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第一章 4月
お姉さまが欲しかったもの ★4★
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思い切り困った顔をしてしまっているのに、志奈さんは全く気にしない様子で手を合わせて聞いてくる。
「それで柚鈴ちゃんは何しに来たの?もしかして私に会いに来てくれたの?」
「し、志奈さんに会いに来たわけじゃありませんよ。そんなわけないじゃないですか」
思わず反抗の言葉が口についてしまう。
「そうよね」
志奈さんはとくに残念がる様子は見せずに頷いた。ニコニコとしたままで、当たり前よね、と付け足す。
この妙な余裕が、柚鈴の調子を狂わせるのだ。
こんなこと言いたいわけじゃなかったのにと思って、引き攣った顔が元に戻らなかった。
いつも可愛いことは言えてないのだけど、ここ最近色々あったので、自分の言葉が急に気になってきてしまったのかもしれない。
でも、この人に何をどんな風に言えばいいのかわからないのだ。
「柚鈴ちゃん」
幸が柚鈴の様子に心配して声がかけてくるが、気持ちが静まることがない。
分かっている。今は特に、薫のことを片付けなきゃいけない。
分かっているんだけど。
「でも、何か私に言いたいことがあるって顔をしているわよ」
そう言われてしまうと、言いたいことはなかったと思っていたのに、なんだか急激にモヤモヤしたものが生まれてきた。
どうして、そんなに余裕なんですか。
どうして、そんなに不安にならないんですか。
柚鈴自身が不安だったり混乱していた気持ちが集結して、志奈さんにぶつかろうとするみたいにグルグルしてしまう。
あぁ、いけない。これは八つ当たりだ。
そう思ったのに、志奈さんのにこやかな笑顔を見ていたら柚鈴は口火を切っていた。
「そもそも志奈さんはめんどくさいんですよ」
「え?」
柚鈴の勢い任せの声に、志奈さんは驚いたように目を丸くした。
「どうせすぐ分かるのに、生徒会長だったことを隠してみたり、入学式に変装して来てみたり。今日だって電話する前に現れてみたり」
「ちょ、ちょっと柚鈴ちゃん」
急に文句を言い始めた柚鈴に、驚いた幸が目を見開く。
「なんかもう色々と面倒なんですよ!」
「確かに」
志奈さんは傷ついた風でもなく、納得したように頷いた。
なんとも手応えのない反応に、柚鈴は大きく空振りしたような気持ちになりつつ、居たたまれずに志奈さんを見てから幸を見る。
幸は真っ青になって固まっていた。
それはそうだろう。目の前でなんの前触れもなく、義理の姉に文句を言い出す友人に対応するのは難しいと思う。
ご、ごめん。幸。
心の中で謝ってから、志奈さんの方を向き直る。
どうしよう。謝ったほうが当然いいよね?
全く傷ついた様子ではない志奈さんに、返ってこっちのほうが動揺してしまっているのだ。
悩んでいると、志奈さんの後ろから、艶のあるまっすぐな髪質のショートボブで落ち着いた雰囲気の女性が現れて、歩み寄ってきた。
どこか冷たい印象を受ける切れ長の目が、状況を見定めるように観察している。
「なに、喧嘩?急に走っていったと思ったら」
「喧嘩ではない、と思うわ」
その質問には自信がなさそうに返してから、志奈さんはこちらを振り返る。
その目が柚鈴の様子を伺うようしてから、柔らかく笑った。
「ごめんね、柚鈴ちゃん」
「あの、謝ってほしいわけじゃありません。というか、謝るのはこの場合、私じゃないですか?」
「うん。でもごめんね」
どこまでも穏やかに志奈さんは答えた。
「それで柚鈴ちゃんは何しに来たの?もしかして私に会いに来てくれたの?」
「し、志奈さんに会いに来たわけじゃありませんよ。そんなわけないじゃないですか」
思わず反抗の言葉が口についてしまう。
「そうよね」
志奈さんはとくに残念がる様子は見せずに頷いた。ニコニコとしたままで、当たり前よね、と付け足す。
この妙な余裕が、柚鈴の調子を狂わせるのだ。
こんなこと言いたいわけじゃなかったのにと思って、引き攣った顔が元に戻らなかった。
いつも可愛いことは言えてないのだけど、ここ最近色々あったので、自分の言葉が急に気になってきてしまったのかもしれない。
でも、この人に何をどんな風に言えばいいのかわからないのだ。
「柚鈴ちゃん」
幸が柚鈴の様子に心配して声がかけてくるが、気持ちが静まることがない。
分かっている。今は特に、薫のことを片付けなきゃいけない。
分かっているんだけど。
「でも、何か私に言いたいことがあるって顔をしているわよ」
そう言われてしまうと、言いたいことはなかったと思っていたのに、なんだか急激にモヤモヤしたものが生まれてきた。
どうして、そんなに余裕なんですか。
どうして、そんなに不安にならないんですか。
柚鈴自身が不安だったり混乱していた気持ちが集結して、志奈さんにぶつかろうとするみたいにグルグルしてしまう。
あぁ、いけない。これは八つ当たりだ。
そう思ったのに、志奈さんのにこやかな笑顔を見ていたら柚鈴は口火を切っていた。
「そもそも志奈さんはめんどくさいんですよ」
「え?」
柚鈴の勢い任せの声に、志奈さんは驚いたように目を丸くした。
「どうせすぐ分かるのに、生徒会長だったことを隠してみたり、入学式に変装して来てみたり。今日だって電話する前に現れてみたり」
「ちょ、ちょっと柚鈴ちゃん」
急に文句を言い始めた柚鈴に、驚いた幸が目を見開く。
「なんかもう色々と面倒なんですよ!」
「確かに」
志奈さんは傷ついた風でもなく、納得したように頷いた。
なんとも手応えのない反応に、柚鈴は大きく空振りしたような気持ちになりつつ、居たたまれずに志奈さんを見てから幸を見る。
幸は真っ青になって固まっていた。
それはそうだろう。目の前でなんの前触れもなく、義理の姉に文句を言い出す友人に対応するのは難しいと思う。
ご、ごめん。幸。
心の中で謝ってから、志奈さんの方を向き直る。
どうしよう。謝ったほうが当然いいよね?
全く傷ついた様子ではない志奈さんに、返ってこっちのほうが動揺してしまっているのだ。
悩んでいると、志奈さんの後ろから、艶のあるまっすぐな髪質のショートボブで落ち着いた雰囲気の女性が現れて、歩み寄ってきた。
どこか冷たい印象を受ける切れ長の目が、状況を見定めるように観察している。
「なに、喧嘩?急に走っていったと思ったら」
「喧嘩ではない、と思うわ」
その質問には自信がなさそうに返してから、志奈さんはこちらを振り返る。
その目が柚鈴の様子を伺うようしてから、柔らかく笑った。
「ごめんね、柚鈴ちゃん」
「あの、謝ってほしいわけじゃありません。というか、謝るのはこの場合、私じゃないですか?」
「うん。でもごめんね」
どこまでも穏やかに志奈さんは答えた。
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