【完結】悪女のなみだ

じじ

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本編【第一章】

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「カレン、それはダメよ。婚約者のいる男性と二人でお会いするなんて。」
「うるさいわね。あんたなんかの意見なんか誰も聞いてないわよ」
「でも、あなたの婚約者も相手の婚約者もそれを知ったら悲しまれるわ。それにあなた自身の評判も落とすことになりかねない。やめておいた方がいいのでは…」

私が言い募ろうとしたした瞬間、カレンは突然、悲しげな声で叫んだ。

「姉様、ひどいわ。私、私そんなつもりじゃ…。」

途端に我が家の空気は張りつめた。

「カリーナ!お前はなんで妹をそんなに虐めるんだ!たった一人の妹だろう。なぜ可愛がれないんだ」
「そうよ!いくらカレンの方が愛らしいからって八つ当たりなんてみっともない。だからお前はカレンと違っていまだに婚約者が見つからないのよ。伯爵家の令嬢でありながら見苦しいったらありゃしない」
「でも、私…」

カレンのためを思って、と続けようとした言葉は両親の怒号によってかき消された。

「お前が意地の悪い顔をしながら、カレンを泣かせているのを見たんだ。何を言ったか知らんが言い訳するな!」

両親にまで貶されては、私も推し黙るしかない。これ以上傷つかずに済むように無表情を保とうとすると、更なる罵声を浴びせられた。

「なんだ、その反抗的な目は!」
「申し訳ありません」

父の後ろで母に抱き抱えるようにされているカレンは私を見ながら意地の悪そうな笑みを浮かべた。

「席を外します。」

なんとか平静を装い、その場を離れた。自室に戻る廊下で思わず涙をこぼす。その時不意に呼び止められた。

「やあ、カリーナ嬢」

親しげに私を呼ぶ声に一瞬どきりとするが、それを悟られないように振り返る。

「ようこそ、シュナイダー様。カレンでしたら今…」
「いや、今日はカリーナ嬢に用があった」

嫌な予感を感じつつも、泣いていたことを悟られないように、にこやかな笑みで対応する。

「まあ、婚約者の姉に用などと。カレンに贈るプレゼントのご相談でしょうか。あいにく妹とはあまり趣味が合わないのですが」
「はっ、そんなこと君に聞くと思うか。カレンは天使のような乙女だ。男好きのあなたの意見など参考になるわけがない。彼女は純粋だからな。私も傷つけないように色々と我慢しているのだ。でも、男を誑かすと有名なカリーナ嬢になら私も気を遣う必要はないだろ?」
「そんな」

あまりの暴言に思わず絶句すると、シュナイダーはそれをいいことに言い募ってきた。

「今だって、妖艶な笑みで私を誘ったじゃないか。何を今さら純情ぶる必要がある」

下手に刺激してはいけない。そう思い、そっと後退りする。それを面白そうに見ながらシュナイダーは続けた。

「さすがに妹の婚約者に手を出すのは躊躇われるのか。私なら口が固いぞ」

もう一歩でも近づかれたら大声をあげようと決めた瞬間、カレンが廊下にやってきた。

「シュナイダー様、ここでなにを?」

小首を傾げて愛くるしい様子で尋ねたカレンに優しげな眼差しをむけて、シュナイダーは、すべての疑惑を私に被せることに決めたらしい。

「カレンに会いに来たんだけれどね。カリーナ嬢にお茶でも飲まないか、と自室に誘われたんだ。困って断ろうとしたところに君が天使のように現れた」
「姉様。ひどいわ…」
「私はもちろん君以外見えてないよ」

押し黙ったままの私にカレンは軽蔑するような視線を向けてきた。


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