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【Episode 72】
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ほどなくして、玄関のドアが開いた。
まずは奈美と真紀が出てきた。
そのあとからママとパパ。
そして最後に大ママが出てきて、玄関の鍵を掛けた。
「ワン! ワン!」
(みなさんお揃いってことは、ミッシェルに会いにみんなで行くんですね!)
吾輩はうれしくなって飛び跳ねた。
するとパパが近寄ってきて、
「家族みんなで出掛けてくるから、留守番よろしくな」
吾輩の頭をなでながら、そう言った。
ななな……。
この展開は……。
そう思いつつも、あまりにも信じられぬその言葉に、吾輩は眩暈(めまい)を覚えてクラッとした。
「ワン……、ワン……」
(え、え……、そ、それって、どういうことですか、パパ……。今日はミッシェルに会いに行くんじゃ……)
パパを見つめる眼に涙が滲んだ。
「ワン……、ワ、ン……」
(ねえ、大ママ。そうですよね、ミッシェルに会いに行くんですよね……)
吾輩は、絶望に打ちひしがれて、助けを求めるように大ママを見つめた。
まさか、吾輩はまた夢を見ているのだろうか。
それとも、それとも――
これが正夢ってやつですかー!!!
吾輩は大ママとパパの顔を交互に見た。
すると、
「パパ、そんな騙すようなことを言ったら、ゴン太がかわいそうよ。さァ、待ち合わせの時間に遅れるから行きましょう」
大ママは、夢で見たときとは違う台詞を言った。
パパはそれに、「はいはい」と答えると、背のうしろに回していたもう片方の手を出した。
その手にはリードが握られていた。
パパは、リードを背のうしろに隠していたのだ。
「よし、ゴン太。ミッシェルに会いにいこう!」
吾輩にリードを着けながらパパが言った。
「ワン! ワン、ワン!」
(はい! 行きます! パパ、ありがとう!)
吾輩は感激のあまり、涙を流す代わりにオシッコをチビらせてしまった。
そうして、吾輩をふくめた大原家一行は、河川敷の公園へと向かった。
吾輩は、ミッシェルに会いたい気持ちが先に立って、犬小屋でふて寝をしている鈴木家のベンなどには一瞥(いちべつ)もくれずに進んだ。
ズンズンズン、ズンズンズンズと進んでいくと、河川敷の土手が見えてきた。
吾輩は走り出す勢いで、パパの持つリードを引いた。
「こらこら、ゴン太! おまえの気持ちはわかるが、そんなにリードを引くなって」
パパがそう言うのもかまわず、吾輩はリードを引きまくった。
「ゴン太、もっとスローダウン!」
パパはたまらずに小走りになった。
「ワン! ワン!」
(スローダウンなんて、できますかっての。さっきの意地悪の、お返しですよ!)
吾輩はさらに加速した。
「おいおいおい! 待て、ゴン太! 走るなって!」
「ワン! ワン!」
(それは、無理な相談ですよー!)
吾輩の走りについてこれず、パパはリードを離してしまった。
やった、ラッキー!
ってなわけで、吾輩はぐんぐんスピードを上げて、一気に河川敷の土手を駆け上がった。
午前中の公園には、さすがに仲間たちの姿はほとんどなかった。
吾輩は公園全体を見渡す。
すると、吾輩の眼に、一匹の柴犬の姿が眼に入った。
ミッシェルだ……。
吾輩は逸(はや)る気持ちを抑えて、ゆっくりとミッシェルに近づいていった。
夢にまで見た、ことはないが、吾輩の先には姉か妹のミッシェルがいた。
激しく胸を叩く鼓動が、耳にはっきり聴こえてくる。
吾輩は喉の渇きを覚えて、なんども生唾を飲みこんだ。
吾輩が近づいていくことを、ミッシェルのほうも気づいた。
ミッシェルが吾輩を見つめる。
同じ母から産まれた三つ子の中の一匹、ミッシェル。
感動の再会である。
そばにいるご主人も吾輩に気づいて、気を遣ってかミッシェルからリードを外した。
ミッシェルも吾輩のほうへゆっくりと近づいてきた。
ミッシェル……。
「ミッシェル!」
吾輩は声を出して名を呼んだ。
まずは奈美と真紀が出てきた。
そのあとからママとパパ。
そして最後に大ママが出てきて、玄関の鍵を掛けた。
「ワン! ワン!」
(みなさんお揃いってことは、ミッシェルに会いにみんなで行くんですね!)
