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チャプター【04】

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「ぐぬう。すばしっこいやつめ」

 粉砕した床のかけらを手のひらで粉々にすると、大猿は赤い眼を細めて女を睨んだ。

「のろまなおまえの攻撃など、眼を瞑っていても躱(かわ)せるさ」

 女は不敵な笑みを浮かべた。

「言うじゃないか。この狭い廊下で、どこまで躱しきれるか見ものだなァ」

 大猿は、またも女に突進した。
 それを見るや女は後方へと跳んで、銃のトリガーを絞った。

  ダンッ、
  ダンッ、
  ダンッ!

 3発の銃弾が大猿にヒットした。
 しかし、大猿はそれを物ともせずに向かってくる。

「チッ、急所を外したか」

 女はさらに後方へ跳ぼうとし、だが間に合わず、大猿の巨体を正面からもろに受けた。

「がはッ!」

 重い衝撃とともにあばらが軋み、女の身体は吹っ飛んでいた。
 息が詰まる。
 立ち上がることができない。

「口ほどにもない。下等な人間など、しょせんそれほどのものよ。さあて、おとなしくなったところで、ゆっくりと楽しませてもらおうか」

 口許に溢れる唾液を腕で拭い、大猿は女へと近づいていった。
 女はまだ、立ち上がれない。
 その女の身体を股の下に置く形で、大猿は仁王立ちになった。

「おれのタックルをまともに受けては、息をするもの苦しかろう」

 勝ち誇ったように女を見下ろす。
 女は、苦しげに眉間を寄せて眼を開けた。
 右手が動く。
 左手の銃は、大猿から受けたタックルの衝撃で落としてしまったが、右手の銃は何とか落とさずにすんでいた。
 その銃を大猿に向けようとした。
 だが、

「おっと、まだそんな元気があったか」

 そうはさせまいと、女の手首に大猿が膝を落とした。
 女の両腕は、大猿の膝に押し潰された。

「油断も隙もない。少し、傷めつけねばならんなァ」

 マウントの状態から、大猿は拳を女の顔にふり下ろした。
 左右の拳が、なんどとなくふり下され、そのたびに鈍い音がした。
 女はぐったりと動かない。

「ようやくおとなしくなったか。まだ、死なせはしないぞ。きさまを、たっぷりと味わうまではなァ」

 大猿は口端をつり上げ、グフ、グフと嗤(わら)った。
 それは、いやらしく下卑た声だった。
 口からは、よだれが滴り落ちる。

「まずは、きさまの身体を拝ませてもらおうか」

 開いている手の黒く長い爪の先で、女の胸元のファスナーを臍のあたりまで引き下ろすと、アーマー・スーツを左右へと乱暴に開いた。
 形のいい豊満な乳房があらわになった。
 夜間灯の下でも、その雪のような肌の白さを損なうことはなかった。

「おう!」

 大猿は思わず歓喜の声をあげた。

「素晴らしい。これほどとはなァ。こんな上玉には、いままで出会ったことがない。神がいるなら感謝しなきゃならんなァ。血肉を喰らうのが惜しいくらいだ」

 あらわになった乳房を鷲づかみにする。

「たまらん。たまらんぞ、このやわらかさ」

 獣毛に被われた手で揉みしだく。
 それでは足りずに口を近づけていく。
 よだれがピンク色の先端に垂れ落ち、筋を引いて乳房へと流れていく。
 口を尖らせ、乳首を吸おうとした。
 だが、女の腕に膝を乗せているために届かない。

「く、届かぬか。しかたない」

 と、大猿の口から、赤い舌が顔を出した。
 赤い舌が乳房の先端へと伸びていく。
 そのあいだも、唾液が舌をつたい先端に垂れ落ちる。
 ぬらりと伸びた赤い舌は、先端のそれを転がすように舐めあげた。

「どうだ、感じるか? 感じるだろう? それを証拠に、おう、立ってきたわ」

 獣臭と血と唾液の混ざった匂いが鼻をつき、女は顔を顰めた。

「…………」

 唇が動く。

「ん? いま、なにか言ったか?」

 大猿が顔を上げる。

「私から離れろ。おまえ、息が臭いんだよ……」

 閉じられていた女の瞼が、かっと見開き、金碧色の瞳が大猿を睨みつけた。

「ほう。身動きもできぬくせに、ずいぶんでかい口を叩くじゃないか」

 大猿は余裕の表情で嘲笑うように言う。
 その大猿に対し、

「それはどうかな」

 女はそう返した。
 と、

「な、なに!」

 大猿の両膝が上がりはじめた。

「おれの身体を持ち上げるだと?」

 その言葉どおり、女は、大猿の身体を持ち上げようとしていた。
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