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84.出会い
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部屋へ戻ると、ユールはリントを先にソファへ座らせ、お茶の準備を始めた。
手伝いを申し出たが、すぐ終わるからとやんわり断られる。
茶器をトレイに乗せて戻ってきた彼は、人半分程の距離を空け、リントの隣に座った。
勧められるままにカップを持ち上げひとくち飲むと、程よい熱が喉を通って身体に染み渡っていく。
リントがふぅっと息を吐いたのを見計らって、ユールはゆっくりと話し始めた。
「さっきリントが言ったでしょ。俺がエドに頼まれて君に近づいたって」
「はい」
「俺がエドから頼まれたのは会食の話だけ。だから、リントに会いに行ったのも、指導役をしているのも全部俺の意思。もちろんエドの為じゃないよ。俺がリントに会いたいから会いに行って、傍にいたいから、指導役を願い出た」
「え…」
ユールの言葉の意味が理解できなくて、リントの口から戸惑いの声が漏れた。
会いたいって、傍にいたいってどういうことだろう。
さっき思い出したのが『初めて』ではないのだろうか。
彼は、そんなリントの戸惑いを見越していたようだった。
「小さい頃だから、覚えてなくて当然だよ。高台に公園があったでしょ?」
ユールの言葉にリントは頷いた。
公園といっても特に何かあるわけではないが、見晴らしがとてもいい場所だ。
先生の家から近いので、授業のある日によく寄っていた。
「そこで偶然見かけたんだ。風魔法で子猫を助けるリントを。魔力が緑色のヴェールみたいに空にひらめいて。あまりに綺麗で見惚れたよ。けど、俺に気がついた君は、先生に怒られるってすごく慌てて、しまいには泣き出しちゃって。秘密にするって誓いを立てたら、ようやく笑ってくれたんだ。先生以外の魔力持ちに会うのは初めてだって、きらきらした目で俺を見つめながら話す君は、すごく、可愛かった」
ユールが思い出を懐かしそうに紡ぐ言葉の中に、彼から聞くはずのない単語が混じっていて、リントは驚きに目を見開いた。
半面ユールは申し訳なさそうな顔になる。
「リントに風属性があることは知ってた。もうわかってるだろうけど、その時助けた猫がアンバー。名付け親は君。あと、ノエルに属性魔法教えてもらってる事も知ってる」
「あ…」
「心配しないで。俺が知ってること、ノエルは了承済み」
自分が話したわけではないが、ノエルとの約束を破ることになったらどうしようと考えた一瞬は、杞憂で終わったらしい。
ただ、自分だけ仲間外れにされたようで、寂しくはあった。
もちろんユールが知らないふりをしてくれていた以上、言えなかったのも十分理解しているので、何も言わなかったが。
「長くなるから大分省いたけど、俺にとっては人生の中で一番って言っていいくらい印象的な出来事だった。…ここまではいい?」
確認を取るユールにリントは再び頷き返した。
気になることは山ほどあるが、今聞くと本筋から外れそうなのでユールの話が終わってからにする。
肯定を受け、ユールは再び話し始めた。
手伝いを申し出たが、すぐ終わるからとやんわり断られる。
茶器をトレイに乗せて戻ってきた彼は、人半分程の距離を空け、リントの隣に座った。
勧められるままにカップを持ち上げひとくち飲むと、程よい熱が喉を通って身体に染み渡っていく。
リントがふぅっと息を吐いたのを見計らって、ユールはゆっくりと話し始めた。
「さっきリントが言ったでしょ。俺がエドに頼まれて君に近づいたって」
「はい」
「俺がエドから頼まれたのは会食の話だけ。だから、リントに会いに行ったのも、指導役をしているのも全部俺の意思。もちろんエドの為じゃないよ。俺がリントに会いたいから会いに行って、傍にいたいから、指導役を願い出た」
「え…」
ユールの言葉の意味が理解できなくて、リントの口から戸惑いの声が漏れた。
会いたいって、傍にいたいってどういうことだろう。
さっき思い出したのが『初めて』ではないのだろうか。
彼は、そんなリントの戸惑いを見越していたようだった。
「小さい頃だから、覚えてなくて当然だよ。高台に公園があったでしょ?」
ユールの言葉にリントは頷いた。
公園といっても特に何かあるわけではないが、見晴らしがとてもいい場所だ。
先生の家から近いので、授業のある日によく寄っていた。
「そこで偶然見かけたんだ。風魔法で子猫を助けるリントを。魔力が緑色のヴェールみたいに空にひらめいて。あまりに綺麗で見惚れたよ。けど、俺に気がついた君は、先生に怒られるってすごく慌てて、しまいには泣き出しちゃって。秘密にするって誓いを立てたら、ようやく笑ってくれたんだ。先生以外の魔力持ちに会うのは初めてだって、きらきらした目で俺を見つめながら話す君は、すごく、可愛かった」
ユールが思い出を懐かしそうに紡ぐ言葉の中に、彼から聞くはずのない単語が混じっていて、リントは驚きに目を見開いた。
半面ユールは申し訳なさそうな顔になる。
「リントに風属性があることは知ってた。もうわかってるだろうけど、その時助けた猫がアンバー。名付け親は君。あと、ノエルに属性魔法教えてもらってる事も知ってる」
「あ…」
「心配しないで。俺が知ってること、ノエルは了承済み」
自分が話したわけではないが、ノエルとの約束を破ることになったらどうしようと考えた一瞬は、杞憂で終わったらしい。
ただ、自分だけ仲間外れにされたようで、寂しくはあった。
もちろんユールが知らないふりをしてくれていた以上、言えなかったのも十分理解しているので、何も言わなかったが。
「長くなるから大分省いたけど、俺にとっては人生の中で一番って言っていいくらい印象的な出来事だった。…ここまではいい?」
確認を取るユールにリントは再び頷き返した。
気になることは山ほどあるが、今聞くと本筋から外れそうなのでユールの話が終わってからにする。
肯定を受け、ユールは再び話し始めた。
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