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「まぁ、バーグ商会とはうちも無関係ではないから会いたいと言えば会えるでしょう。ベス、手紙を預けるから明日にでも届けておいてくれるかしら」
「もちろんでございます。」
「で、話を戻すとこの架空ため池以外、不要な支出なかったの。これは削れるけれどあとは不要どころか必要なところにも出されていないわ。ベスあなたの作ったリスト見せてくれる?」
「はい」

手渡されたリストを眺めながらアリアナは大きな溜め息を吐いた。

「あの、何か問題でもございましたか」
「いいえ。あなたのリストよくできてるわ。ここから優先順位を決めないといけないわね」
「はい。やはり農機具と植物の種や苗でしょうか」
「そうなのよね…でも、この堤や水路の整備もしたいし」
「それはまとまった金額がないと難しくありませんか」
「うーん。」

そう言うと地図を片手にもう一度、アリアナは考え込んだ。

「だめね。やっぱり一度、ケイビス様と相談してみるわ」
「そうですね。ではケイビス様にもお伝えしておきます。」
「ええ、よろしくね」


翌日、アリアナはカフェのテラス席で改めてリストを見直していた。紙に影が差し、驚いて顔を上げると、微笑んだケイビスが立っていた。

「ベスは…」
「あなたの使いで会う日時を尋ねに来られました。ちょうど午後から空いておりましたので、直接伺った方が早いかと。」
「まあ」
「ご無礼な真似をして申し訳ございません。ですが人目のあるカフェならかえって妙な誤解もされないでしょう」
「はぁ…」

それは楽観的すぎる、と思ったアリアナだがせっかく来てくれたケイビスを追い返すわけにも行かず、席をすすめた。

「どうぞ、おかけになってください」
「失礼します」
「あの、それで頼まれていたことなのですが、必要と思われるものはこちらに。ですが優先順位を決めかねておりまして…」
「早速ですか。ありがとうございます」

律儀に礼を述べてリストに目を通すケイビスを見て、アリアナはそっと溜め息を吐いた。その様子に目ざとく気づいたケイビスが尋ねる。

「アリアナ殿、どうかされましたか」
「いえ。少しクレメント様のことを思っていただけです」

ケイビス様と逆ならよかったのに、と内心でクレメントを罵倒していたアリアナは、それを気取られないように淡々と答えた。その様子をどう勘違いしたのか、ケイビスはさっと顔を伏せて答える。

「本来は兄と相談されるべき件に、口を出してしまい申し訳ありません。」
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