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第1章
初めての依頼2
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【白い悪魔】か、いやそれお前のほうが合っているんじゃないか?
「クロどうだった?! カッコよかったか?!」
「最後ので台無しだけどな……っ! 飛びつくな! 」
新月が槍を消すと褒めてと言わんがばかりに私にダイブして来た。返り血が私の服に付くからやめて欲しい。
「あのクロス様、そろそろ降ろして貰えませんか?」
声がして上を向くと木の上でハリスが手を振っていた。すまん、忘れていたわけではないぞ。
戦闘が終わったあとゴブリンからコアと右耳を取って袋に入れる。私達はナイフや袋を持っていなかったので私が出して使った。
この時に新月がゴブリンの戦闘で太ももや手に軽い怪我をしているのが分かった。服もスカートやコートが切られたり返り血で汚れている。ゴブリンが持っていた剣のせいだろう。
「男の勲章だな、……いてっ!」
「お前は女だろ。見た目は」
木の根元に丁度いい大きさの石があったのでそこに座らせて神通力で出した救急箱を使い消毒をする。
時間を確認するとまだ8:46だった。今から帰るとギルドの人間に絡まれるに違いないからもう少しここを探検してもいいだろう。
私は喉が渇いて来たからハリスに新月を任せて水を組みにでも行くか。今はどこで誰が見てるとも分からないからあまり神通力でポイポイ出すわけにもいかない。次からは水筒に何か入れてから依頼を受けるようにしよう。それに流石の新月でも怪我をしたらふらふらとはしないだろうし。
「消毒液が染みるぅー !」
「我慢だ我慢。ハリス、一旦休憩だ。こいつの様子を見ててくれ私は水を汲んでくる」
「分かりました。お気をつけて」
ゴロゴロとのたうち回る新月をハリスに任せて水の音がする右側の方へ行こうとする。その時「あ、」という声を出して新月がこちらを向いて私を引き止めた。
「ついでに美味しそうな果実が合ったら摘んできてね~」
ついでにじゃなくてそっちの方が目的だろう。
しばらく歩くと小さいが川あったので前に出した魔法瓶に入れた。さて戻るかと踵を返すとバサッという音が私が来た方から聞こえてきた。
魔獣か? だとしたら新月とハリスだけじゃ少し厳しい。何せまだ1~2回しか魔法を出せてない。
急いで来た道を戻る。元の場所の近くまで行くと新月とハリスの上空に魔獣がいた。すぐ【鑑定】を使い調べると出てきた文字に瞬きをした。
『黄金鳥 ゴルトゴー 【種族】霊鳥 【Lv】112』
なんだこの強さ。ここは低級の魔獣しか出て来ないはず……そうか魔獣達が強くなっているといっていたあれか。ドラ●エでいうなら一回ボスキャラを倒したあとに普通の道に強めのモンスターが出てくるようになるってやつ。
でも私はまだ一周どころかボスキャラの存在すら知らないんだぞ。主人公(?)置いて勝手に始まるな。
それにこのゴルトゴーという鳥のような金塊は新月とハリスを見ているが獲物を狙っている目をしているので私の【呼び声】で来たわけではないだろう。敵と見て間違い無さそうだ。
なら、また【呼び声】を使うか? 効くかどうかは分からないが。
うだうだと悩んでいるとゴルトゴー(以下、派手なので金塊)の目付きが燐のように燃えて輝いた。襲撃を始める合図だなあれ。
金塊が金切り声をあげて急降下する。ここまで来ると流石に新月もハリスも気いたが体勢が悪かった。新月がまた槍を作り出そうとしたが間に合わないだろう。
だから私が動くしかない。
神通力でアニメで見たバリアーというものを見よう見まねで二人の前に張る。
頭から突っ込んできた金塊は突然出来た壁にぶつかり一瞬動きが止まる。が、自分の動きが止められたことを瞬時に理解したのだろう。今度は鉤爪を使い攻撃を仕掛けてきた。
「G a a?! Kuiiーーー!!」
「何これバリアー?! ってことはクロ!!」
「気付くのが遅いぞ新月。お前まだやれるか?」
「ちょっとキツイかな。体力は大丈夫だけど、流石にこいつと張り合うにはまだ技術力がね……」
駆け寄って声をかけるが新月は怪我を見せながら無理、と手を振る。ゴブリンを十数体倒しただけだからまだ無理だと言いたいのだろう。
