107 / 282
第二章 5月‐序
一歩、進んで ★4★
しおりを挟む
カレーパウダー、コリアンダー、ガラムマサラ。
クローブ、クミン、ナツメグ、それから鷹の爪。
果物やココナッツオイルや諸々を並べて、柚鈴は楽しそうに笑った。
寮で食事を作る機会はないし、こういったスパイス類も勿論ないので、久しぶりだ。
カレーの材料は、なんだか柚鈴を楽しくさせる。
肉は鶏肉、包丁やまな板と準備を始める。
「僕はとびきり辛くなくていいからね」
料理を始める前の柚鈴に、早々に言ったのはオトウサンだ。
「普通の、普通に辛いので充分だから」
念を押すように言ったオトウサンに、志奈さんが眉を顰めて反論する。
「お父様、そんなことでいいの?辛くても食べようとする気持ちが大切なんじゃない?」
そういうと、オトウサンは小さく両手を上げて、降参の意を表した。
「いや、僕はもういい。志奈は知らないだろうけどね、僕は柚鈴ちゃんと百合さんがよく行くカレーやさんに行って、一番辛いカレーを食べたことがあるんだよ」
「そうなんですか?」
その話は初耳で柚鈴が聞くと、オトウサンは重々しく頷いた。
少々、苦い思い出であるような反応だ。
思い当たる所があるのだろう。お母さんは、何も言わずに笑って聞いている。
「美味しかったよ。美味しかったけどね、本当に辛くて途中で味が分からなくなってくるし、量が多かったのもあったけど、ちょっと全部完食するのは難しかったよ」
「ああ…そうですよね」
その言葉に、柚鈴は納得した。
お店の人が、初心者にはお勧めしない程に辛いカレー。
一口目は甘味すら感じる。辛さも辛くて美味しい、と柚鈴は思っている。
お母さんもそう思っているようだけど、やっぱり辛さがつらい、と思う人も多いはずだ。
しかも量もかなり多い。辛くなればなるほど多い。
その量の増減は、実は足される唐辛子などの量らしい。
一番辛いカレーだとしたら、さぞ多かっただろう。
ちなみに、お店のカレーは量の面から柚鈴も一人前を全部食べることはできない。
一人前をお母さんとシェアし、後はサイドメニューを頼むようにしている。
ただ、頻繁に行って一人前をシェアするのは少し申し訳ない気がする。
それもあって、一人が食べれる量を調節できる、家でのカレー作りに至ったという経緯もあるのだ。
「志奈、お前知らないだろうけど。今日のカレーだって、まず普通にスープカレーを作ってから、唐辛子とか鷹の爪を足していくんだよ。普通のカレーだって、そこそこに辛いんだから、無理する必要はないと思わないか?」
「……お、思わないわ。というより、尚更普通じゃないカレーを食べたくなってきたくらいよ」
志奈さんが、一瞬怯んだものの断固譲らないので、オトウサンは肩を竦めた。
言い出したら聞かない、というより、オトウサンがすでに体験した、柚鈴とお母さんの普通を自分も体験したい、という所だろうか。
うん、きっとそうに違いない。
「何にしろ、僕は普通の辛さでお願いします」
「わかりました」
話を聞いていたお母さんがクスクス笑う。
柚鈴はとりあえず、普通のカレーも二人分作っておくことにした。
余ったら、タッパにいれて寮に持ち帰ればいいのだ。
「本当に手伝わなくていいの?」
「いいの。一応、前倒しの母の日だから」
それにしても、と柚鈴は付け加えた。
確かに広い台所だが、目の前に大人が3人もいるのだ。
なんでこの家族は、台所に集まってきているんだろうと、呆れたように目を向けた。
「みんな、リビングにいていいんですよ」
邪魔とまでは言えないが、思わず率直に言ってしまった。
料理を作る姿を見守ろうとする保護者。
それがここでは3人もいたようだ。反論が出る前に。
「というか、リビングにいてください」
重ねて、嘆願の気持ちで言葉を重ねた。
クローブ、クミン、ナツメグ、それから鷹の爪。
果物やココナッツオイルや諸々を並べて、柚鈴は楽しそうに笑った。
寮で食事を作る機会はないし、こういったスパイス類も勿論ないので、久しぶりだ。
カレーの材料は、なんだか柚鈴を楽しくさせる。
肉は鶏肉、包丁やまな板と準備を始める。
