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本編【第二章】
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「え?」
「フォーゼム殿にあることないこと大勢の前で吹聴されたとな。」
「そんな…フォーゼム様は私を庇ってくださったのです。一方的にカレンに糾弾されていた私を。」
「ああ、そうだろうな。それにフォーゼム殿が言ったことは事実だろうが、カレンが言ったお前の件は口からでまかせであろう。」
「ご存知だったのですか」
今話しているのは本当に私の父だろうか。私を嫌い、いつもカレンの肩ばかり持ちカレンばかり可愛がり続けた父の言葉だとは思えない。
私の驚愕を感じ取った父はほろ苦く笑う。
「分かっていた。ずっと分かっていたんだ」
「それならなぜ…」
「お前を見ているとサシャを思い出すからだ」
「叔母上ですか?先ほども母様が言っておられましたが…」
ちらりとベッドにいる母を見ると、父は深い溜め息を一つ吐いた。次の言葉に迷っているのかなかなか答えない父に再度視線で問いかける。
父は意を決したように告げた。
「お前はサシャにとても似ている。クレアが産んだ子だとは思えないほどに。」
「…」
「私はサシャを誰よりも深く愛していた。いや、愛している。彼女への慕情はクレアへの愛情と時間が薄めて行ってくれると思っていた。だが、お前は年々サシャに似てくる。いつまでもサシャのことを引きずりたくはないのに良く似たお前の姿が、それを許してくれなかったんだ。」
「ですが、私はそのようなこと全く知りませんでした」
「ああ。お前のせいでないことなど分かっている。だが、最愛の女性によく似た娘を…しかも私を裏切りながら死んでいった彼女にそっくりのお前を、心から愛せるほど私はできた人間ではなかった。」
「裏切る、とは?他に叔母上には想い人がいらっしゃったのですか」
「そんな女ではない!」
誤解を正すように強い口調で答えた父ははっとして、私に謝った。
「すまない。そうじゃないんだ。サシャは美しく気高く聡明な女性だった。私を愛しているとも言ってくれていた。だが、今になって時々思う。彼女は本当に私を愛していたのだろうか、と」
「それは」
「いつもは人の目をまっすぐ見て話す彼女が、私に愛を告げる時だけは不自然に視線をそらしていた。お前も全く同じ癖がある。嘘を吐く…いや、カレンや他の誰かを庇って自分が怒られる時、お前は私の目を見ない。」
「まさか」
「その時、ふと思ったんだ。彼女は嘘を吐いていたのかもしれない、とな。信じたくなくて彼女は私を愛していたと思い込むようにしていたがな。」
「私と叔母上は別の人間です!」
「フォーゼム殿にあることないこと大勢の前で吹聴されたとな。」
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今話しているのは本当に私の父だろうか。私を嫌い、いつもカレンの肩ばかり持ちカレンばかり可愛がり続けた父の言葉だとは思えない。
私の驚愕を感じ取った父はほろ苦く笑う。
「分かっていた。ずっと分かっていたんだ」
「それならなぜ…」
「お前を見ているとサシャを思い出すからだ」
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ちらりとベッドにいる母を見ると、父は深い溜め息を一つ吐いた。次の言葉に迷っているのかなかなか答えない父に再度視線で問いかける。
父は意を決したように告げた。
「お前はサシャにとても似ている。クレアが産んだ子だとは思えないほどに。」
「…」
「私はサシャを誰よりも深く愛していた。いや、愛している。彼女への慕情はクレアへの愛情と時間が薄めて行ってくれると思っていた。だが、お前は年々サシャに似てくる。いつまでもサシャのことを引きずりたくはないのに良く似たお前の姿が、それを許してくれなかったんだ。」
「ですが、私はそのようなこと全く知りませんでした」
「ああ。お前のせいでないことなど分かっている。だが、最愛の女性によく似た娘を…しかも私を裏切りながら死んでいった彼女にそっくりのお前を、心から愛せるほど私はできた人間ではなかった。」
「裏切る、とは?他に叔母上には想い人がいらっしゃったのですか」
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誤解を正すように強い口調で答えた父ははっとして、私に謝った。
「すまない。そうじゃないんだ。サシャは美しく気高く聡明な女性だった。私を愛しているとも言ってくれていた。だが、今になって時々思う。彼女は本当に私を愛していたのだろうか、と」
「それは」
「いつもは人の目をまっすぐ見て話す彼女が、私に愛を告げる時だけは不自然に視線をそらしていた。お前も全く同じ癖がある。嘘を吐く…いや、カレンや他の誰かを庇って自分が怒られる時、お前は私の目を見ない。」
「まさか」
「その時、ふと思ったんだ。彼女は嘘を吐いていたのかもしれない、とな。信じたくなくて彼女は私を愛していたと思い込むようにしていたがな。」
「私と叔母上は別の人間です!」
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