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7.隊長
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「あら、早かったのね。お出迎えしようと思って来たのだけれど」
扉が開いて現れたのは、軍服を身にまとった女性だった。
40代くらいだろうか。黒髪にすっと伸びた背筋が凛とした印象を与えている。
後ろにリントより若い女性が付き従っていた。
「おはようございます。フォクナー隊長」
にこやかに挨拶するユールの『隊長』という言葉に、リントも慌てて深く一礼する。
笑顔で挨拶を受けた隊長は、リントを一瞥した後、ユールに向き直った。
「彼女が?」
「はい、今年入庁した魔導士で、ロスティア・リントです」
「お初にお目にかかります。魔導士庁、魔導士課のロスティア・リントと申します。よろしくお願いいたします」
「国防省国境警備部ヤトル区隊長のフォクナー・アデリアです。こちらこそよろしく。こちらは、うちの隊員でシエル・トート。何かあれば彼女に」
「シエル・トートです。よろしくお願いいたします」
後ろに控えていた女性が、隊長の紹介で一歩前へ出る。
鮮やかなアースアイの瞳が印象的だった。年齢は18とのことだったが、そばかすが幼さをより際立たせている。
リントも挨拶を返す中、ユールは隊長と少し離れて話を始めた。
漏れ聞こえる単語からして、リントたちの予定を確認しているようだ。
一魔導士の予定を隊長が確認する事に、リントは違和感を覚えた。
入ったばかりのリントに内情はわからないが、単に部屋を借りているだけではないということなのだろう。
二人の会話が終わるのを待っている間、手持ち無沙汰にしていたら、シエルと目が合ってしまった。
とりあえず、にこりと笑んでみると、シエルも同じように返してくる。
軍と魔導士の関係性がいまいちわからないので、余計な事も言えない。
お互いににこにことしたまま時が過ぎる。
この状況、どうにかならないだろうかと模索していると、突如、警報が響いた。
リントは聞いたことのない音にびくりと体を震わせたが、他の者は慣れているのか、全く動じていない。
「ご報告します」
警報から間を開けず、隊員が駆けてきた。
「国境付近に魔鳥を確認。小型の雷鳥と思われます」
「ちょうどいいわね」
隊長の声にユールが頷く。
「私も参加してよろしいでしょうか」
「ええ、もちろんよ。ロスティアさんは私と一緒に上で見学しましょうか」
「大丈夫です。彼女は俺が乗せますから。行こう!リント」
「え、ちょっと…!あ、失礼いたします」
ユールに手を取られ、引きずられるように部屋を後にする。
とってつけたような挨拶になってしまったが、隊長は笑って送り出してくれた。
「どこに向かっているんですか?」
ユールに手を引かれたまま、足早に下へ下へと降りていく。
石段1段ごとに高さがあって、足がもつれそうだ。
「獣舎だよ。ヒポグリフで雷鳥を追い払うんだ」
「え、」
「魔獣、興味あったんでしょ?近くで見れるよ」
確かに魔獣は興味があった。あったが、それは飼育されている安全な獣であって、野生ではない。
走りながら話していたから、息もあがってきた。
「あの、私、ヒポグリフに乗ったことがないんですが!」
「だから、俺と一緒に乗るの!もうちょっとで着くから頑張って!」
顔は前を向いたままなので、後方にいるリントにユールの表情は確認できないが、声だけで彼が心底楽しんでいることは伝わってきた。
獣舎に着くと、すでに準備が整えてあった。
隊員とは顔見知りなのだろう。ユールが挙げた手に、親しげに応じている。
後ろにいるリントに気づき、軽く会釈をしてくれたので、こちらも同じように返した。
緊急事態なので、正式な挨拶は後回しだ。
ヒポグリフは馬よりもひと回りほど大きく、がっしりしていた。
2人で乗っても、十分余裕がありそうだ。
先にひらりと背に乗ったユールが、リントをひき上げてくれる。
馬と違い、座った状態で待機してくれていたので、思っていたほど苦ではなかった。
当然ながら、初心者のリントが前、ユールが後ろだ。
腰にロープを巻かれ、その先は首輪につながれた。
転落防止と聞いて、安心感は格段にあがった。
「首輪、しっかり握ってて。行くよ」
