勇者に溺れた魔王様

世夜

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人質

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なんで…なんで…なんで…!
「勇者が…人質…!?」
何千…いや、何万といるであろう人間軍の中に柱が飛び出ていて、そこには勇者が括り付けられていた…。抵抗する様子もなく、静かに…いや、ちがう。全てを諦めた目を…大切なものに裏切られた様な目をしていた。…勇者が…壊れていた…。
「……!あらららら!これはこれは魔王様じゃないですか~!人質が勇者でびっくりされましたかねぇ~…!あっ!申し遅れました!私、人間軍を統率しているディシャと申します~!」
…勇者…が…ああ…
「なぜ我らが勇者を人質としているかといいますと~…我々、1つの可能性を見つけたのですね!それは…魔王様は人間が死ぬところを見られないのではないかということ!」
ああ…ダメだ…怒っては…
「そ、こ、で!我らが勇者様には!人質に…いえ、人間の為の生贄となってもらおうと思うのです!3つ数えるので、コイツの死ぬ姿が見たくなければ、魔王様、貴方自身を差し出してくださいね~!まぁ…迷うことはないですよね…?では、いきますよ~!」
…私はもう…人間を殺したくない…でも、勇者には生きててほしい…
「さぁ~ん!」
「…!ラディ!ダメだよ!そんな事したら相手の思うツボ!ここは私の魔法で…!」
「にぃ~い!」
(勇者の代わりなんていくらでもいるんだよ…。)
周りの声は聞こえなくて、一歩、また一歩と足が勝手に動いてて、気がつくと私はがむしゃらに走っていた。振り返ると、ディシャと言う者が死んでいた。
「魔王様…なぜ、人間を庇うのですか…?」
ああ…そうか…私が殺してしまったのか…。
「…魔…王…?な…ぜ…助けた…のか…?」
なんといったものか…。
「人間ども!さっさと立ち去るがいい!ここに転がっているやつの様になりたいのか?」
………人間軍は帰ったか…。
「ゆ…勇者よ。勘違いするでないぞ。我はお前を助けてないし、お前は誰にも助けられてない。………お前は1人だ…。誰もお前を助けようとはしなかったではないか…。…お前は……何のために戦っているのだ…?」
「…魔王…お前に話す義理はない…。」
「それもそうだな。」
「…魔王…なぜ、ディシャを殺した?なぜ俺を殺さない…?回復までかけて…何を考えている…?」
「そうだな…ふむ…お前に話す義理はないな…。」
「…それもそうか…。」
「…しかし、話してはならないと約束した訳でもないからな。少し話してやろう。なに。周りを気にすることはない。我の部下が…いや、友が隊を下げている。…通信も遮断している…。聞いてくれるか?」
「…俺はしばらくここに座っている。イヤでも聴こえてくるだろうな。」
「ふふっ…そうだな…。……私は好き嫌いをする子供から成長したんだ。…昔は人間というだけで酷く嫌っていた。大嫌いだった。しかし、魔王の仕事をするうちにな…今まで知らなかった魔族の闇を知った。そして、人間にも優しい者がいると知ったのだ。…だからといって魔族を嫌いになることはない…が、しかし、人間も…少し好きになったのだ…。……そのきっかけがお前だよ…勇者…シャイン…。」
「……俺…?」
「勇者…よく聞け。言うからな!よく聞けよ!」
綺麗な青色の目を見て…いや、やっぱり見れなくて…。金髪の髪が風に溶けるようになびくから、吸い込まれてなくなりそうだった。
「私は…種族が違くても!お互い忌み嫌っていても!お前のことが…何事も一生懸命で…敵を殺さないでバレないように回復をかけて…少しの変化に気づいて自分も疲れてるはずなのに…気遣って…闘って…優しくて…辛い事を諭されないようにして…裏切られても…憎しみに呑まれない、そんな清い心が…いや、そんなところが…いや、ちがう…。お前の…全てが!好きなんだ!親しくなりたい!もう人間を殺したくない!平和な世界にしたいんだ!好きなんだ…!人間が…シャイン…お前が!」
「………何かの呪文…?詠唱してる…?」
「そんなわけあるか!コクハクだ!コクハク!」
「……くふっ…。あはは…あははは!告白?俺に?魔王が?ふふ…そうかぁ…へぇ…。」
「むうう………ふんっ!ばーかばーか!忘れろ忘れろ!」
「難しいと思うよぉ…?ふふっ…。」
「知ってるよ…そんなの…。」
「ああ…そう…。まぁ、好きにすれば?ラディ…?」
「………!今…なんて…!」
「知らん。俺もう帰るから。……そう…帰るんだ…。」
「…勇者…。……来い!手を取れ!私の城に来ればいい!」
「……はぁ?何言ってんの?死ぬよ?」
「何をいう。ということにすればいいだろう?側で監視しておくとな。」
勇者は が少し笑った気がした。
「そうか…捕まってしまったか…。最低限の暮らしはさせてくれよ?」
「当たり前だ。何かあって死にでもしたら人質にならないからな。」
こうして私は勇者と一緒に暮らすことに…いや、勇者を人質にとることになったのです。…私が死ぬまであと363日。
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