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チャプター【004】
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「グクク、銃のつぎが刀とはな。銃弾も通さぬこの身体に、そんななまくら刀が通用すると思っているのか」
熊男が皮肉に嗤った。
「そんなことは、やってみなけりゃわからないさ」
蝶子が地を蹴る。
熊男に向かって走った。
疾(はや)い。
一刀を熊男の頭上からふり下ろす。
その一刀を熊男は片腕で受けた。
人の腕ならば確実に両断されていただろう。
しかし、蝶子の放った一刀は、熊男の腕の剛毛さえも断つことができなかった。
なんという硬さであろうか。
毛の1本1本が硬質化しているのだろう。
ならば、と蝶子は瞬時に刀を切り替えし、熊男の人間の肉体の部分である脇腹に刀を横から一閃させた。
だが、その斬撃も熊男の腕に塞がれてしまった。
「だから言ったろうが。そんななまくら刀が、この俺に通用するわけもない」
熊男が余裕の笑みを見せる。
「フン」
蝶子は鼻で嗤うと、素早い動きで右へ左へと斬りこんでいった。
その斬撃のことごとくを、熊男は両腕で塞いでいく。
それでも、凄まじいそのスピードに圧されてか、わずかながらにじりじりと後退していた。
と、斬撃がぴたりと止まった。
熊男が蝶子の腕を摑み、その動きを止めたのだ。
「小蠅のように鬱陶しいヤツめ」
言うと蝶子を軽々と持ち上げ、散乱している中の大きなコンクリートの瓦礫へとふり投げた。
蝶子はなす術もなく、瓦礫の塊に背中から激突した。
「がはッ!」
激突の衝撃に息が詰まった。
呼吸をしなければ、そう思う間もなく、今度は首に衝撃を覚えた。そのまま身体が宙に浮いた。
熊男に首を掴まれ、身体を持ち上げられていた。
「ようやくおとなしくなったか。お遊びはこれからだ。ゆっくりと楽しもうじゃないか」
熊男が蝶子の顔を覗きこむように自らの貌を近づける。
荒い息が蝶子の顔にかかる。
腐敗臭のような息に、思わず顔を背けたくなる。
蝶子は熊男の手から何とか逃れようとあらがった。
「そうだ。もっとあらがえ。そのほうが、血が滾るというものよ」
熊男はもう片方の手を蝶子の胸元に伸ばし、ファスナーに爪をかけた。
ファスナーをゆっくりと下していく。
胸元が開いていき、乳房の谷間が覗いた。
「グフフ」
熊男の口からよだれが滴り落ちる。
「うぐ、ぐ……」
蝶子は必死にあらがう。
だが、首を絞める熊男の手の強さに、息をするのもままならず、ほとんど身動きができなかった。
ファスナーを臍の下まで引き下ろすと、熊男は蝶子の胸元を両側へと大きく開いた。
形のいい豊満な乳房があらわになった。
「おおう」
熊男が歓喜の声をあげた。
「素晴らしい。いままで喰ろうた女とは、比べものにならないほどの美しさだ」
あらわになった乳房を、熊男は鷲づかみにした。
「く――」
蝶子が身じろぐ。
「グフウ。堪らん。堪らんぞ、この白さ。このやわらかさ。喰ろうてしまうのが惜しいくらいだ」
荒い息を吐きながら、熊男は舌なめずりをした。
「――その汚い手を、放、せ……」
掠れた声で、蝶子は何とか抵抗を見せた。
「なんだ? よく聴こえなかったが、なにか言ったのか?」
熊男はにやりと嗤った。
と、とつぜん熊男の貌が苦痛にゆがんだ。
熊男の手の力が緩む。蝶子の身体が崩れ落ちる。
「キサマ……」
熊男は数歩後ずさっていた。
「まだ、太刀を……」
その脇腹には、蝶子が手にしていた刀が突き刺さっていた。ゆらりと蝶子が立ち上がる。
刀の突き刺さった熊男の脇腹に眼をやる。
脇腹には刀身の3分の1ほどが潜りこんでいた。
内臓には確実に達しているだろう。
だが、
「グクク、これほどの傷、この俺にはどうでもないことよ」
