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第4 ばってん
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ぜぇはぁ、ぜぇはぁ。
い、 息が切れました。
二人とも廊下は走ってはいけませんよ。
何て。
注意する余裕は全くありませんでした。
りょうちゃんは陸上部で。
いずみちゃんは異世界チートなんです。
一方。
私の体力は普通の女の子なみなんです。
「 さあ、行くよ」
いずみちゃんとりょうちゃんは発行所に向かいました。
ちょっと待ってください。
息を整える時間をください。
通行証を発行していない私は、まだ異世界チートを授かっていないんですからね。
あっ。
そうです。
発行証は通行証を発行している場所じゃないですか。
私は異世界行きの許可があるから、手続きをすればすぐにでも、いずみちゃんの仲間入りを果たせるじゃないですか。
私は急いで二人を追い抜きました。
「 何やってるんですか!早くしてくださいよ」
「 暴走モードに入っちゃってるな」
「 まあ、 下手に落ち込むより良いと思うよ」
「 そうだな」
りょうちゃんといずみちゃんが何か言ってたけど耳に入ってきません。
だって。
もうすぐ、異世界冒険が始まるんですよ。
ワクワク。
やっと、いずみちゃんとの約束が話せるんですね。
私はすっかり舞い上がっていました。
...... すぐにテンションが下がることになるんですけどね。
「 井出さんは既に召喚拒否が受理されてるよ」
受付のお姉さんが衝撃の事実を告げました。
えっ?えっ......?
一体、どういうことですか?
私は召喚拒否の手続きなんてしてませんよ。
「 やっぱり」
いずみちゃんは何やら訳知り顔です。
ほんといい加減に教えてくださいよ。 ストレスがたまるじゃないですか。
「きゅーと君が 手続きしたんだよ」
「えっ!? そんなことが可能なんですか?」
いずみちゃんが言うことは、にわかに信じられません。
だって、手続きは本人がするものですよね。
関係のない きゅーと君が書類にサインインすることで受理されるなんて、そんなことがあっていいわけないじゃないですか。
けれど。
いずみちゃんは否定してくれませんでした。
「きゅーと君なら できるんだよ。案内人だからね。本人の同意があれば代行できることになってるの」
「 でも、私は......」
「 うん、わかってる。ちょっと他人がいないところで話そ。ちゃんと説明するからね」
「 うん......」
よくわからないけど、私たちは再び握手教室に戻ることにしました。
移動の途中。
私なりに考えてみます。
きゅーと君は 私のことをからかっているのだと思っていました。
でも。
冷静になって思い返してみると、その可能性は低い気がするんですよね。
きゅーと君は 異世界案内人です。
地球で異世界行きできるのは選出者だけのように、案内人は異世界の一部の者しかなれません。
案内人に選ばれたとしても、貴族は断ってしまいます。それというのも地球では権力が全く役に立たないからです。
すべてが違う環境というのも不安があるのでしょう。
だから。
平民ーーー それもお金に困っているものが案内人になるようなのです。
案内人は選出者をサポートする義務があります。
同時に。
選出者を取り締まる権限と義務もあるのです。
新人いじめも処罰の対象となります。
きゅーと君の 立場を考えれば、男子の罰ゲームに参加するはずがありません。
では、あの告白は何だったのでしょうか。
『 好きだよ。 異世界行きを断って』
『 でこちゃんは男子からからかわれるのが嫌なんだよね』
『 だったら、異世界には行かないほうがいいよ』
きゅーと君は 私の事を心配してくれていました。
今思うとそんな気がするのです。
私が異世界に行くと男子にからかわれることが起きるから、きゅーと君は反対していたと思うのです。
でも。
何をからかわれるというのでしょうか。
きっと。
とっさに方言が出てしまうことでしょうね。
私は怒ったり驚いたりすると、頭に戻ってしまうのです。
冒険は驚きの連続。
そういうわけで......。
いえ。
これは違いました。
方言については一度、きゅーと君に相談したことがあったんですよ。
そうしたら。
大丈夫だよ、と励ましてくれました。
他に理由が思いつきません。
私が同意していないのに勝手に召喚拒否をしていますし、きゅーと君は よほど私を異世界に行かせたくないようです。
バレたら大事ですよ。
クビどころか、重罪になるそうですからね。
もしも本当に、私のためにしでかしたことだとしたら......。
勝手に裏切られたと思い込んで。
怒って。
ちゃんと話を聞かずに立ち去って......。
私は最低な人間です。
きゅーと君に 思われる資格はなか!