私もまだ魔法や魔術の知識はない。魔法・魔術大全もまだ読みはじめたばかりだ。帰ったら全部読んでおこう。
となると神通力ぐらいだがこれも無理か。さっきの杖やらバリアーなら目立たなかったが攻撃となると目立つ。ここはレベルが低い冒険者のためのダンジョンだ。ここにはいなくても派手な音がすると集まって来る可能性があるのだから。
一つ一つ選択肢を絞っていくと最終的にスタシスを使うという選択肢が一番マシに見えてきた。仕方ない、やるか。
私は新月に向かって手を出して言った。
「新月、スタシス」
「え、マジ? 別にいいけど」
呆けた顔で新月が聞いてくる。早くしろ。金塊がまだバリアーを引っ掻いているんだ。これを見た私も自分の顔に段々眉間に皺が寄っていくのが自分でわかる。
ただでさえこの金塊は目立つんだ。ボサッとしてると他の冒険者が来てしまう。そうなると説明が面倒になる。うん、嫌だ。
「早くしろ!」
「分かってるって!」
新月がポンッ! と煙をあげて黒いスタシスに変わった。ファンタジーか、いやこの世界そのものがファンタジーだ。
考えながらも邪魔な鎖を腕に巻き付けて構える。
「G aaaaーーー」
「五月蝿い」
「Guu?!」「ファ?! 黙らせた?!」
「ハリス、下がってろ」
「え? あ、は、はい!」
五月蝿い金塊を黙らせ、ハリスに指示を出し走っていくのを見届けてから私も動く。さて、私を目の前にしてもこの金塊は怯まないな。馬鹿なのか? それとも馬鹿で力の差もわからないのか。
では早速金塊退治を、
「ガサッ!」……しようと思った時少し離れた所から物音が聞こえた。もう集まって来たか10秒……いや3秒で終わらせてずらかろう。
『特殊スキル【時間停止】が発動されました』
声が聞こえた。澄んだ声が溶けて消えると全てのものが止まる。
生き物、風、音、雲の動きから生命の瞬きまであらゆるものが停止する。まるでテレビ映像が停止ボタンを押されたようだ。それはさっきから騒いでいた金塊も同じで、口を開いた情けない表情で固まっている。
この能力は私の使える神通力や能力の中でも強い分類に入る能力で神通力の一種ともいえる代物だ。しかし少し聞きたい。
なぜ神通力じゃなくてスキルとかの枠に入るのか? とか本当はなるべく使いたくないのになぜ今、この場で使わざるおえない状態になってるんだ? 他の冒険者が来るの早すぎるだろ。テンプレ……とかいうやつなのか? どうして私はそんな環境に置かれているんだ。
「そりゃ運命ですよ!! デステニーってね!」
何がデスティニーだと言いたいがツッコミをするのもしたくないのでこちらを先に始末することにした。無視するな~と喚いている新月の声を無視してジャンプで金塊の足を足場にし、背中に飛び移る。
背中の上に立ってみると見た目よりも大きいなこいつ。多分、60~70mぐらいはあるんじゃないか? まぁ、止まってしまえばそんなことは関係ない。今やこいつはまな板の鯉と言える。
まさか、さっきまで餌にしようとしていたやつに呆気なく首を差し出す羽目になるとは思ってもいなかっただろう、相手が悪すぎたな。
スタシスを金塊の首に当てる。さてどうやって切ってやろうか。
「まるで罪人の命を刈り取ろうとする死刑執行人みたいだなクロ。でも少し待て」
新月がスタシスを振り下ろそうとした瞬間、私の動きを新月が遮る。
「なんだ新月。お前まさか情けをかけろとでも言うのか?」
「ちゃうちゃう、どうせなら一回こいつの詳細を調べてみようよ。見た感じ金ピカでしょ? なら金になるかも!」
3秒計画を止められて少しムッとするが新月の言い分を聞く。
確かに、こいつは全身が金塊かと言いたくなるほど金ピカだ。もしかしたらレアアイテムを持ってるモンスターかもしれない。鎌を構えるのを止めて【世界の図書館】を開いてみる。
『【世界の図書館】を使います。対象:黄金鳥 ゴルトゴー
検索します。……検索が完了しました。
黄金鳥 ゴルトゴー
全身が黄金に見えるのは金に卵を接着させ金の成分を栄養にして孵化するせいで、成長しても孵化する為に使った成分は抜けることはない。
肉食で肉を持つものなら何でも食べるので一般的なゴルトゴーは50m程で強い魔獣に分類される。
備考:素材として嘴、翼、羽、尾羽、足、目、心臓が採取出来きます。
羽以外は装飾としてでは無く錬金術の材料に使われることが多い』
本当だ。以外と使える鳥だった。が、50m? こいつはそれ以上の60~70はありそうだぞ?
