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第4章、 それぞれの戦い

魔王対勇者! その1(アレク)

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俺、 アレク=アンダーソンは自称師匠の 弟の正体に気がついた。
こいつは魔王だ。妖精神に魔法で、 魔王の 姿を映像として見せてもらったことがあるから間違いない。
師匠の 知り合いということで 油断していたが、 こいつはヤバイ。 目的のためなら手段を選ばないという、 そんな目をしている。
師匠と魔王の 会話はさっぱりわからなかった。
そのせいで、反応が少し遅れてしまう。
師匠は、魔王に[ブレイン チャーム]の 魔法をかけられてしまった。 洗脳の魔法である。
いつもの師匠なら、魔法抵抗できたはずだ。
なのに、師匠の 目がうつろになっている。

「 これでやっと、お姉ちゃんのための世界を作れるよ」

魔王は 得体が知れない。
ただひとつわかっていることは、 こいつが敵だということだ!
俺は剣を構え、魔王に切りかかった。

「師匠を 元に戻せ!!」
「 おかしなことを言うね。お姉ちゃんは僕のものだよ」

俺は一度、狼男に力負けした。 魔王はもう狼男よりも格上である。 俺が勝つ要素が一つもない。
それでも、男には戦わなければならないときがあるんだ!

「[ フィジカルエンチャント]!」

苦し紛れの 身体強化の魔法。 せめて一撃では倒されないように、全身に力を込める。
[ブレイン チャーム]は、 一瞬では完全に効果が現れない。 ある一定の時間対象を見続けなければならないのである。
師匠なら、 絶対に[ブレイン チャーム]の 効果に打ち勝てるはずだ。
そのための時間稼ぎをしなければならない。
どんなに情けなくて、 泥臭い格好でもいい。 俺は意地でも倒れずに壁になり続けるんだ!
力と力のぶつかり合い。
俺と魔王は刃を交えながら、 その場から一歩も動かなかった。

「[ ランダムフェアリーエフェクト]の[ ステータスカンスト]を 発動するなんてね。 滅多にお目にかかれない レア効果だというのに...... さすがはお姉ちゃんのお気に入りキャラだけのことはあるね」

魔王は楽しそうに笑っている。
[ ランダムフェアリーエフェクト]は 俺が唯一使える妖精魔法で、 妖精が気まぐれに力を貸してくれるというものである。 効果は完全にランダムで、 全くコントロールできない。
魔王はきっと、俺の事をバカにしているのだろう。
師匠が 俺のことを気に入っているというのなら、純粋に嬉しい。 力が湧いてくる。
これならば......!

「[ セイクリッドブレイブバースト]!!」

俺は全力の必殺技を発動した。
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