼︎」

  フェリアスのトドメと言わんばかりの言葉に、セッカは顔を赤くしながら瞳に涙が浮かぶ。

  通常女性の涙というものに男というものは(それがどんな理不尽なものであろうとも)罪悪感を覚えてしまうという話を本で読んだことがあるのだが。

  不思議なことにその涙には、紙一枚分の罪悪感すら湧いてこない。

「はいはい、泣かない泣かない……まったく、狐のお守りも大変ねご主人様も。 やっぱりこんなの捨てて私のところに来ればいいのに」

「なんだかそっちのほうが正解な気がしてきたよフェリアス……このままじゃセッカに殺されちまいそうだ」

  思えばゲンゴロウに対してもセッカは鋼鉄で後頭部を強打するなどの暴力行為を働いていた。

  ゲンゴロウは慣れていると言っていたが……剣の腕以外は全て平均値以下の俺ではいずれセッカに殺される日がくるだろう。

「なっ‼︎? こ、この裏切り者ぉ‼︎? 謝るから捨てないでぇ~」

  怒りながらぽかぽかと俺のことを殴ってくるセッカ。
 
  ふさふさの耳を俺に擦り付けるようなその仕草は、先ほどの悪辣な笑顔は何処へやら、年相応な子供のように罵倒と謝罪を混ぜ合わせるという高度なことをしてみせるセッカ。
 
  色々と問題のある雇い主だが、たしかに奴隷の時にはなかった【楽しさ】というものがここにはある。

  案外、いいパーティーなのかもしれない。

  なんて思いながら俺はフェリアスに笑いかけると、フェリアスもはにかんで髪を耳に掛け直す。

  彼女が何を思ったのかまではわからないが……同じ事を思ったのなら嬉しいな。

  そんな事を思いながら……俺たちは叱られた子供のようにふてくされるセッカを連れ、リドガドヘルムへと戻るのであった。



「だから、フェリアスのところに行くっていうのは冗談だって、セッカ」

「本当じゃな‼︎? 本当なんじゃなルーシー‼︎ 嘘ついたら針千本じゃぞ‼︎」

  その後、セッカは自分の行いを反省したのか、念に念を押すようにリドガドヘルムまでの道中ずっと俺に今の質問を繰り返していた。
 
  まぁ反省というにはあまりにも反省の色が見えないのだが、俺はこれもセッカの一つの個性なのだろうと割り切って適当にやり過ごす。

「だんだん、狐の扱いが上手くなってきたわね。 ご主人様」

「あぁ、喧嘩にならない分。もうあんたよりも熟練度は増している筈だ」

「生意気~、ご主人様のくせに」

 クスクスと笑って俺のおでこを指でこずくフェリアス。
 
 意外なことにセッカは治療の魔法が得意であり、フェリアスの腕の怪我はリドガドヘルムに到着するまでには傷跡一つ残っていない。

「こらぁ‼︎ そこ、いちゃつくなぁ‼︎?」

「夫婦なんだから別にいいでしょーに‼︎?」

  噛み付くセッカといがみ合うフェリアス。

  この短い期間で何度も見た二人の喧嘩はもう慣れたものであり。

  俺はやれやれとため息を一つ漏らしてそのままギルドへの道を歩いていく……と。

「ん? なんだあの人だかり……ギルドで祭りでもやってるのか? セッカ」

  ギルドの門の前にできた人だかりに、俺は思わずセッカにそう問いかけると。
 
  セッカも訝しげな表情を見せてフェリアスからギルドへと視線を移す。

「……なんじゃ? 特にギルドでの催し物などやった覚えはないのじゃが。 おいゴリラ、貴様また何かしでかしたんじゃないだろうな?」

「人聞き悪いこといわないでもらえるかしら? リドガドヘルム家は常に質素倹約、質実剛健をモットーにしているの。あんな人だかりができるような派手なことなんてするわけないでしょう?」

「国の守り龍引越しに使っておいてよく言うわ……これだから大陸の王族と言う奴は、感覚がズレてしょうがない……」

「感覚のズレというなら、セッカも大概だけどな」

「むぐっ……そなただんだん毒舌になってきておらぬか?」

「誰かさんの影響だな……よく言うだろ? 犬は飼い主に似るって」

「口の減らない……」

  呆れたようにため息を漏らすセッカ。
  しかし自覚はあるようでそれ以上は何もいうことなく、そのまま人混みへと到着すると。

「セッカ様……セッカ様が戻られたぞ‼︎」

「あぁ、よくぞご無事で……」

  そこに集まっていたのはギルドの人間たちのようであり、俺もセッカも首をかしげる。

「一体なんの騒ぎだこれは? こんな入り口前に集まって……ゲンゴロウの奴は何をしておる」

  セッカは呆れたような表情でため息をつきそう言う。

  だが、その言葉に皆は一同に表情を曇らせると。

「……セッカ様落ち着いてお聞きください……ギルド内で先ほど、お客人であるガルルガ様、そしてゲンゴロウ様の両名が何者かに斬られました」

「なん……じゃと?」

  その言葉に、セッカの瞳から光が消えた
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