「な、俺が言った通りだろ? じゃ、あとは任せたぜ」
「……分かった、教えてくれてありがとう。次からはちゃんと詳細を見る」
新月が言ってくれないと木っ端微塵にするところだった。危ない。
ある程度採取出来るものを取ってから首を跳ねると金塊から降りて止めていた時間を戻す。
再生ボタンが押されたように動き出した身体はズッドンという音がして金塊が落る。首は宙を舞うが何が起こったのか分かっていない。
ごとりと地面に首が転がって来たので留めを刺してからハリスを呼ぶ。
倒れた金塊の塊(見苦しくないように綺麗な背中をこちらに向けている)を見たハリスは怯えたとした表情で固まってしまった。
「ハリス、動け。そろそろずらかるぞーー「「「魔獣か?!!!」」」……」
ガザガサという音がして目だけを音のした方へ向けると大勢の冒険者がこちらに向かって走って来ていた。
身なりからして初級の冒険者が多いな。中にはそこそこ腕が立ちそうなやつらもちらほらいるが。
走って来た冒険者は私が倒した金塊を見るとハリスのように呆けた顔をして顔を見合わせる。
私の本能が面倒な事になる気配を察知し、すぐさま退却することを提案して来たのでそれに従いスタシスを担ぐ。とてもじゃないが今この場で新月に戻って貰えるような状況じゃない。
空いている左手でハリスを抱えて歩き出そうとするといかにも新米だというような格好の冒険者が1人で声をかけてきた。
「な、なぁ、このゴルトゴーあんたが倒したのか?」
聞いてきたか。正直に言って無視したいが答えないと集まった冒険者が通してくれないだろう。面倒だ、
「……そうだが? ハリスとっとと行くぞ」
「は、はい! 」
一言だけ言ってハリスを抱え直し、早足でこの場から逃げる。
「あ! 待ってくれー!」
待たない。無視だ無視、この場合は待ったら冒険者に質問責めにされて有名になるorあとあと噂になって有名になるしかない。どちらもあまり大差がないだろうが私なら後者を選ぶ。冒険者に揉みくちゃにされるのはごめんだ。
「ヤバいことになったなクロぉ~。どうするよ、もうあとちょっとでギルドに着くぜ。今日は噂が広がる前に依頼をクリアにすればいいが明日からは……」
「分かってる。だが仕方ないだろ、人の口に戸は立てられないんだから。
……そろそろギルドが見えてくるな。袋出してておくか」
「新月さんこれは仕方がないことだったと思いますよ。クロス様がゴルトゴーを倒すのは早かったですけど逃げる時間はありませんでしたし」
「あーもういい。 分かったよ、こぼれたミルクはもう元には戻らないってやつだろ?! あーもうこの話は終わり! とっとと帰ってゆっくりしよう」
仕方がないのは新月も分かっているだろう。だがこの旅の目的は人気になることではないので問題視しているだけだ。
打ち切るように話を区切った新月、やつはそう言ってギルドの前にある依頼主のアクセサリーショップ猫の目に入ってしまった。
私とハリスはやれやれと肩を落とし続いて猫の目に入る。
「いらっしゃいませー」
扉の近くにいた店員がいち早く気づき挨拶をしてきた。
こいつにレインバードの羽を渡せばいいのか? だったら新月が適任だろうな。
「新月、これをそこにいる店員に渡してこい」
羽を渡すと新月は首を縦に振り目線をアクセサリーの方を向けてた。約束を果たせと言いたいのか。
「依頼が終わったらな」
「ほーい! すみません、依頼でレインバードの羽を取ってきたものなんですが」
「は、え?! 早かったですねぇ。レインバードの羽ですよぉ~? 普通ならもっと遅いのに~」
店員はニヤニヤとした顔で羽を隅々まで観察する。これはどう見ても疑いの目を向けられているな。そんなに時間がかかる代物だったのか。これ、尚更三分ぐらいで片付けましたとは言えない。
新月はどうやって誤魔化すんだ?
