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第三章 5月‐結
お姉さま、お茶会参加のはずでした! 8
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「そんな風に言われると、予想を超えることがしたくなるってのが人情」
「それを人情とは言わないわ」
「真美子にとっちゃあ、そうだろうね」
真美子さんが、しのさんを否定すればするほど、しのさんは楽しそうに言葉を返して、雰囲気はどんどん悪くなっていく。
…これ、もしかして。
どうにか止めないとまずいんじゃないだろうか、と。
焦った気持ちになってくる。
なんせここには三人しかいないのだ。
もし止めるとすれば柚鈴しかいない。
しかし、だ。
一体この二人をどうすれば止められると言うのだろうか。
柚鈴にはさっぱり分からなかった。
ど、どうしよう。
こういう時に、他の人だったらどうするんだろうか?
それすら分からない。
よく考えてみたら、今日初対面のしのさんにしろ、本日2回目の真美子さんにしろ、今まで全くお付き合いしたことのないタイプだし、分かるはずもない。
だとしたら、柚鈴に出来ることはなんだろうか?
そう考えてから。そうだ、と思いつく。
この二人を良く知っていて、対等のお付き合いをしている人なら止めれるのはずではないだろうか?
出来れば選びたくない手段だけれど。
その答えに怯んだが、目の前で変わらず会話をしている二人の様子に、決意を固めて大きく言った。
「電話しますっ」
「…は?」
「…え?」
二人が意味が分からずにこちらを振り向くのが分かって。
もう、致し方なし、と、柚鈴は携帯電話をスカートのポケットから出した。
そして二人からの視線を浴びたまま、電源を入れて電話をかける。
相手は、柚鈴にとっての最終手段、志奈さんだ。
出なかったらどうしようかと、一瞬不安もよぎったが。
その不安が募る間もなく、通話表示になった。
『もしもし?柚鈴ちゃん』
相変わらずの、柔らかなソプラノの声が聞こえてくる。
良かった…!
その声に、ほっとしたのだろうか。思わず自分が緊張していたことを感じてしまい、縋りたいような気持ちが生まれた。そのおかげで、いつもなら絶対言わないような言葉がすらすらと出て来る。
「志奈さん?なんとかして下さいっ。あの、お友達の岬紫乃舞さんと真美子さんが目の前で険悪なんです」
『え?しのと、真美子?えっ?高等部にいるということ?』
突然の頼みに、流石にすぐには飲み込めないのだろう。
戸惑うような声が聞こえるが、柚鈴は細かい説明をする気にもなれない。
なんとか、してくれるんでしょ?あなたは。
そんな確信と期待を込めて。
一息、吸ってから。勢いのまま、切り札になる言葉を出した。
「お姉ちゃん。お願い、します!」
電話の先から、息を飲むような音がして。
少しだけ間があった。
まるで言ってはいけない禁忌の言葉か、とっておきの魔法の言葉を発したような気持ちになってしまう。
その間に込められた言葉にならない志奈さんの気持ちを、びんびんと感じつつ。
柚鈴は、その意味合いを理解するのは少し嫌で、考えることはやめた。
なんとなく冷や汗のようなものが流れるのを感じてしまう。
それから。
携帯をあてた、柚鈴の耳元に実に機嫌の良い、優しい優しい声が却ってきた。
『しのに、代わって?』
どこか艶と迫力を感じさせるその言葉に、柚鈴は従った。
しのさんに携帯を渡すと、相手は余裕の態度のまま受け取る。
だが。耳に当てて、恐らく志奈さんの一言目で、はっとしたように目を見開いた。
「あー…うん。わかった」
しばらくそのまま話を聞いて。何を言われたのか、しのさんは短く答えた。
携帯を、柚鈴に返してから、どこかつまらなそうに肩を竦めた。
「真美子の言う通りにする」
しのさんは、あんまりにもあっさりすぎるほどにそう言った。
あの、強引な態度のしのさんが、こんなにも短時間の会話で納得したのだ。
これには真美子さんの方が、驚いたように息を飲んだ。
「それを人情とは言わないわ」
「真美子にとっちゃあ、そうだろうね」
真美子さんが、しのさんを否定すればするほど、しのさんは楽しそうに言葉を返して、雰囲気はどんどん悪くなっていく。
…これ、もしかして。
どうにか止めないとまずいんじゃないだろうか、と。
焦った気持ちになってくる。
なんせここには三人しかいないのだ。
もし止めるとすれば柚鈴しかいない。
しかし、だ。
一体この二人をどうすれば止められると言うのだろうか。
柚鈴にはさっぱり分からなかった。
ど、どうしよう。
こういう時に、他の人だったらどうするんだろうか?