吾輩はうれしくなって飛び跳ねた。
するとパパが近寄ってきて、
「家族みんなで出掛けてくるから、留守番よろしくな」
吾輩の頭をなでながら、そう言った。
ななな……。
この展開は……。
そう思いつつも、あまりにも信じられぬその言葉に、吾輩は眩暈(めまい)を覚えてクラッとした。
「ワン……、ワン……」
(え、え……、そ、それって、どういうことですか、パパ……。今日はミッシェルに会いに行くんじゃ……)
パパを見つめる眼に涙が滲んだ。
「ワン……、ワ、ン……」
(ねえ、大ママ。そうですよね、ミッシェルに会いに行くんですよね……)
吾輩は、絶望に打ちひしがれて、助けを求めるように大ママを見つめた。
まさか、吾輩はまた夢を見ているのだろうか。
それとも、それとも――
これが正夢ってやつですかー!!!
吾輩は大ママとパパの顔を交互に見た。
すると、
「パパ、そんな騙すようなことを言ったら、ゴン太がかわいそうよ。さァ、待ち合わせの時間に遅れるから行きましょう」
大ママは、夢で見たときとは違う台詞を言った。
パパはそれに、「はいはい」と答えると、背のうしろに回していたもう片方の手を出した。
その手にはリードが握られていた。
パパは、リードを背のうしろに隠していたのだ。
「よし、ゴン太。ミッシェルに会いにいこう!」
吾輩にリードを着けながらパパが言った。
「ワン! ワン、ワン!」
(はい! 行きます! パパ、ありがとう!)
吾輩は感激のあまり、涙を流す代わりにオシッコをチビらせてしまった。
そうして、吾輩をふくめた大原家一行は、河川敷の公園へと向かった。
吾輩は、ミッシェルに会いたい気持ちが先に立って、犬小屋でふて寝をしている鈴木家のベンなどには一瞥(いちべつ)もくれずに進んだ。
ズンズンズン、ズンズンズンズと進んでいくと、河川敷の土手が見えてきた。
吾輩は走り出す勢いで、パパの持つリードを引いた。
「こらこら、ゴン太! おまえの気持ちはわかるが、そんなにリードを引くなって」
パパがそう言うのもかまわず、吾輩はリードを引きまくった。
「ゴン太、もっとスローダウン!」
パパはたまらずに小走りになった。
「ワン! ワン!」
(スローダウンなんて、できますかっての。さっきの意地悪の、お返しですよ!)
吾輩はさらに加速した。
「おいおいおい! 待て、ゴン太! 走るなって!」
「ワン! ワン!」
(それは、無理な相談ですよー!)
吾輩の走りについてこれず、パパはリードを離してしまった。
やった、ラッキー!
ってなわけで、吾輩はぐんぐんスピードを上げて、一気に河川敷の土手を駆け上がった。
午前中の公園には、さすがに仲間たちの姿はほとんどなかった。
吾輩は公園全体を見渡す。
すると、吾輩の眼に、一匹の柴犬の姿が眼に入った。
ミッシェルだ……。
吾輩は逸(はや)る気持ちを抑えて、ゆっくりとミッシェルに近づいていった。
夢にまで見た、ことはないが、吾輩の先には姉か妹のミッシェルがいた。
激しく胸を叩く鼓動が、耳にはっきり聴こえてくる。
吾輩は喉の渇きを覚えて、なんども生唾を飲みこんだ。
吾輩が近づいていくことを、ミッシェルのほうも気づいた。
ミッシェルが吾輩を見つめる。
同じ母から産まれた三つ子の中の一匹、ミッシェル。
感動の再会である。
そばにいるご主人も吾輩に気づいて、気を遣ってかミッシェルからリードを外した。
ミッシェルも吾輩のほうへゆっくりと近づいてきた。
ミッシェル……。
「ミッシェル!」
吾輩は声を出して名を呼んだ。
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