「いや~、今日は行って直ぐにレインバードの巣を見つけちゃったんですよね~。偽物だと疑うなら店長呼んでください。本物ですから、あと、偽物だって言って依頼失敗にしようものなら店が破壊されるのでそのつもりで」
特に最後の言葉に力を入れて笑う新月。だが目は笑っていないどころか瞳孔が開いていてなかなか迫力がある。
これはかなりイラついている時の顔だな。
店員は疑いの色を恐怖に変えて震え上がると「店長ー 」と叫んで奥へ引っ込んでしまった。しばらくして店長らしき人物が出てきた。
「大変申し訳御座いませんでした。そちらの羽を見せて頂いてもよろしいでしょうか」
「ほら、ちゃんと見ろよ」
「はい。……っとこれは本物のレインバードの羽ですね。うちの店員が申し訳御座いませんでした。」
店長がズボンのポケットから木で出来た猫の目と書かれた板を出した。
「こちらが今依頼完了の印です。これをギルドの方に持って行って頂ければ大丈夫です。報酬はギルドの方に支払っております。
あと、この店員はあとできつく言って起きますのでどうぞ今後とも良しなに。おい、お前も謝りなさい」
「っち、申し訳御座いませんでした。」
「ま、今回は謝ったからいいけど……次はないよ?」
「ヒッ! は、はい……」 「はい!」「ヒッ!」
新月がまた店員に向かって鋭い目で睨みを効かせると店員だけでなく店長やハリスまで怯えた子犬のように見えた。
「じゃあもうギルド行こう? クロ、ハリスくん」
「そうだな」「は、はい」
そう言うと新月は私とハリスを置いて一人で店を出て行ってしまった。
あれ、あとで買うんじゃなかったのか?
不思議に思い、首を捻りたくなったが先に行ってしまった新月を追いかけるために私とハリスも店を出た。
しばらくすると後ろで「お前のせいでさっきの客が買い物してくれなかったじゃないか!」という怒鳴り声がした。
新月が女だったからついで買いをしてくれると思っていたんだろう。もしかしたらこの依頼自体客を増やすために発行していたのではないだろうか? だとしたらあれでは確かに駄目だな。
ギルドに入ると新月が扉の横にいたが、相変わらず目付きは鋭いままだった。店員の態度が本当に気にいらなかったらしい。
「あの店員、謝ったけど舌打ちしてたからあそこもう行かない。ああいう店員は嫌いだ」
「嫌いかもしれないが我慢しろ。世の中にはいろんな人間がいるのだからああいう人間だって少なからず存在するから仕方ないことだろう。機嫌を直せ、今日は一杯付き合う」
不貞腐れたまま私の腰にしがみついてきた新月を宥める。頭を撫でてやると警戒の色が滲み出ている猫のように毛を逆立てていたのが落ち着いてきた。
「ッチ! ……オツマミよろ。あとしばらくこのままね」
仕方ないな。私の腰にしがみついたままの新月を足ごと引きずりながら袋も運んでなんとか受付まで行く。
今日はあのリボン……じゃなくて桃色のロングヘアーの受付嬢だった。
受付嬢は私の目を見ると一瞬驚いたような顔をしたが咳払いをして失礼しましたと言い、気を取り直して喋り始めた。
「禁断の書にようこそ。まずこちらにギルドカードを、ご用件は?」
「依頼三つの終了。あとこれを」
ギルドカードを受付嬢に渡したあと、依頼の物とあの金塊の羽と足以外を渡す。
羽と足は素材として新月が欲しいと帰り道で言われたため残ってない。袋を渡した途端、受付嬢の顔が驚きに変わる。
「え?! あぁ、はい! 少々お待ちください」
そう言って他の受付嬢を呼び数人体制で後ろのドアの中に運ぶとしばらく出てこなかった。
五分後、やっと出てきたと思えば受付嬢は両手で何やら大きな袋と小さな袋を抱えていた。
「お待たせ致しました。まず先にこちらが三種類の依頼の報酬です」
先に小さな方を渡される。中身を見ると銅貨が30枚と青銅で出来た硬貨が5枚入っていた。
「次にこちらがっ! っと、ゴルトゴーの嘴、翼、羽、尾羽、目、心臓、その他もろもろの代金です。全部で金貨1500となっております」
ドッシン、という音がして受付嬢はカウンターに大きな袋を乗せた。
多い、そんなにするのかあの金塊は。本当に見た目からして金に変わるやつだったんだな。
「あと、宜しけば明日の12時にこちらの受付まで起こし頂いてもよろしいでしょうか?」
受付嬢が真剣な目付きになる。あの金塊をどうやって倒したか聞きたいんだろうな。
「クロス様どうなされます?」
「これだけあれば明日は棒に振っても大丈夫だ。分かった。明日の12時だな」
「はい、明日の12時ですお待ちしております。では、次の方!」
受付嬢が安心した顔で次の人を呼んだ。
後ろが詰まっていたかと思い振り返ると長蛇の列が出来ていた。しかも全員こちらをじーっと見てる。
急いで小さい袋をハリスに持たせ大きい袋と新月を私が運んで早足でギルドを出た。
「クロどうだった?! カッコよかったか?!」
「最後ので台無しだけどな……っ! 飛びつくな! 」
新月が槍を消すと褒めてと言わんがばかりに私にダイブして来た。返り血が私の服に付くからやめて欲しい。
「あのクロス様、そろそろ降ろして貰えませんか?」
声がして上を向くと木の上でハリスが手を振っていた。すまん、忘れていたわけではないぞ。
戦闘が終わったあとゴブリンからコアと右耳を取って袋に入れる。私達はナイフや袋を持っていなかったので私が出して使った。
この時に新月がゴブリンの戦闘で太ももや手に軽い怪我をしているのが分かった。服もスカートやコートが切られたり返り血で汚れている。ゴブリンが持っていた剣のせいだろう。
「男の勲章だな、……いてっ!」
「お前は女だろ。見た目は」
木の根元に丁度いい大きさの石があったのでそこに座らせて神通力で出した救急箱を使い消毒をする。
時間を確認するとまだ8:46だった。今から帰るとギルドの人間に絡まれるに違いないからもう少しここを探検してもいいだろう。
私は喉が渇いて来たからハリスに新月を任せて水を組みにでも行くか。今はどこで誰が見てるとも分からないからあまり神通力でポイポイ出すわけにもいかない。次からは水筒に何か入れてから依頼を受けるようにしよう。それに流石の新月でも怪我をしたらふらふらとはしないだろうし。
「消毒液が染みるぅー !」
「我慢だ我慢。ハリス、一旦休憩だ。こいつの様子を見ててくれ私は水を汲んでくる」
「分かりました。お気をつけて」
ゴロゴロとのたうち回る新月をハリスに任せて水の音がする右側の方へ行こうとする。その時「あ、」という声を出して新月がこちらを向いて私を引き止めた。
「ついでに美味しそうな果実が合ったら摘んできてね~」
ついでにじゃなくてそっちの方が目的だろう。
しばらく歩くと小さいが川あったので前に出した魔法瓶に入れた。さて戻るかと踵を返すとバサッという音が私が来た方から聞こえてきた。
魔獣か? だとしたら新月とハリスだけじゃ少し厳しい。何せまだ1~2回しか魔法を出せてない。
急いで来た道を戻る。元の場所の近くまで行くと新月とハリスの上空に魔獣がいた。すぐ【鑑定】を使い調べると出てきた文字に瞬きをした。
『黄金鳥 ゴルトゴー 【種族】霊鳥 【Lv】112』
なんだこの強さ。ここは低級の魔獣しか出て来ないはず……そうか魔獣達が強くなっているといっていたあれか。ドラ●エでいうなら一回ボスキャラを倒したあとに普通の道に強めのモンスターが出てくるようになるってやつ。
でも私はまだ一周どころかボスキャラの存在すら知らないんだぞ。主人公(?)置いて勝手に始まるな。
それにこのゴルトゴーという鳥のような金塊は新月とハリスを見ているが獲物を狙っている目をしているので私の【呼び声】で来たわけではないだろう。敵と見て間違い無さそうだ。
なら、また【呼び声】を使うか? 効くかどうかは分からないが。
うだうだと悩んでいるとゴルトゴー(以下、派手なので金塊)の目付きが燐のように燃えて輝いた。襲撃を始める合図だなあれ。