声とともにユールが足で軽く胴を叩いて、ヒポクリフに合図を送る。
答えた獣は、大きく翼を広げ、一気に空へと駆け上がった。
扉が開いて現れたのは、軍服を身にまとった女性だった。
40代くらいだろうか。黒髪にすっと伸びた背筋が凛とした印象を与えている。
後ろにリントより若い女性が付き従っていた。
「おはようございます。フォクナー隊長」
にこやかに挨拶するユールの『隊長』という言葉に、リントも慌てて深く一礼する。
笑顔で挨拶を受けた隊長は、リントを一瞥した後、ユールに向き直った。
「彼女が?」
「はい、今年入庁した魔導士で、ロスティア・リントです」
「お初にお目にかかります。魔導士庁、魔導士課のロスティア・リントと申します。よろしくお願いいたします」
「国防省国境警備部ヤトル区隊長のフォクナー・アデリアです。こちらこそよろしく。こちらは、うちの隊員でシエル・トート。何かあれば彼女に」
「シエル・トートです。よろしくお願いいたします」
後ろに控えていた女性が、隊長の紹介で一歩前へ出る。
鮮やかなアースアイの瞳が印象的だった。年齢は18とのことだったが、そばかすが幼さをより際立たせている。
リントも挨拶を返す中、ユールは隊長と少し離れて話を始めた。
漏れ聞こえる単語からして、リントたちの予定を確認しているようだ。
一魔導士の予定を隊長が確認する事に、リントは違和感を覚えた。
入ったばかりのリントに内情はわからないが、単に部屋を借りているだけではないということなのだろう。
二人の会話が終わるのを待っている間、手持ち無沙汰にしていたら、シエルと目が合ってしまった。
とりあえず、にこりと笑んでみると、シエルも同じように返してくる。
軍と魔導士の関係性がいまいちわからないので、余計な事も言えない。
お互いににこにことしたまま時が過ぎる。
この状況、どうにかならないだろうかと模索していると、突如、警報が響いた。
リントは聞いたことのない音にびくりと体を震わせたが、他の者は慣れているのか、全く動じていない。
「ご報告します」
警報から間を開けず、隊員が駆けてきた。
「国境付近に魔鳥を確認。小型の雷鳥と思われます」
「ちょうどいいわね」
隊長の声にユールが頷く。
「私も参加してよろしいでしょうか」
「ええ、もちろんよ。ロスティアさんは私と一緒に上で見学しましょうか」
「大丈夫です。彼女は俺が乗せますから。行こう!リント」
「え、ちょっと…!あ、失礼いたします」
ユールに手を取られ、引きずられるように部屋を後にする。
とってつけたような挨拶になってしまったが、隊長は笑って送り出してくれた。
「どこに向かっているんですか?」
ユールに手を引かれたまま、足早に下へ下へと降りていく。
石段1段ごとに高さがあって、足がもつれそうだ。
「獣舎だよ。ヒポグリフで雷鳥を追い払うんだ」
「え、」
「魔獣、興味あったんでしょ?近くで見れるよ」
確かに魔獣は興味があった。あったが、それは飼育されている安全な獣であって、野生ではない。
走りながら話していたから、息もあがってきた。
「あの、私、ヒポグリフに乗ったことがないんですが!」
「だから、俺と一緒に乗るの!もうちょっとで着くから頑張って!」
顔は前を向いたままなので、後方にいるリントにユールの表情は確認できないが、声だけで彼が心底楽しんでいることは伝わってきた。
獣舎に着くと、すでに準備が整えてあった。
隊員とは顔見知りなのだろう。ユールが挙げた手に、親しげに応じている。
後ろにいるリントに気づき、軽く会釈をしてくれたので、こちらも同じように返した。
緊急事態なので、正式な挨拶は後回しだ。
ヒポグリフは馬よりもひと回りほど大きく、がっしりしていた。
2人で乗っても、十分余裕がありそうだ。
先にひらりと背に乗ったユールが、リントをひき上げてくれる。
馬と違い、座った状態で待機してくれていたので、思っていたほど苦ではなかった。
当然ながら、初心者のリントが前、ユールが後ろだ。
腰にロープを巻かれ、その先は首輪につながれた。
転落防止と聞いて、安心感は格段にあがった。
「首輪、しっかり握ってて。行くよ」
声とともにユールが足で軽く胴を叩いて、ヒポクリフに合図を送る。
答えた獣は、大きく翼を広げ、一気に空へと駆け上がった。
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