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第1章
first episode 終わって始まる物語
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重い……―――
初めは黒い水が泥のように纏わりついて全身に濡れた毛布を何枚も被せられたように重く、動きづらいことに気がついた。
見えない……―――
目を開けると何も見えない。いや、見えないのではなく辺り一面が黒いのだと間を置いて知った。闇ではなくただ純粋な黒、その黒い空間の中で爪先に当たっている僅かな感触により辛うじて自分の足が下を向いてないと知る。
そこからは水を押し退けようと両手で掻き分けてみるが指の間から漏れた水に邪魔をされて難しい。
動きづらい、と口を動かすと口内にどろりとした水が微かに侵入し咽せる。吐こうとするとまた水が入ってきて咽せるの繰り返しになる。
それでもここから出なければならないと今度は足も動かしてみる。すると沈殿した泥に足が確実についただけでなく底が波打ち際のように緩やかな斜面になっていることに気づいた。水の中特有の抵抗感を我慢して上を目指し水中を歩く。
途中、一度泥に足を取られると全身に水の重圧を感じ、歪めた口元からまたどろりとした水が大量に入り食道を通って胃に溜まる。
もう一踏ん張りして足を動かすと頭部が軽くなった。そのまま歩くと視界に黒以外の色が見え呼吸が出来るようになった。水が水面に落ちていくと視界が徐々にクリアになり黒以外の色が分かる。
白だ、
と言っても白い物でもなく人でもない、光の玉だった。球体は私が完全に水から上がると同時に豪速球でこちらへと飛び込んでくる。
「よぉす! 久しぶりだねクロぉぉぉおおおお!!!」
「五月蝿い」
「あべしっ!」
変な声を上げて光が黒い土の上に落下して跳ね返る、そしてまたバウンドしてこれまた黒い鍾乳洞のような岩で出来た天井にぶつかり私の肩へとぶつかることで落ち着いた。
「痛……くない! おいクロ感動の再会じゃないのか? お姉ちゃん寂しかったんだぞ!」
「の、割には元気そうだが? 久しぶりではあるな」
「酷い! 俺なんかあまりにも寂し過ぎて現代で彷徨ってたんだぞ」
「思いっきり人生謳歌してるじゃないか」
何が寂しいだと手で光を振り払うがただの光なので擦り抜けるだけで終わる。
先程のはただの演技だったという訳だ。
「クロ酷い。俺は蚊じゃないのに」
「同じようなものだろ」
「oh……まあ当たってるんだけどね。とりあえず気を取り直しまして、……おかえりクロノス、元気だった?」
「ああ、ただいま。元気ではないけどな」
「あははは! だよね~そんな真っ黒な血塗れの殺人鬼みたいな格好だとね~。で、話変わるけどこれからどうする?」
肩幅を測るようにぐるぐると動いていた光が顔に近づいてきた。いきなりだな。
「そうだな、まずは……」
そして全てがとある神のこの一言から始まった。
「皆に伝えることがある。落ち着いて聞いてほしい」
ざわめく神々。そして次の瞬間、その衝撃は神々の住む天界全土に響き渡った—―――――
「私は隠居することにした。あとは次世代に任せた」
「「「……はぁ???!!!」」」
この事態により神々が住む天界は一変した。
まず、なぜこうなったのか会議が開かれた。次に、その神の部下たちがどうするんだ、もしや次世代が強制的に隠居しろと言ったのではないか? という話になったり。など、
いろんな問題が発生したが当の本人である神はどこ吹く風。もういいだろうと言って説明もせずに本当に隠居してしまった。
以来、その神が表舞台に立つこともなく、のちの話でも出て来ることは無かった。しかしこの神は未来では人間にも神々も名前はしっかりと伝わっていた。
その神の名前がクロノス。そう、現代でもゲームなどに悪役の親玉としてよく登場するあのクロノスだ。
