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チャプター【044】
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蝶子は休むことなく上へと登っていく。
疾い。
骨が折れる、と口にしていたとは、とても思えないほどのスピードだった。
そのスピードが落ちることはない。そしてついに、400メートルもの高さを登り切り、蝶子は第1展望台の下まで 到達した。
非常用ハッチを捜し、第1展望台のデッキへと侵入した。
「!――」
室内へ入ると、とたんに噎せかえすような血臭が、鼻をついた。
「これは……」
蝶子はすぐに、その異変に気づいた。
至るところに血が飛び散っている。
床は、まさに血の海と化し、その血の中に埋もれるように、幾体もの異形人の死体が横たわっていた。
「どういうことだ」
蝶子は銃を抜き、辺りを警戒した。
血や死体を避けながら、円形になっている展望デッキのフロアを巡っていく。
物音は聴こえてこない。
前方に停止しているエスカレーターがあった。
警戒しつつ、蝶子はその第二展望台のフロアへと向かうエスカレーターを上がっていった。
血臭が、さらに濃くなっている。
そのフロアにも、階下とおなじ光景が広がっていた。
隈なくフロアを見てみれば、そこには8体の死体があった。下のフロアには6体。合わせると14体もの異形人の死体が転がっていることになる。
ここで、何が起きたというのか。
これだけの数の異形人が、ひとつの場所に集まっていたことなど前例にない。
異形人は群れを成さず、単独で行動するからだ。
他の異形人と接触があれば、会話を交わすことはあっても、その程度でしかない。
これまで、異形人を駆除してきたかぎりでは、そう思っていた。
だが、どうやら、それは違っていたようだった。
いったい、これだけの異形人をだれが斃(たお)したのか。
当然、執行人が駆除したと考えるところだが、しかし、たとえ執行人といえども、これだけの数の異形人を相手に、闘うことができるだろうか。
過去に蝶子は、3頭の先祖返りと闘ったことがある。
激闘の末、その3頭を斃しはしたが、それがもし四頭以上だったとしたら、どうなっていたかわからない。
それが、14体の、それも異形人である。
たとえ執行人に特質能力があるとはいえ、その能力を持続できるのは20分程度だ。
とても斃せる数ではない。
ならば、執行人が複数いたのか。
そう考えれば答えは出てしまうが、それは考えにくい。
なぜなら、異形人の行動パターンを熟知した上で、執行人も単独で行動しているからだ。
仮に組織が、この場所に異形人が集まっていることを突き止め、複数の執行人を向かわせとも考えられるが、やはりそれも考えにくい。
そんなことがあれば、蝶子にもその連絡が入るはずだからだ。
となれば、だれがやったか。異形人たちの同士射ち。
それがいちばん考えられることだが、果たしてどうなのか。
フロアを歩いていくと、さらにもうひとつ、上へと向かうエスカレーターがあった。
そこにも、まだ死体があるというのだろうか。
蝶子は警戒を怠らず、エスカレーターを上がった。
そのエスカレーターには、血が滴り落ちていた。
血の量が多い。
その量からすると、相当な傷を負っているだろう。
血は、下から上へとつながっている。
エスカレーターを上がり切るとスタンド・カフェがあり、それをを右に見て、床につづく血は左奥へと延びていた。
蝶子の視界の範囲では、その血以外に死体はない。
と、かすかに、声が聴こえた。
蝶子は足を止め、耳をすませた。
その声は、途切れ途切れでくぐもっているが、確かに聴こえてくる。
小さく唸るような声。
それは、傷を負った獣があげるような声だ。
「異形人か――」
蝶子は銃を正面に構え、床に滴った血をたどり、声のするほうへと歩を進めた。
疾い。
骨が折れる、と口にしていたとは、とても思えないほどのスピードだった。
そのスピードが落ちることはない。そしてついに、400メートルもの高さを登り切り、蝶子は第1展望台の下まで 到達した。
非常用ハッチを捜し、第1展望台のデッキへと侵入した。
「!――」
室内へ入ると、とたんに噎せかえすような血臭が、鼻をついた。
「これは……」
蝶子はすぐに、その異変に気づいた。
至るところに血が飛び散っている。
床は、まさに血の海と化し、その血の中に埋もれるように、幾体もの異形人の死体が横たわっていた。
「どういうことだ」
蝶子は銃を抜き、辺りを警戒した。
血や死体を避けながら、円形になっている展望デッキのフロアを巡っていく。
物音は聴こえてこない。
前方に停止しているエスカレーターがあった。
警戒しつつ、蝶子はその第二展望台のフロアへと向かうエスカレーターを上がっていった。
血臭が、さらに濃くなっている。
そのフロアにも、階下とおなじ光景が広がっていた。
隈なくフロアを見てみれば、そこには8体の死体があった。下のフロアには6体。合わせると14体もの異形人の死体が転がっていることになる。
ここで、何が起きたというのか。
これだけの数の異形人が、ひとつの場所に集まっていたことなど前例にない。
異形人は群れを成さず、単独で行動するからだ。
他の異形人と接触があれば、会話を交わすことはあっても、その程度でしかない。
これまで、異形人を駆除してきたかぎりでは、そう思っていた。
だが、どうやら、それは違っていたようだった。
いったい、これだけの異形人をだれが斃(たお)したのか。
当然、執行人が駆除したと考えるところだが、しかし、たとえ執行人といえども、これだけの数の異形人を相手に、闘うことができるだろうか。
過去に蝶子は、3頭の先祖返りと闘ったことがある。
激闘の末、その3頭を斃しはしたが、それがもし四頭以上だったとしたら、どうなっていたかわからない。
それが、14体の、それも異形人である。
たとえ執行人に特質能力があるとはいえ、その能力を持続できるのは20分程度だ。
とても斃せる数ではない。
ならば、執行人が複数いたのか。
そう考えれば答えは出てしまうが、それは考えにくい。
なぜなら、異形人の行動パターンを熟知した上で、執行人も単独で行動しているからだ。
仮に組織が、この場所に異形人が集まっていることを突き止め、複数の執行人を向かわせとも考えられるが、やはりそれも考えにくい。
そんなことがあれば、蝶子にもその連絡が入るはずだからだ。
となれば、だれがやったか。異形人たちの同士射ち。
それがいちばん考えられることだが、果たしてどうなのか。
フロアを歩いていくと、さらにもうひとつ、上へと向かうエスカレーターがあった。
そこにも、まだ死体があるというのだろうか。
蝶子は警戒を怠らず、エスカレーターを上がった。
そのエスカレーターには、血が滴り落ちていた。
血の量が多い。
その量からすると、相当な傷を負っているだろう。
血は、下から上へとつながっている。
エスカレーターを上がり切るとスタンド・カフェがあり、それをを右に見て、床につづく血は左奥へと延びていた。
蝶子の視界の範囲では、その血以外に死体はない。
と、かすかに、声が聴こえた。
蝶子は足を止め、耳をすませた。
その声は、途切れ途切れでくぐもっているが、確かに聴こえてくる。
小さく唸るような声。
それは、傷を負った獣があげるような声だ。
「異形人か――」
蝶子は銃を正面に構え、床に滴った血をたどり、声のするほうへと歩を進めた。
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