【完結】悪女のなみだ

じじ

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本編【第二章】

2−6

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「失礼します」

アンは用意したお茶とともに部屋に入ってきた。カップに注がれた紅茶の香りが優しく部屋に広がる。

「ありがとう、おいしいわ。」

いつものとおり一言お礼を言って、フォーゼム様の方を見ると彼は紅茶を一口飲んでおもむろに口を開いた。

「それで、カレン嬢は帰ってきた時どんな様子だったんだい?」

アンは問われた内容にどこまで正確に答えるか逡巡しているようだったが、私が頷くと意を決したように話し出した。

「詳細は分かりませんが、屋敷に到着された時点ではすでに泣きわ…じゃくっておられました。」

泣きわめいた、と言いかけてさすがに言葉を慎んだようだ。それに気づいたフォーゼム様が、大変だったなと独り言ちている。

「すぐに旦那様と奥様が駆け寄られて慰めながら、自室に連れていかれましたので詳細は分かりませんが、まだお戻りにならないところを見ると、ずっと泣いておられるのではないかと」
「なるほど。シュナイダーの婚約破棄がよほど堪えたのか…もしくは見下していたはずの姉が誰よりも美しいことに気が付きショックを受けたのか…。いたわしいことだ」

たいしてそう思ってもなさそうな様子でつぶやく。

「あのお時間を取らせてしまって申し訳ございません」

思わず謝るとフォーゼム様は不思議そうな顔で私を見た後真面目な声音で告げた。

「なぜあなたが謝るんだ?それに私としては少しでもあなたのそばにいられるのが喜びなのだから謝らないでくれ」
「ありがとうございます」

頬が赤く染まるのが自分でもわかる。視界の端に見えたアンが生暖かい笑みとともにこちらを見ているのが分かり、余計に顔が熱くなる。


コンコン。

ふいにノックがされて、外側から声がかけられた。

「カリーナお嬢様お戻りでしょうか。旦那様と奥様とカレンお嬢様がお待ちです。」

途端に幸せだった気持ちがすっと冷める。

「ええ。すぐ行くわ」
「私も一緒に行って良いか」

フォーゼム様が気遣うように私に声をかけてくださるが、私は首を横に振った。

「同じ屋敷にいてくださるだけで十分心強いです。ですのでしばらくお待ちいただけますか」

フォーゼム様は先ほど自分がいればカレンは多少大人しくなるのではといったが、正直泣きわめいている妹が、フォーゼム様を見てそれほど冷静に判断ができるとは思えない。これから両親と妹の暴言に耐えなければいけないのは気が重いけれど、自室に帰ればフォーゼム様がいてくださると思うだけでいつもよりはきっと辛くないだろう。

意を決して自室の扉を開けた。
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