しかし、彼はあとになって気づく。自分が呑気に隠居なんて出来る筈がないということを……
初めは黒い水が泥のように纏わりついて全身に濡れた毛布を何枚も被せられたように重く、動きづらいことに気がついた。
見えない……―――
目を開けると何も見えない。いや、見えないのではなく辺り一面が黒いのだと間を置いて知った。闇ではなくただ純粋な黒、その黒い空間の中で爪先に当たっている僅かな感触により辛うじて自分の足が下を向いてないと知る。
そこからは水を押し退けようと両手で掻き分けてみるが指の間から漏れた水に邪魔をされて難しい。
動きづらい、と口を動かすと口内にどろりとした水が微かに侵入し咽せる。吐こうとするとまた水が入ってきて咽せるの繰り返しになる。
それでもここから出なければならないと今度は足も動かしてみる。すると沈殿した泥に足が確実についただけでなく底が波打ち際のように緩やかな斜面になっていることに気づいた。水の中特有の抵抗感を我慢して上を目指し水中を歩く。
途中、一度泥に足を取られると全身に水の重圧を感じ、歪めた口元からまたどろりとした水が大量に入り食道を通って胃に溜まる。
もう一踏ん張りして足を動かすと頭部が軽くなった。そのまま歩くと視界に黒以外の色が見え呼吸が出来るようになった。水が水面に落ちていくと視界が徐々にクリアになり黒以外の色が分かる。
白だ、
と言っても白い物でもなく人でもない、光の玉だった。球体は私が完全に水から上がると同時に豪速球でこちらへと飛び込んでくる。
「よぉす! 久しぶりだねクロぉぉぉおおおお!!!」
「五月蝿い」
「あべしっ!」
変な声を上げて光が黒い土の上に落下して跳ね返る、そしてまたバウンドしてこれまた黒い鍾乳洞のような岩で出来た天井にぶつかり私の肩へとぶつかることで落ち着いた。
「痛……くない! おいクロ感動の再会じゃないのか? お姉ちゃん寂しかったんだぞ!」
「の、割には元気そうだが? 久しぶりではあるな」
「酷い! 俺なんかあまりにも寂し過ぎて現代で彷徨ってたんだぞ」
「思いっきり人生謳歌してるじゃないか」
何が寂しいだと手で光を振り払うがただの光なので擦り抜けるだけで終わる。
先程のはただの演技だったという訳だ。
「クロ酷い。俺は蚊じゃないのに」
「同じようなものだろ」
「oh……まあ当たってるんだけどね。とりあえず気を取り直しまして、……おかえりクロノス、元気だった?」
「ああ、ただいま。元気ではないけどな」
「あははは! だよね~そんな真っ黒な血塗れの殺人鬼みたいな格好だとね~。で、話変わるけどこれからどうする?」
肩幅を測るようにぐるぐると動いていた光が顔に近づいてきた。いきなりだな。
「そうだな、まずは……」
そして全てがとある神のこの一言から始まった。
「皆に伝えることがある。落ち着いて聞いてほしい」
ざわめく神々。そして次の瞬間、その衝撃は神々の住む天界全土に響き渡った—―――――
「私は隠居することにした。あとは次世代に任せた」
「「「……はぁ???!!!」」」
この事態により神々が住む天界は一変した。
まず、なぜこうなったのか会議が開かれた。次に、その神の部下たちがどうするんだ、もしや次世代が強制的に隠居しろと言ったのではないか? という話になったり。など、
いろんな問題が発生したが当の本人である神はどこ吹く風。もういいだろうと言って説明もせずに本当に隠居してしまった。
以来、その神が表舞台に立つこともなく、のちの話でも出て来ることは無かった。しかしこの神は未来では人間にも神々も名前はしっかりと伝わっていた。
その神の名前がクロノス。そう、現代でもゲームなどに悪役の親玉としてよく登場するあのクロノスだ。
しかし、彼はあとになって気づく。自分が呑気に隠居なんて出来る筈がないということを……
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