熊男は太刀の柄を掴むと何でもないことのように引き抜き、刀身に付着した血をべろりと舐めあげた。
熊男が皮肉に嗤った。
「そんなことは、やってみなけりゃわからないさ」
蝶子が地を蹴る。
熊男に向かって走った。
疾(はや)い。
一刀を熊男の頭上からふり下ろす。
その一刀を熊男は片腕で受けた。
人の腕ならば確実に両断されていただろう。
しかし、蝶子の放った一刀は、熊男の腕の剛毛さえも断つことができなかった。
なんという硬さであろうか。
毛の1本1本が硬質化しているのだろう。
ならば、と蝶子は瞬時に刀を切り替えし、熊男の人間の肉体の部分である脇腹に刀を横から一閃させた。
だが、その斬撃も熊男の腕に塞がれてしまった。
「だから言ったろうが。そんななまくら刀が、この俺に通用するわけもない」
熊男が余裕の笑みを見せる。
「フン」
蝶子は鼻で嗤うと、素早い動きで右へ左へと斬りこんでいった。
その斬撃のことごとくを、熊男は両腕で塞いでいく。
それでも、凄まじいそのスピードに圧されてか、わずかながらにじりじりと後退していた。
と、斬撃がぴたりと止まった。
熊男が蝶子の腕を摑み、その動きを止めたのだ。
「小蠅のように鬱陶しいヤツめ」
言うと蝶子を軽々と持ち上げ、散乱している中の大きなコンクリートの瓦礫へとふり投げた。
蝶子はなす術もなく、瓦礫の塊に背中から激突した。
「がはッ!」
激突の衝撃に息が詰まった。
呼吸をしなければ、そう思う間もなく、今度は首に衝撃を覚えた。そのまま身体が宙に浮いた。
熊男に首を掴まれ、身体を持ち上げられていた。
「ようやくおとなしくなったか。お遊びはこれからだ。ゆっくりと楽しもうじゃないか」
熊男が蝶子の顔を覗きこむように自らの貌を近づける。
荒い息が蝶子の顔にかかる。
腐敗臭のような息に、思わず顔を背けたくなる。
蝶子は熊男の手から何とか逃れようとあらがった。
「そうだ。もっとあらがえ。そのほうが、血が滾るというものよ」
熊男はもう片方の手を蝶子の胸元に伸ばし、ファスナーに爪をかけた。
ファスナーをゆっくりと下していく。
胸元が開いていき、乳房の谷間が覗いた。
「グフフ」
熊男の口からよだれが滴り落ちる。
「うぐ、ぐ……」
蝶子は必死にあらがう。
だが、首を絞める熊男の手の強さに、息をするのもままならず、ほとんど身動きができなかった。
ファスナーを臍の下まで引き下ろすと、熊男は蝶子の胸元を両側へと大きく開いた。
形のいい豊満な乳房があらわになった。
「おおう」
熊男が歓喜の声をあげた。
「素晴らしい。いままで喰ろうた女とは、比べものにならないほどの美しさだ」
あらわになった乳房を、熊男は鷲づかみにした。
「く――」
蝶子が身じろぐ。
「グフウ。堪らん。堪らんぞ、この白さ。このやわらかさ。喰ろうてしまうのが惜しいくらいだ」
荒い息を吐きながら、熊男は舌なめずりをした。
「――その汚い手を、放、せ……」
掠れた声で、蝶子は何とか抵抗を見せた。
「なんだ? よく聴こえなかったが、なにか言ったのか?」
熊男はにやりと嗤った。
と、とつぜん熊男の貌が苦痛にゆがんだ。
熊男の手の力が緩む。蝶子の身体が崩れ落ちる。
「キサマ……」
熊男は数歩後ずさっていた。
「まだ、太刀を……」
その脇腹には、蝶子が手にしていた刀が突き刺さっていた。ゆらりと蝶子が立ち上がる。
刀の突き刺さった熊男の脇腹に眼をやる。
脇腹には刀身の3分の1ほどが潜りこんでいた。
内臓には確実に達しているだろう。
だが、
「グクク、これほどの傷、この俺にはどうでもないことよ」
熊男は太刀の柄を掴むと何でもないことのように引き抜き、刀身に付着した血をべろりと舐めあげた。
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