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【第27話】
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「ソウル・メイトっていうのはね、どんなに遠く離れていても必ずめぐり逢うのよ。前世の記憶なんてないはずなのに、出逢った瞬間に感じるの、『ああ、この人だ』って。魂が共鳴するのよ。でもね、神様って意地悪だから、そんなに簡単には出逢わせてはくれない。試練を与えるのよね。魂のレベル・アップのために。だから、生まれ変わる度に出逢えるとも限らない。生まれてくる時代が違う場合もあるから。それでも、輪廻をくり返しながら必ず出逢える。そして最後には、魂がひとつになるの。そうなれば、もう二度と離れることはないわ。それって、素敵だと思わない?」
真剣な眼差しをトオルに向けて、さゆりが言った。
「うん」
トオルは深くうなずき、胸を熱くさせた。
さゆりの語ったことが真実とするなら、輪廻をくり返していく中で、また律子の魂と出逢うことができるのだ。
たとえ前世の記憶が失われたとしも、魂で共鳴し合い、そしていつの日かその魂はひとつになる。
それはなんと素晴らしいことだろう。
ふと、キッチンの朝子に眼を向ける。
(朝子ねえちゃん。いや、律子。君とまたいつか出逢えるときがくるんだね……)
トオルは歓喜した。
身体が打ち震えるのがわかる。
だが、その歓びもつかの間、自分が早とちりしていることに気づいた。
(そうだよ。律子と僕がソウル・メイトかどうかなんて、わからないじゃないか……)
とたんにトオルは落胆した。
そしてそれに追い討ちをかけるように、忘れてはならないひとつの現実が頭をもたげた。
そう、それは、地獄へ行かなければならないという現実だった。
思い出したくもなかった現実に、落胆するトオルの心は暗雲が立ちこめた。
(地獄へ堕ちたら、いったいどうなるんだろう……)
トオルは考えずにはいられなかった。
地獄へ堕ちるということは、そこからはもう出られないのではないだろうか。
もしそうだとするなら、生まれ変わることだってできないだろう。
律子と僕が、ソウル・メイトであるのかどうかを調べるすべは何もないが、生まれ変わることができれば、長い長い年月の末にその真実は明らかになることだろう。
けれど、地獄に堕ちてしまえば、もう二度と律子の魂とめぐり逢う可能性さえも奪われてしまうのだ。
トオルにとってそれは、もっとも辛い現実だ。
「だけど、もし地獄へ堕ちた場合はどうなるの? そこからは、出ることも生まれ変わることもできないんじゃないの?」
矢も盾もたまらず、トオルはそう訊いていた。
「そんなことはないわ。どんな重い罪を犯したとしても、永遠にそこから出られないなんて、神様はそれほど無慈悲じゃないわよ。『汝、罪を悔い改めれば天国の門は開かれる』って言葉があるくらいなんだから」
「ほんとにそうかな」
「そうよ。もし違うとしたら、神様に抗議してやるわ。でも、どうしてそんなこと心配するの? もしかして、なにか悪いことでもしたとか?」
「違うよ。僕は……」
答えようがなかった。真実を話すわけにはいかない。
「でも、もしなにか悪いことをしたのなら、心からちゃんと謝らなくちゃね。そうすれば神様は許してくれるわ」
謝って許してもらえることなら、苦労はしないよ。
そう思いながらも、トオルはこくりとうなずき、眠っているサラの背をなでた。
リビングのテーブルには、朝子と成実が運んできたオードブルが並んだ。
「おー、すごいな。これ、みんな朝子が作ったのか?」
早々に直人はソファへもどってきて、フライド・チキンを手に取るとかぶりついた。
「ちょっとォ。まずは乾杯をしてからでしょう」
「わかってるって」
そう言いながらも、直人はフライド・チキンを放さない。
