遑神 ーいとまがみー

慶光院周

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第1章

融合

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 やれやれ危なかった。へパちゃんの鍛冶場から撤退して天界の端の草原まで移動してやっと落ち着く。
 ほっとして空を見上げる。……暗い。天界の端と言っても普段は風に乗って賑やかな音が聞こえるというのに今は海の底のような静寂が辺りを包んでいた。
 一瞬、驚きそうになるがゆっくりと情報を整理して数秒立って理解する。 まだ昼かと思っていたがもう真夜中になっていたらしい。

 最近はずっとへパちゃんの鍛冶場で作業を見ていたから夜になったことに気が付かなかった。それもその筈だ。ずっと籠っていたんだからな。
 さて、へパちゃんとも話たが今はもう私が住んでいたオトリュス山はもうないし、私自身もう王でもない。これからどうするかを考えなければいけない。
 とりあえず、ゆっくりと考えたいのでスタシスを置いて草むらに座ってみる。まずは衣食住、簡単な衣食住は手を振ったりでも指パッチンでもどうにかなるからホームレスではない。いっそここに屋敷一つ造るのだって一瞬で出来る。あとは……あいつを働かせることだな。

 『これからは大変だぞ~。隠居したら全部自分でやるんだからな~。
 もしもの時には手伝ってもいいけどね~。あ、すぐは無理。だって俺、形すらないもん。もし、良い物が見つかったらそれと君の力を使えば形を得ることが出来なくはないけどさ。まあ、良い物があった時には働いてあげる。』

 って言ってたしな。

 「おい、見てるなら返事しろ」
 「……なんよー、クロ」

  私のことをクロと言ったこいつは私の片割れである形なし、名無しの権兵衛だ。クロノスは双子だったけ? と思われるだろうが、面倒なので互いに片割れと呼んでいるだけなので本当に双子ではない。

 実はこいつには混沌カオスというちゃんとした名前がある。
そう、あの初めからあったものといわれる混沌カオスのことだ。(だか、威厳なんてものは持ち合わせていない)そんなこいつが私の片割れと言うのは、私がクロノスとしてガイアから産まれるよりも遥か前にこいつの一部として意識だけを持てしまったのが原因だ。(おかげで今現在でもこの関係は続いている)
 だが私がこいつの一部だとしてもこいつからしてみればほんの欠片程度ものでしかない。比率でいうと7:3。私が3だ。本当に極一部でしかない。

 なのに、こいつはというと、

 『もっとカッコいい名前がいいなー。カオスもいいけど未来では「まじカオスwwwww」ってのに使われるから嫌なんだよ。つーわけで俺の名前は保留ってことで!!』 

 と言ったがために現在は名無しの権兵衛になっている馬鹿だ。
 という経歴でこいつには名前が無ければ形もない。私には光の玉のように見えるが、他人から見れば私にへばりつく喋る空気だ。

 「おーい、クロ~? 起きてるか?」

気付くと 光が私の周りをグルグルと回って顔を覗き込んでいた。いけない、私が話しかけてそのまま無視をしていたことになってしまった。

 「ああ、すまん。少し考えに浸っていた。ほら前に言っていた宿る方法を使えば働くってやつ、あれだ今すぐ手伝え」

 本当はこいつが私一人でもどうにかなるがそうなるが、そうなるとこいつは本当に何もしない。それはずるい。
 私は頑張ったんだから、こいつも働くべきだ。働け、ニート。手伝うと言んだからちゃんと動いて貰うぞ。

 「そりゃ、言ったよ。けど今すぐ?ここには器になるような肉体もなければ宿るものもないじゃん、そこに落ちてる石にでも宿れってか?」

 光の玉が私の前に落ちている石の周りを飛ぶ。見た目は蛍が浮遊しているようで綺麗だが言葉遣いが悪い。

 「別に石でもいいがお前が宿るのはこっちだ」

 私はそばに置いたスタシスを撫でる。



 「え? それに?」
 「そうだ」
 「漫画じゃないんだからさ。もっといいのないの?宝石とか個人的にはランプがいい」
 「ジー●―にでもなるのか?あいにくだが宝石もランプもない」
 「なんで? ランプは数える程度しかなかったけど、宝石は川で石投げに使える程あったじゃん? どうして?」

 光の玉が私の顔に近づいてきた。まぶしい、見えん。

 「スタシスを返してもらうのと、変形、あとレアに支払った慰謝料に全部消えた」
 「oh……」
 「まぁ、あとで作るがな」
 「じゃあ、あとでいいじゃん!」

 光の玉が体当たりしてくるが形がないのですり抜ける。残念でした。

 「巫山戯るな、宝石やランプは嵩張るんだ。これ以上だらけさんぞババア、スタシスならお前が動くときには使えなくなるが運ぶのが大変なときには楽だし、嵩張っても必要なものだから問題ないんだよ」
 「ババアじゃないし! 産まれてすらないから赤ん坊以下だ! 君とは違うんだ!」

 突っかかるとこがそこなのかと言いたくなるが我慢しよう。言い返したらまた言ってくる。

 「私と同じなくせに赤ん坊なわけないだろうが。ババア」
 「うっせ! ジジイ!」

……こいつにだけは言われたくない。

 「問答無用。さぁ、始めるぞ」

私は両手を前に出し、力を込める。

 「ちょい待て、心の準備をぉぉぉぉぉぉ!!」

 私は力を込め言葉を口から出す。
あまり知られていないが、言葉というものは実は口から出すだけで呪文になることがある。しかし口から出すだけでなく発音、呼吸までもが関係してくるので物に神を宿らせるレベルになると人間では難しいだろう。

 「#Το όνομά μου είναι ο Κρόνος. Εκείνοι που κυβερνούν χώρου-χρόνου και του χώρου-χρόνου, η γονιμότητα. Υπαγορεύει χρησιμοποιώντας τη δύναμή μου. Με αυτό ότι δύο διαφορετικές, αν σύντηξης.__  我が名はクロノス。時空と豊穣を司るものである。我が力を用いて命ずる。この二つの異なるものよ、融合せよ__#



 フォンという音と同時に光が辺り一面に広がる。暫くして現れたのは翼を生やした布を縫っただけの簡素な白いワンピースを着た背の低い女と……

 「待てもできねーのか、このジジイ!!」

 罵倒が飛んできた。

 女は叫んだあとゆっくりと辺りを見回し自分の髪に手を当て、頭、顔、腹、足と一通り自分の体を触って確認していく。

 「どうだ? 上出来だろう?」
 「……確かに上出来だ。しかし、背が低い!! もっと伸ばせないのか?」
 「変えたいなら好きにしろ。だが、お前の基本体はこれだぞ?」
 「シーザス!!」

 おお神よって……神が言ってどうするんだ。
 しょぼーんとしたあいつは自分で鏡を作って自分の顔を観察している。形を得たことで今まで使えても何も持てなかったがために宝の持ち腐れとなっていた能力が使えるようになったらしい。おめでとう。

 そして、あいつが観察している姿だがあれは私の創作で考えたものだ。
 140cmぐらいの女で背中に木や花を編み込んだような大きな翼が一対。頭髪は白いが毛先になればなるほどポリゾン・ブルーに近い髪に少しパーマがかったショートボブ。スッと通った北欧系の顔立ち。血色の良い唇に白い肌。そして一番目を引く、ラージャ・ルビーの双眼。

 ハッキリ言ってこいつには勿体ない容姿だ。あと、翼はこの容姿を考えたときに無意識に付けてしまったらしい。こいつにはこんな綺麗な翼じゃなくて悪魔の羽とかの方が合いそうなんだけどな。

「胸はCあたりか? ギリ平均。だが成長ホルモンはどこにいった? 縦にかいなきゃ横に行くはずだろう……こんなはずがない! 出し惜しみをしているだけだ!! 唸れ!!! 我が成長ホルモンよ!!!!」

 こちらを無視してせっかく一緒に出してやったワンピースを脱ぎだしてマッスルポーズをし始めるアホが一人。
 おい、止めろ。今は誰もいないが誰かに見つかったらどうするんだ。裸の女体を見たら襲い掛かってくる男しかいないんだぞ天界は……特に私の息子とか。

 「止めろ、アホ。こんなとこでストリップショーしてどうする。誰も喜ばんぞ」
 「しねーよ、誰がこんなとこでストリップショーなんかするか。痴女じゃあるまいし」
 「なら脱ぐな。今着てるのが不満なら鏡作ったように作ってろ」

 あいつの動きが止まった。とりあえずなんか着ろ。翼はあるが全裸で考えたって寒いだけだろう。そう考えているとあいつが、いいことを思いついた。という顔をした。

 「いいのがあった! 前に未来の日本を浮遊して遊んでたときに面白い雑誌を見つけたんだった。それを元に作るから少し待って」

 そう言ってあいつから光が放たれる。全裸じゃなければいいがと思っていたら視界が一瞬白くなる。
 次の瞬間、あいつは全裸でもなく簡素なワンピースでもなくなっていた。

 ガーネットがついたエドワーディアンのように繊細な細工がされたの髪飾りと同じピアス……いや、多分ノンホールピアスだろう。こいつがピアスなんて手入れが必要なものをつけるはずがない。なぜなら、面倒くさがり屋だからだ。

 ちなみに、エドワーディアンとはヴィクトリア女王の第二子のエドワード七世の時代に生まれたもののことで、白を基調とした精密で透かしを生かした貴族的なモチーフのことだ。

 さらに服は黒いベストに膝丈より少し上のプリッツスカート、胸元と腹から下が空いてる白いロングのナポレオンコート型の膝丈のワンピースに光沢を放つ7cmはあるであろう防具付きのハイヒールに黒いパンストらしいもの。

 7cmもヒールがあるがあんまり変わらない。身長を少しでも高く見せようとしたが結果として7cmと10cmの壁は厚かったんだろう。もっと高くしたかったという思いが滲み出ている。
 でもそれは別にいい。それより何で足に防具が付いているのだろうか?特にポレイン膝当ての部分が山のように尖っていて「いかにも攻撃に使えます。」という主張が半端ない。

 「この服はなんだ? いやそれはいい。この足の防具はなんだ? ひと狩りいくのか?」
 「ん? ああ、これはなこれから行く世界の武器がどんなものかは知らないからな、非常事態なんかのときに足蹴りぐらいは出来た方がいいだろうと思ってとりあえずコレだけ付けといた。ヒールは本当は13cm欲しかったが歩けそうになかったので予定よりも低い7cmになった。悔しいです!!」

 予想通りだった。しかしちょっと待て、これから行く世界? 異世界のことか? 聞いてないし聞いている限り決定事項のように聞こえるのだか。

 「これからどこに行くっていうんだ? 異世界とかか? 聞いてないんだが」
 「うん、言ってなかったからな、前に隠居を進めただろう? しかしそうなると衣食住はどうするかとかの問題があるだろう? 当然、君なら軽く手を振るだけで全てできるだろうが」

 そう、私が隠居をしたのはこいつが昔、私が王としてレアとの間に子供が出来た時にもう子供に任せて隠居でもして楽になったらどうだ? と持ち掛けてきたからだ。

 「だかしかし!! それではつまらないとは思はないか? どうせなら自分たちで趣向を凝らして造った方がおもしろいだろ?なんせ時間はたっぷりとあるんだ、暇つぶしにはもってこいだろう。どうだ? この話乗るか?」

 アホかこいつは、時間を考えろ。そんなの決まっているだろう。
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