それでも、きゅーと君は 私のために......。
理由は分からないけど、そうに違いありません。
私がきゅーと君にしてあげられることは何かないのでしょうか?
おそらくきゅーと君がしたことは、私たち以外はまだ気づいていないはずです。
受付のお姉さんの話では、私の召喚拒否は正式に受理されているようですからね。
つまり。
私が異世界行きを諦めさえすれば、きゅーと君が咎められることはありません。
ただ......。
ずっと......。
永遠に。
私の夢は消え去ってしまうのです。
せめて。
きゅーと君の 口から、ちゃんと理由を聞かせてもらいたいものですね。
「...... というわけなの」
空き教室でいずみちゃんが教えてくれました。
その内容は、ほぼ私の予想と同じでした。
どうやら私が黙っていても、きゅーと君の 不正がばれる可能性は低くないようなのです。
「 そんな......!どうにかできないんですか!?」
「 それは私に任せて。
ただ......」
いずみちゃんは珍しく歯切れが悪いです。
私は大丈夫ですよ。
「 最悪の場合、きゅーと君とお別れなんですね。
覚悟はしておきますよ」
にっこり。
私は笑ってみせました。
二人を安心させるために。
というより。
自分を必死になって保つために。
そんな私の頭に、りょうちゃんが右手をのせました。
「 でこちゃんは偉いな」
「 もう!子供扱いしないでくださいよ」
むうっ。
いずみちゃんも私の頭を撫でます。
「 そうだね、偉い偉い」
「 いずみちゃんまで!?」
やめてくださいよ。
そんな事されたら、泣いてしまいそうになるじゃないですか。
「 でこちゃんは子供なんだから、泣いとけよ」
「 大人だって辛い時は泣いてもいいと思うよ。だから、ね?」
ダムの決壊。
もう止めることはできませんでした。
「 うわーん!りょうちゃんの服をグチャグチャのべちゃべちゃにしちゃるけんね!」
「 あたしだけかよ」
「 私は汚れたくないな」
そう言いつつ、二人はそばにいてくれました。
い、 息が切れました。
二人とも廊下は走ってはいけませんよ。
何て。
注意する余裕は全くありませんでした。
りょうちゃんは陸上部で。
いずみちゃんは異世界チートなんです。
一方。
私の体力は普通の女の子なみなんです。
「 さあ、行くよ」
いずみちゃんとりょうちゃんは発行所に向かいました。
ちょっと待ってください。
息を整える時間をください。
通行証を発行していない私は、まだ異世界チートを授かっていないんですからね。
あっ。
そうです。
発行証は通行証を発行している場所じゃないですか。
私は異世界行きの許可があるから、手続きをすればすぐにでも、いずみちゃんの仲間入りを果たせるじゃないですか。
私は急いで二人を追い抜きました。
「 何やってるんですか!早くしてくださいよ」
「 暴走モードに入っちゃってるな」
「 まあ、 下手に落ち込むより良いと思うよ」
「 そうだな」
りょうちゃんといずみちゃんが何か言ってたけど耳に入ってきません。
だって。
もうすぐ、異世界冒険が始まるんですよ。
ワクワク。
やっと、いずみちゃんとの約束が話せるんですね。
私はすっかり舞い上がっていました。
...... すぐにテンションが下がることになるんですけどね。
「 井出さんは既に召喚拒否が受理されてるよ」
受付のお姉さんが衝撃の事実を告げました。
えっ?えっ......?
一体、どういうことですか?
私は召喚拒否の手続きなんてしてませんよ。
「 やっぱり」
いずみちゃんは何やら訳知り顔です。
ほんといい加減に教えてくださいよ。 ストレスがたまるじゃないですか。
「きゅーと君が 手続きしたんだよ」
「えっ!? そんなことが可能なんですか?」
いずみちゃんが言うことは、にわかに信じられません。
だって、手続きは本人がするものですよね。
関係のない きゅーと君が書類にサインインすることで受理されるなんて、そんなことがあっていいわけないじゃないですか。
けれど。
いずみちゃんは否定してくれませんでした。
「きゅーと君なら できるんだよ。案内人だからね。本人の同意があれば代行できることになってるの」
「 でも、私は......」
「 うん、わかってる。ちょっと他人がいないところで話そ。ちゃんと説明するからね」
「 うん......」
よくわからないけど、私たちは再び握手教室に戻ることにしました。
移動の途中。
私なりに考えてみます。
きゅーと君は 私のことをからかっているのだと思っていました。
でも。
冷静になって思い返してみると、その可能性は低い気がするんですよね。
きゅーと君は 異世界案内人です。
地球で異世界行きできるのは選出者だけのように、案内人は異世界の一部の者しかなれません。
案内人に選ばれたとしても、貴族は断ってしまいます。それというのも地球では権力が全く役に立たないからです。
すべてが違う環境というのも不安があるのでしょう。
だから。
平民ーーー それもお金に困っているものが案内人になるようなのです。
案内人は選出者をサポートする義務があります。
同時に。
選出者を取り締まる権限と義務もあるのです。
新人いじめも処罰の対象となります。
きゅーと君の 立場を考えれば、男子の罰ゲームに参加するはずがありません。
では、あの告白は何だったのでしょうか。
『 好きだよ。 異世界行きを断って』
『 でこちゃんは男子からからかわれるのが嫌なんだよね』
『 だったら、異世界には行かないほうがいいよ』
きゅーと君は 私の事を心配してくれていました。
今思うとそんな気がするのです。
私が異世界に行くと男子にからかわれることが起きるから、きゅーと君は反対していたと思うのです。
でも。
何をからかわれるというのでしょうか。
きっと。
とっさに方言が出てしまうことでしょうね。
私は怒ったり驚いたりすると、頭に戻ってしまうのです。
冒険は驚きの連続。
そういうわけで......。
いえ。
これは違いました。
方言については一度、きゅーと君に相談したことがあったんですよ。
そうしたら。
大丈夫だよ、と励ましてくれました。
他に理由が思いつきません。
私が同意していないのに勝手に召喚拒否をしていますし、きゅーと君は よほど私を異世界に行かせたくないようです。
バレたら大事ですよ。
クビどころか、重罪になるそうですからね。
もしも本当に、私のためにしでかしたことだとしたら......。
勝手に裏切られたと思い込んで。
怒って。
ちゃんと話を聞かずに立ち去って......。
私は最低な人間です。
きゅーと君に 思われる資格はなか!
それでも、きゅーと君は 私のために......。
理由は分からないけど、そうに違いありません。
私がきゅーと君にしてあげられることは何かないのでしょうか?
おそらくきゅーと君がしたことは、私たち以外はまだ気づいていないはずです。
受付のお姉さんの話では、私の召喚拒否は正式に受理されているようですからね。
つまり。
私が異世界行きを諦めさえすれば、きゅーと君が咎められることはありません。
ただ......。
ずっと......。
永遠に。
私の夢は消え去ってしまうのです。
せめて。
きゅーと君の 口から、ちゃんと理由を聞かせてもらいたいものですね。
「...... というわけなの」
空き教室でいずみちゃんが教えてくれました。
その内容は、ほぼ私の予想と同じでした。
どうやら私が黙っていても、きゅーと君の 不正がばれる可能性は低くないようなのです。
「 そんな......!どうにかできないんですか!?」
「 それは私に任せて。
ただ......」
いずみちゃんは珍しく歯切れが悪いです。
私は大丈夫ですよ。
「 最悪の場合、きゅーと君とお別れなんですね。
覚悟はしておきますよ」
にっこり。
私は笑ってみせました。
二人を安心させるために。
というより。
自分を必死になって保つために。
そんな私の頭に、りょうちゃんが右手をのせました。
「 でこちゃんは偉いな」
「 もう!子供扱いしないでくださいよ」
むうっ。
いずみちゃんも私の頭を撫でます。
「 そうだね、偉い偉い」
「 いずみちゃんまで!?」
やめてくださいよ。
そんな事されたら、泣いてしまいそうになるじゃないですか。
「 でこちゃんは子供なんだから、泣いとけよ」
「 大人だって辛い時は泣いてもいいと思うよ。だから、ね?」
ダムの決壊。
もう止めることはできませんでした。
「 うわーん!りょうちゃんの服をグチャグチャのべちゃべちゃにしちゃるけんね!」
「 あたしだけかよ」
「 私は汚れたくないな」
そう言いつつ、二人はそばにいてくれました。
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