「僕はとびきり辛くなくていいからね」
料理を始める前の柚鈴に、早々に言ったのはオトウサンだ。
「普通の、普通に辛いので充分だから」
念を押すように言ったオトウサンに、志奈さんが眉を顰めて反論する。
「お父様、そんなことでいいの?辛くても食べようとする気持ちが大切なんじゃない?」
そういうと、オトウサンは小さく両手を上げて、降参の意を表した。
「いや、僕はもういい。志奈は知らないだろうけどね、僕は柚鈴ちゃんと百合さんがよく行くカレーやさんに行って、一番辛いカレーを食べたことがあるんだよ」
「そうなんですか?」
その話は初耳で柚鈴が聞くと、オトウサンは重々しく頷いた。
少々、苦い思い出であるような反応だ。
思い当たる所があるのだろう。お母さんは、何も言わずに笑って聞いている。
「美味しかったよ。美味しかったけどね、本当に辛くて途中で味が分からなくなってくるし、量が多かったのもあったけど、ちょっと全部完食するのは難しかったよ」
「ああ…そうですよね」
その言葉に、柚鈴は納得した。
お店の人が、初心者にはお勧めしない程に辛いカレー。
一口目は甘味すら感じる。辛さも辛くて美味しい、と柚鈴は思っている。
お母さんもそう思っているようだけど、やっぱり辛さがつらい、と思う人も多いはずだ。
しかも量もかなり多い。辛くなればなるほど多い。
その量の増減は、実は足される唐辛子などの量らしい。
一番辛いカレーだとしたら、さぞ多かっただろう。
ちなみに、お店のカレーは量の面から柚鈴も一人前を全部食べることはできない。
一人前をお母さんとシェアし、後はサイドメニューを頼むようにしている。
ただ、頻繁に行って一人前をシェアするのは少し申し訳ない気がする。
それもあって、一人が食べれる量を調節できる、家でのカレー作りに至ったという経緯もあるのだ。
「志奈、お前知らないだろうけど。今日のカレーだって、まず普通にスープカレーを作ってから、唐辛子とか鷹の爪を足していくんだよ。普通のカレーだって、そこそこに辛いんだから、無理する必要はないと思わないか?」
「……お、思わないわ。というより、尚更普通じゃないカレーを食べたくなってきたくらいよ」
志奈さんが、一瞬怯んだものの断固譲らないので、オトウサンは肩を竦めた。
言い出したら聞かない、というより、オトウサンがすでに体験した、柚鈴とお母さんの普通を自分も体験したい、という所だろうか。
うん、きっとそうに違いない。
「何にしろ、僕は普通の辛さでお願いします」
「わかりました」
話を聞いていたお母さんがクスクス笑う。
柚鈴はとりあえず、普通のカレーも二人分作っておくことにした。
余ったら、タッパにいれて寮に持ち帰ればいいのだ。
「本当に手伝わなくていいの?」
「いいの。一応、前倒しの母の日だから」
それにしても、と柚鈴は付け加えた。
確かに広い台所だが、目の前に大人が3人もいるのだ。
なんでこの家族は、台所に集まってきているんだろうと、呆れたように目を向けた。
「みんな、リビングにいていいんですよ」
邪魔とまでは言えないが、思わず率直に言ってしまった。
料理を作る姿を見守ろうとする保護者。
それがここでは3人もいたようだ。反論が出る前に。
「というか、リビングにいてください」
重ねて、嘆願の気持ちで言葉を重ねた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
目の前で始まった断罪イベントが理不尽すぎたので口出ししたら巻き込まれた結果、何故か王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
私、ティーリャ。王都学校の二年生。
卒業生を送る会が終わった瞬間に先輩が婚約破棄の断罪イベントを始めた。
理不尽すぎてイライラしたから口を挟んだら、お前も同罪だ!って謎のトバッチリ…マジないわー。
…と思ったら何故か王子様に気に入られちゃってプロポーズされたお話。
全二話で完結します、予約投稿済み
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる