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第三章 5月‐結
お姉さま、お茶会参加のはずでした! 6
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「柚鈴さん、紫乃舞さんと話すことはまだあるの?」
「ええと、多分ないと思います」
「それは良かったわ」
「ええ~。茶会行っちゃうの?私はもっと柚鈴ちゃんと遊びたい」
「しのさんは、私で遊びたいだけでしょう」
私と遊ぶ、と私で遊ぶ、では一文字違うだけで、意味合いには大きな違いがある。
そこを指摘すると、しのさんはあっさり頷いた。
「そうともいう」
「……」
この人は…もう少し、反省するとか、悪びれるとかないのだろうか。
柚鈴は頭痛を覚えた。
真美子さんは、そんな柚鈴に同情するように、一度目線を寄越してから諭すように、しのさんに言葉を掛ける。
「いい加減にしたら?柚鈴さんが迷惑がっているでしょう。そもそも、予定がある人を連れ出すなんて問題があると思わなかったの?」
「本当は茶会に一緒に参加するつもりだったからさ。ところが、今日の茶道部には出禁申し付けられちゃったんだよ。それこそ酷いと思わない?真美子」
「あなた、そんな恰好で参加するつもりだったの?」
真美子さんは、しのさんのラフな装いを見て、呆れたようにため息をついた。
その豊満なボディがはっきり分かってしまう姿は、茶会のような場所にはそぐわないと言うのだろう。
…なんとなく、そうだよね、と。
心の中で同意した。
お茶会なんて参加したことはないけれど、やっぱりある程度のマナーや作法があるだろうし、服装なんて最も重要な所だろう。
それくらいは、柚鈴でも思う。
しのさんの方は納得がいかないらしく、唇を尖らせて反論する。
「この時期にする常葉学園の茶会に服装指定なんてなかったでしょうよ。少なくとも私は聞いたことがない」
「指定もなにも、そもそも招待客は制服だし、茶道部は着物姿でしょう。あなただって昨年はそうだったじゃない。誰でも暗黙の了解で理解出来てると思うわ。もう少し考えた格好して来るなりしないから、信用されなかったんでしょう。そもそもあなた、前もって連絡したりしたの?」
「そこは顔パスのつもりだったよ。私は前部長なんだからさ」
「仮にも前部長なんだから、TPOに基づいた服装を求められてるのが分からないの?」
「分かってても面倒くさい」
「……」
どこまでも持論を崩さないしのさんに、真美子さんは冷たい視線だけを返した。
恐らくこれは見えるのではなく、本当に冷たい視線だ。
しのさんは、真美子さんを気にすることなく柚鈴の方を向く。そして意外な程まっすぐな視線で真面目に言い出した。
「柚鈴ちゃんに助言者が出来たらつまらないから、やっぱり行かないで欲しいんだけど」
「え…?」
さっきまで軽く言葉を紡いでばかりだったのに、急に真剣な表情を作るしのさんに、驚いてしまう。
そしてその言葉は、不思議な程、心を捕らえた。
だから、つい。
口が軽くなって、思ったままの言葉が口を出た。
「でも、別に今日行っても行かなくても、もうすでに…。助言者からのお誘いを完全に回避することは出来ませんから、あまり気にしなくてもいい気もするんですけど…」
「ん?」
しのさんは不思議そうな表情を見せた。
「え?何?もう助言者…はいないか。バッチしてないしね。てことは、もう申し込み受けてるのか。柚鈴ちゃん、ペア作る気あるの?」
「いや、ありませんけど」
そこまで言わなくても良い気がすると思いつつ。
なんとなく流れのまま、言葉にすると、しのさんは、にんまりと満足そうに笑った。
柚鈴が思わず、まずいことを言った!?と感じる笑顔だ。
「お、偉いねぇ。やっぱり志奈が一番か。よおしよし」
まるで、犬猫でも褒めるように。しのさんは柚鈴の頭を撫でた。
「ええと、多分ないと思います」
「それは良かったわ」
「ええ~。茶会行っちゃうの?私はもっと柚鈴ちゃんと遊びたい」
「しのさんは、私で遊びたいだけでしょう」
私と遊ぶ、と私で遊ぶ、では一文字違うだけで、意味合いには大きな違いがある。
そこを指摘すると、しのさんはあっさり頷いた。
「そうともいう」
「……」
この人は…もう少し、反省するとか、悪びれるとかないのだろうか。
柚鈴は頭痛を覚えた。
真美子さんは、そんな柚鈴に同情するように、一度目線を寄越してから諭すように、しのさんに言葉を掛ける。
「いい加減にしたら?柚鈴さんが迷惑がっているでしょう。そもそも、予定がある人を連れ出すなんて問題があると思わなかったの?」
「本当は茶会に一緒に参加するつもりだったからさ。ところが、今日の茶道部には出禁申し付けられちゃったんだよ。それこそ酷いと思わない?真美子」
「あなた、そんな恰好で参加するつもりだったの?」
真美子さんは、しのさんのラフな装いを見て、呆れたようにため息をついた。
その豊満なボディがはっきり分かってしまう姿は、茶会のような場所にはそぐわないと言うのだろう。
…なんとなく、そうだよね、と。
心の中で同意した。
お茶会なんて参加したことはないけれど、やっぱりある程度のマナーや作法があるだろうし、服装なんて最も重要な所だろう。
それくらいは、柚鈴でも思う。
しのさんの方は納得がいかないらしく、唇を尖らせて反論する。
「この時期にする常葉学園の茶会に服装指定なんてなかったでしょうよ。少なくとも私は聞いたことがない」
「指定もなにも、そもそも招待客は制服だし、茶道部は着物姿でしょう。あなただって昨年はそうだったじゃない。誰でも暗黙の了解で理解出来てると思うわ。もう少し考えた格好して来るなりしないから、信用されなかったんでしょう。そもそもあなた、前もって連絡したりしたの?」
「そこは顔パスのつもりだったよ。私は前部長なんだからさ」
「仮にも前部長なんだから、TPOに基づいた服装を求められてるのが分からないの?」
「分かってても面倒くさい」
「……」
どこまでも持論を崩さないしのさんに、真美子さんは冷たい視線だけを返した。
恐らくこれは見えるのではなく、本当に冷たい視線だ。
しのさんは、真美子さんを気にすることなく柚鈴の方を向く。そして意外な程まっすぐな視線で真面目に言い出した。
「柚鈴ちゃんに助言者が出来たらつまらないから、やっぱり行かないで欲しいんだけど」
「え…?」
さっきまで軽く言葉を紡いでばかりだったのに、急に真剣な表情を作るしのさんに、驚いてしまう。
そしてその言葉は、不思議な程、心を捕らえた。
だから、つい。
口が軽くなって、思ったままの言葉が口を出た。
「でも、別に今日行っても行かなくても、もうすでに…。助言者からのお誘いを完全に回避することは出来ませんから、あまり気にしなくてもいい気もするんですけど…」
「ん?」
しのさんは不思議そうな表情を見せた。
「え?何?もう助言者…はいないか。バッチしてないしね。てことは、もう申し込み受けてるのか。柚鈴ちゃん、ペア作る気あるの?」
「いや、ありませんけど」
そこまで言わなくても良い気がすると思いつつ。
なんとなく流れのまま、言葉にすると、しのさんは、にんまりと満足そうに笑った。
柚鈴が思わず、まずいことを言った!?と感じる笑顔だ。
「お、偉いねぇ。やっぱり志奈が一番か。よおしよし」
まるで、犬猫でも褒めるように。しのさんは柚鈴の頭を撫でた。
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