成実がシャンパンのコルクを抜き、皆のシャンパン・グラスに注いでいく。
トオルのグラスには、朝子が子供用のシャンパンを注ぎ、それぞれがシャンパン・グラスを掲げ持って、
「メリー・クリスマス!」
朝子の声とともに重ねた。
皆、よく食べ、よく飲み、会話を弾ませた。
とりわけ直人の食欲は旺盛で、フライド・チキンの大半は彼の胃袋の中に収まった。
真剣な眼差しをトオルに向けて、さゆりが言った。
「うん」
トオルは深くうなずき、胸を熱くさせた。
さゆりの語ったことが真実とするなら、輪廻をくり返していく中で、また律子の魂と出逢うことができるのだ。
たとえ前世の記憶が失われたとしも、魂で共鳴し合い、そしていつの日かその魂はひとつになる。
それはなんと素晴らしいことだろう。
ふと、キッチンの朝子に眼を向ける。
(朝子ねえちゃん。いや、律子。君とまたいつか出逢えるときがくるんだね……)
トオルは歓喜した。
身体が打ち震えるのがわかる。
だが、その歓びもつかの間、自分が早とちりしていることに気づいた。
(そうだよ。律子と僕がソウル・メイトかどうかなんて、わからないじゃないか……)
とたんにトオルは落胆した。
そしてそれに追い討ちをかけるように、忘れてはならないひとつの現実が頭をもたげた。
そう、それは、地獄へ行かなければならないという現実だった。
思い出したくもなかった現実に、落胆するトオルの心は暗雲が立ちこめた。
(地獄へ堕ちたら、いったいどうなるんだろう……)
トオルは考えずにはいられなかった。
地獄へ堕ちるということは、そこからはもう出られないのではないだろうか。
もしそうだとするなら、生まれ変わることだってできないだろう。
律子と僕が、ソウル・メイトであるのかどうかを調べるすべは何もないが、生まれ変わることができれば、長い長い年月の末にその真実は明らかになることだろう。
けれど、地獄に堕ちてしまえば、もう二度と律子の魂とめぐり逢う可能性さえも奪われてしまうのだ。
トオルにとってそれは、もっとも辛い現実だ。
「だけど、もし地獄へ堕ちた場合はどうなるの? そこからは、出ることも生まれ変わることもできないんじゃないの?」
矢も盾もたまらず、トオルはそう訊いていた。
「そんなことはないわ。どんな重い罪を犯したとしても、永遠にそこから出られないなんて、神様はそれほど無慈悲じゃないわよ。『汝、罪を悔い改めれば天国の門は開かれる』って言葉があるくらいなんだから」
「ほんとにそうかな」
「そうよ。もし違うとしたら、神様に抗議してやるわ。でも、どうしてそんなこと心配するの? もしかして、なにか悪いことでもしたとか?」
「違うよ。僕は……」
答えようがなかった。真実を話すわけにはいかない。
「でも、もしなにか悪いことをしたのなら、心からちゃんと謝らなくちゃね。そうすれば神様は許してくれるわ」
謝って許してもらえることなら、苦労はしないよ。
そう思いながらも、トオルはこくりとうなずき、眠っているサラの背をなでた。
リビングのテーブルには、朝子と成実が運んできたオードブルが並んだ。
「おー、すごいな。これ、みんな朝子が作ったのか?」
早々に直人はソファへもどってきて、フライド・チキンを手に取るとかぶりついた。
「ちょっとォ。まずは乾杯をしてからでしょう」
「わかってるって」
そう言いながらも、直人はフライド・チキンを放さない。
成実がシャンパンのコルクを抜き、皆のシャンパン・グラスに注いでいく。
トオルのグラスには、朝子が子供用のシャンパンを注ぎ、それぞれがシャンパン・グラスを掲げ持って、
「メリー・クリスマス!」
朝子の声とともに重ねた。
皆、よく食べ、よく飲み、会話を弾ませた。
とりわけ直人の食欲は旺盛で、フライド・チキンの大半は彼の胃袋の中に収まった。
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