それすら分からない。
よく考えてみたら、今日初対面のしのさんにしろ、本日2回目の真美子さんにしろ、今まで全くお付き合いしたことのないタイプだし、分かるはずもない。
だとしたら、柚鈴に出来ることはなんだろうか?
そう考えてから。そうだ、と思いつく。
この二人を良く知っていて、対等のお付き合いをしている人なら止めれるのはずではないだろうか?
出来れば選びたくない手段だけれど。
その答えに怯んだが、目の前で変わらず会話をしている二人の様子に、決意を固めて大きく言った。
「電話しますっ」
「…は?」
「…え?」
二人が意味が分からずにこちらを振り向くのが分かって。
もう、致し方なし、と、柚鈴は携帯電話をスカートのポケットから出した。
そして二人からの視線を浴びたまま、電源を入れて電話をかける。
相手は、柚鈴にとっての最終手段、志奈さんだ。
出なかったらどうしようかと、一瞬不安もよぎったが。
その不安が募る間もなく、通話表示になった。
『もしもし?柚鈴ちゃん』
相変わらずの、柔らかなソプラノの声が聞こえてくる。
良かった…!
その声に、ほっとしたのだろうか。思わず自分が緊張していたことを感じてしまい、縋りたいような気持ちが生まれた。そのおかげで、いつもなら絶対言わないような言葉がすらすらと出て来る。
「志奈さん?なんとかして下さいっ。あの、お友達の岬紫乃舞さんと真美子さんが目の前で険悪なんです」
『え?しのと、真美子?えっ?高等部にいるということ?』
突然の頼みに、流石にすぐには飲み込めないのだろう。
戸惑うような声が聞こえるが、柚鈴は細かい説明をする気にもなれない。
なんとか、してくれるんでしょ?あなたは。
そんな確信と期待を込めて。
一息、吸ってから。勢いのまま、切り札になる言葉を出した。
「お姉ちゃん。お願い、します!」
電話の先から、息を飲むような音がして。
少しだけ間があった。
まるで言ってはいけない禁忌の言葉か、とっておきの魔法の言葉を発したような気持ちになってしまう。
その間に込められた言葉にならない志奈さんの気持ちを、びんびんと感じつつ。
柚鈴は、その意味合いを理解するのは少し嫌で、考えることはやめた。
なんとなく冷や汗のようなものが流れるのを感じてしまう。
それから。
携帯をあてた、柚鈴の耳元に実に機嫌の良い、優しい優しい声が却ってきた。
『しのに、代わって?』
どこか艶と迫力を感じさせるその言葉に、柚鈴は従った。
しのさんに携帯を渡すと、相手は余裕の態度のまま受け取る。
だが。耳に当てて、恐らく志奈さんの一言目で、はっとしたように目を見開いた。
「あー…うん。わかった」
しばらくそのまま話を聞いて。何を言われたのか、しのさんは短く答えた。
携帯を、柚鈴に返してから、どこかつまらなそうに肩を竦めた。
「真美子の言う通りにする」
しのさんは、あんまりにもあっさりすぎるほどにそう言った。
あの、強引な態度のしのさんが、こんなにも短時間の会話で納得したのだ。
これには真美子さんの方が、驚いたように息を飲んだ。
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