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【Episode 41】
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オカマたちは、好き勝手に吾輩をもてあそぶ。
いいかげん吾輩も頭にきて、
「ワン!」
と、吠えてやった。
するとオカマたちは驚いて、一斉に身を退いた。
「ヤダ、吠えたりしたら、コワイー!」
「なによ。キレてるの?」
(いや、そんなことはないですよ……)
仕方なく吾輩はダンスを踊った。
「見て、このコ、踊ってるー」
「ワオ! すごいじゃない」
「阿波踊りかしら」
(吾輩お得意の、ヒップ・ホップだっての!)
「すてきよ、シバちゃん」
「シバちゃん! シバちゃん!」
とたんに、シバちゃんコールが巻き起こった。
オカマたちの手拍子に乗って、我輩は調子づく。
マイケルは呆れたように吾輩を見ていた。
しばらく踊っていると、奈美が呼ぶ声が聴こえて、吾輩はマイケルに別れを告げた。
「シバちゃーん、また会おうねえ」
オカマが声をかけてきたが、吾輩はシカトした。
できることなら、もう会いたくはない。
「なに、あの人たち。ゴン太のこと、『シバちゃん』だって。もしかして、あれがオカマってやつかな。なんかキモい」
リードをつけながら、奈美が言う。
そう、まさしくキモい。
悪いやつらではないけれど、マイケルの気持ちがよくわかる。
マイケルの想いを察しつつ、園内を見渡す。
ルーシーの姿はない。
もう少し待っていたかったが、奈美にリードを引かれて吾輩は仕方なしに公園をあとにした。
それから3日間、ルーシーの姿を見ることはなかった。
吾輩は心配になってマイケルに訊いてみたりしたが、彼は首をふるだけだった。
そして、4日目が過ぎた日、ルーシーのことを想いながら、犬小屋の外で身を伏せていると、久しぶりにサラが姿を見せた。
「やあ、サラ。子供が産まれたんだって?」
「ええ。私の可愛い子供たち」
サラは、すらりとしたもとのスタイルにもどっていた。
「母親になった気分というのは、どうなんだ?」
「それはもう、いいに決まってるじゃないの。最高にハッピーよ」
「そうか。ところで、父親はどこのどいつなんだよ」
「父親なんて関係ないわ。あの子たちは、私だけのものなんだから」
「それは違うぞ。父親には、父親の権利というものがある」
「なにが権利よ。私たち種族に、そんなものはないわ。オスなんて、ただの消耗品よ」
「消耗品って、おまえ……」
なんとひどい言い方であろうか。
「だけど、子供たちにだって、父親が必要ではないか」
「ゴン太は知らないと思うけど、私たち種族のオスは最低なのよ。だから、子供が産まれたら教えてはいけないし、絶対に会わせてもいけないの」
「どういうことだよ」
「父親となったオス猫は、我が子を虐待することがあるのよ」
「なんだって?」
吾輩は信じられない面持ちで、眉根を寄せた。
「愛する我が子を虐待するなんて、とても考えられん。それでは、まるで鬼ではないか」
「ときには、殺してしまうおそれもあるから、産まれてから数日間はとても危険なの。だからそのあいだは、片時も我が子からは離れられないのよ」
「うむ。猫という種族は大変なんだな」
「我が子を護るのは、母親として当然のことよ」
そう言うサラが、逞しく見えるのは気のせいではないだろう。
それが母親となったことの証明なのだ。
「それで、もう離れても大丈夫ということなのか?」
「そ。あの子たちも、もう走れるくらいにはなったから」
「そうかそうか。もう走れるのか。早く会いたいものだな」
「呼ぶ?」
「え、いいのか?」
「いいわよ。家の敷地の外には、まだ連れていけないけど」
サラは我が子を呼んだ。
すると、どうだろう。
縁側に小さな3匹の仔猫が姿を現し、庭に降りてひょこひょことやってきたのだった。
いいかげん吾輩も頭にきて、
「ワン!」
と、吠えてやった。
するとオカマたちは驚いて、一斉に身を退いた。
「ヤダ、吠えたりしたら、コワイー!」
「なによ。キレてるの?」
(いや、そんなことはないですよ……)
仕方なく吾輩はダンスを踊った。
「見て、このコ、踊ってるー」
「ワオ! すごいじゃない」
「阿波踊りかしら」
(吾輩お得意の、ヒップ・ホップだっての!)
「すてきよ、シバちゃん」
「シバちゃん! シバちゃん!」
とたんに、シバちゃんコールが巻き起こった。
オカマたちの手拍子に乗って、我輩は調子づく。
マイケルは呆れたように吾輩を見ていた。
しばらく踊っていると、奈美が呼ぶ声が聴こえて、吾輩はマイケルに別れを告げた。
「シバちゃーん、また会おうねえ」
オカマが声をかけてきたが、吾輩はシカトした。
できることなら、もう会いたくはない。
「なに、あの人たち。ゴン太のこと、『シバちゃん』だって。もしかして、あれがオカマってやつかな。なんかキモい」
リードをつけながら、奈美が言う。
そう、まさしくキモい。
悪いやつらではないけれど、マイケルの気持ちがよくわかる。
マイケルの想いを察しつつ、園内を見渡す。
ルーシーの姿はない。
もう少し待っていたかったが、奈美にリードを引かれて吾輩は仕方なしに公園をあとにした。
それから3日間、ルーシーの姿を見ることはなかった。
吾輩は心配になってマイケルに訊いてみたりしたが、彼は首をふるだけだった。
そして、4日目が過ぎた日、ルーシーのことを想いながら、犬小屋の外で身を伏せていると、久しぶりにサラが姿を見せた。
「やあ、サラ。子供が産まれたんだって?」
「ええ。私の可愛い子供たち」
サラは、すらりとしたもとのスタイルにもどっていた。
「母親になった気分というのは、どうなんだ?」
「それはもう、いいに決まってるじゃないの。最高にハッピーよ」
「そうか。ところで、父親はどこのどいつなんだよ」
「父親なんて関係ないわ。あの子たちは、私だけのものなんだから」
「それは違うぞ。父親には、父親の権利というものがある」
「なにが権利よ。私たち種族に、そんなものはないわ。オスなんて、ただの消耗品よ」
「消耗品って、おまえ……」
なんとひどい言い方であろうか。
「だけど、子供たちにだって、父親が必要ではないか」
「ゴン太は知らないと思うけど、私たち種族のオスは最低なのよ。だから、子供が産まれたら教えてはいけないし、絶対に会わせてもいけないの」
「どういうことだよ」
「父親となったオス猫は、我が子を虐待することがあるのよ」
「なんだって?」
吾輩は信じられない面持ちで、眉根を寄せた。
「愛する我が子を虐待するなんて、とても考えられん。それでは、まるで鬼ではないか」
「ときには、殺してしまうおそれもあるから、産まれてから数日間はとても危険なの。だからそのあいだは、片時も我が子からは離れられないのよ」
「うむ。猫という種族は大変なんだな」
「我が子を護るのは、母親として当然のことよ」
そう言うサラが、逞しく見えるのは気のせいではないだろう。
それが母親となったことの証明なのだ。
「それで、もう離れても大丈夫ということなのか?」
「そ。あの子たちも、もう走れるくらいにはなったから」
「そうかそうか。もう走れるのか。早く会いたいものだな」
「呼ぶ?」
「え、いいのか?」
「いいわよ。家の敷地の外には、まだ連れていけないけど」
サラは我が子を呼んだ。
すると、どうだろう。
縁側に小さな3匹の仔猫が姿を現し、庭に降りてひょこひょことやってきたのだった。
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