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81.琥珀色の瞳
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夕暮れ時、リントは庭にあるベンチに腰掛け、ぼんやり景色を眺めていた。
入庁したての頃ならとっくに夜空が見えていた時間なのに、ここ数日で日の落ちるのがだいぶ遅くなったように思う。
ほんの少しの肌寒さを感じながらも動けないでいたのは、猫が膝の上で眠ってしまったからだ。
だらしなくも愛らしい寝姿を見ながら、リントは今日の事を思い返していた。
・・・・・・
化粧を終えたリントは部屋へと戻り、ユールに示されたクローゼットを開けた。
ハンガーに掛けられていたのは、青色のロングワンピース。
空よりも海に近いその色は、リントの郷愁を掻き立てるのに十分だった。
入庁してからというもの、短期間に色々ありすぎた。
約束なので定期的に手紙のやり取りはしているが、実家には一度も帰っていない。
草原の柔らかな香りも好きだが、緩やかな波の音は何よりも心が落ち着く。
以前購入したお酒のお土産もあることだし、来月はどこかで連休を取って実家に帰ろう。
リントはそう心に決めると、ハンガーに手をかけた。
手にしたワンピースは一般的な綿素材のようで、少し気が楽になる。
本音を言えば、ドレスに着替える前の私服を期待していたのだが、今までの流れからそれはないだろうなとも思っていたので、驚きはしなかった。
本当に慣れって恐ろしい。
誰が見ているわけでもないので、リントは寝間着のボタンを上から3つだけ開けると、両手を袖から抜いてそのまま下へすとんと落とした。
服と共に用意してあった下着を手早く身に着け、ワンピースを頭から被る。
体調を考慮してか余裕のある作りで、ウエストが紐で調整できるタイプだ。
袖を通すとさらりとした感触が心地良い。
確かに感じる布の重みに、つい苦笑いが零れた。
高いシルクよりも、自分にはこちらの方が合っている。
姿見の前で軽く確認した後、リントはソファへ座りユールを待った。
好きに使っていいとは言われたが、家主がいない間にあちこち開けて回るのも気が引けたからだ。
広々とした部屋の中、ただ待つのも居心地が悪いなと思い始めた頃、扉が叩かれ、ユールが顔を出した。
数人のメイドを連れて戻ってきた彼は、いつものようにリントを褒めた後、何かあれば彼女にと、その内の1人を紹介した。
自分の母程の年齢だろうか。
ふくよかな見た目と気の良さそうな笑顔が安心感を与えている。
昨日着替えさせてくれたのも彼女と聞き、自分の予想が当たっていたことに安堵した。
紹介が終わる頃には、テーブルの上は美味しそうな匂いで満たされていた。
自分は温かいスープとバゲット、フルーツ。
軽めと言ったので、量は通常の半分くらいだろうか。
ユールは色とりどりのオープンサンドに紅茶である。
自分の倍以上食べているはずなのに、同じタイミングで朝食を終えたユールは、『医者の診察が終わるまではくれぐれも安静に!』『大丈夫だからって勝手に帰らないでね』と再三確認した後で、ようやく出かけて行った。
すっかり信用を無くしてしまったらしい。
その後来た医者の診察は予想通り何事もなく終わり、お茶を飲んで一息ついた頃、メイドが籐で編まれたかごを持って現れた。
蓋つきのかごは当然ながら中身が見えない。
リントの前にそっと置くと、メイドはユールからだと言った。
蓋を開けるよう促され、言う通りにすると、まん丸の目と視線が合う。
その色を何と呼ぶのか、リントは良く知っていた。
入庁したての頃ならとっくに夜空が見えていた時間なのに、ここ数日で日の落ちるのがだいぶ遅くなったように思う。
ほんの少しの肌寒さを感じながらも動けないでいたのは、猫が膝の上で眠ってしまったからだ。
だらしなくも愛らしい寝姿を見ながら、リントは今日の事を思い返していた。
・・・・・・
化粧を終えたリントは部屋へと戻り、ユールに示されたクローゼットを開けた。
ハンガーに掛けられていたのは、青色のロングワンピース。
空よりも海に近いその色は、リントの郷愁を掻き立てるのに十分だった。
入庁してからというもの、短期間に色々ありすぎた。
約束なので定期的に手紙のやり取りはしているが、実家には一度も帰っていない。
草原の柔らかな香りも好きだが、緩やかな波の音は何よりも心が落ち着く。
以前購入したお酒のお土産もあることだし、来月はどこかで連休を取って実家に帰ろう。
リントはそう心に決めると、ハンガーに手をかけた。
手にしたワンピースは一般的な綿素材のようで、少し気が楽になる。
本音を言えば、ドレスに着替える前の私服を期待していたのだが、今までの流れからそれはないだろうなとも思っていたので、驚きはしなかった。
本当に慣れって恐ろしい。
誰が見ているわけでもないので、リントは寝間着のボタンを上から3つだけ開けると、両手を袖から抜いてそのまま下へすとんと落とした。
服と共に用意してあった下着を手早く身に着け、ワンピースを頭から被る。
体調を考慮してか余裕のある作りで、ウエストが紐で調整できるタイプだ。
袖を通すとさらりとした感触が心地良い。
確かに感じる布の重みに、つい苦笑いが零れた。
高いシルクよりも、自分にはこちらの方が合っている。
姿見の前で軽く確認した後、リントはソファへ座りユールを待った。
好きに使っていいとは言われたが、家主がいない間にあちこち開けて回るのも気が引けたからだ。
広々とした部屋の中、ただ待つのも居心地が悪いなと思い始めた頃、扉が叩かれ、ユールが顔を出した。
数人のメイドを連れて戻ってきた彼は、いつものようにリントを褒めた後、何かあれば彼女にと、その内の1人を紹介した。
自分の母程の年齢だろうか。
ふくよかな見た目と気の良さそうな笑顔が安心感を与えている。
昨日着替えさせてくれたのも彼女と聞き、自分の予想が当たっていたことに安堵した。
紹介が終わる頃には、テーブルの上は美味しそうな匂いで満たされていた。
自分は温かいスープとバゲット、フルーツ。
軽めと言ったので、量は通常の半分くらいだろうか。
ユールは色とりどりのオープンサンドに紅茶である。
自分の倍以上食べているはずなのに、同じタイミングで朝食を終えたユールは、『医者の診察が終わるまではくれぐれも安静に!』『大丈夫だからって勝手に帰らないでね』と再三確認した後で、ようやく出かけて行った。
すっかり信用を無くしてしまったらしい。
その後来た医者の診察は予想通り何事もなく終わり、お茶を飲んで一息ついた頃、メイドが籐で編まれたかごを持って現れた。
蓋つきのかごは当然ながら中身が見えない。
リントの前にそっと置くと、メイドはユールからだと言った。
蓋を開けるよう促され、言う通りにすると、まん丸の目と視線が合う。
その色を何と呼ぶのか、リントは良く知っていた。
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