金塊が金切り声をあげて急降下する。ここまで来ると流石に新月もハリスも気いたが体勢が悪かった。新月がまた槍を作り出そうとしたが間に合わないだろう。
だから私が動くしかない。
神通力でアニメで見たバリアーというものを見よう見まねで二人の前に張る。
頭から突っ込んできた金塊は突然出来た壁にぶつかり一瞬動きが止まる。が、自分の動きが止められたことを瞬時に理解したのだろう。今度は鉤爪を使い攻撃を仕掛けてきた。
「G a a?! Kuiiーーー!!」
「何これバリアー?! ってことはクロ!!」
「気付くのが遅いぞ新月。お前まだやれるか?」
「ちょっとキツイかな。体力は大丈夫だけど、流石にこいつと張り合うにはまだ技術力がね……」
駆け寄って声をかけるが新月は怪我を見せながら無理、と手を振る。ゴブリンを十数体倒しただけだからまだ無理だと言いたいのだろう。
私もまだ魔法や魔術の知識はない。魔法・魔術大全もまだ読みはじめたばかりだ。帰ったら全部読んでおこう。
となると神通力ぐらいだがこれも無理か。さっきの杖やらバリアーなら目立たなかったが攻撃となると目立つ。ここはレベルが低い冒険者のためのダンジョンだ。ここにはいなくても派手な音がすると集まって来る可能性があるのだから。
一つ一つ選択肢を絞っていくと最終的にスタシスを使うという選択肢が一番マシに見えてきた。仕方ない、やるか。
私は新月に向かって手を出して言った。
「新月、スタシス」
「え、マジ? 別にいいけど」
呆けた顔で新月が聞いてくる。早くしろ。金塊がまだバリアーを引っ掻いているんだ。これを見た私も自分の顔に段々眉間に皺が寄っていくのが自分でわかる。
ただでさえこの金塊は目立つんだ。ボサッとしてると他の冒険者が来てしまう。そうなると説明が面倒になる。うん、嫌だ。
「早くしろ!」
「分かってるって!」
新月がポンッ! と煙をあげて黒いスタシスに変わった。ファンタジーか、いやこの世界そのものがファンタジーだ。
考えながらも邪魔な鎖を腕に巻き付けて構える。
「G aaaaーーー」
「五月蝿い」
「Guu?!」「ファ?! 黙らせた?!」
「ハリス、下がってろ」
「え? あ、は、はい!」
五月蝿い金塊を黙らせ、ハリスに指示を出し走っていくのを見届けてから私も動く。さて、私を目の前にしてもこの金塊は怯まないな。馬鹿なのか? それとも馬鹿で力の差もわからないのか。
では早速金塊退治を、
「ガサッ!」……しようと思った時少し離れた所から物音が聞こえた。もう集まって来たか10秒……いや3秒で終わらせてずらかろう。
『特殊スキル【時間停止】が発動されました』
声が聞こえた。澄んだ声が溶けて消えると全てのものが止まる。
生き物、風、音、雲の動きから生命の瞬きまであらゆるものが停止する。まるでテレビ映像が停止ボタンを押されたようだ。それはさっきから騒いでいた金塊も同じで、口を開いた情けない表情で固まっている。
この能力は私の使える神通力や能力の中でも強い分類に入る能力で神通力の一種ともいえる代物だ。しかし少し聞きたい。
なぜ神通力じゃなくてスキルとかの枠に入るのか? とか本当はなるべく使いたくないのになぜ今、この場で使わざるおえない状態になってるんだ? 他の冒険者が来るの早すぎるだろ。テンプレ……とかいうやつなのか? どうして私はそんな環境に置かれているんだ。
「そりゃ運命ですよ!! デステニーってね!」
何がデスティニーだと言いたいがツッコミをするのもしたくないのでこちらを先に始末することにした。無視するな~と喚いている新月の声を無視してジャンプで金塊の足を足場にし、背中に飛び移る。
背中の上に立ってみると見た目よりも大きいなこいつ。多分、60~70mぐらいはあるんじゃないか? まぁ、止まってしまえばそんなことは関係ない。今やこいつはまな板の鯉と言える。
まさか、さっきまで餌にしようとしていたやつに呆気なく首を差し出す羽目になるとは思ってもいなかっただろう、相手が悪すぎたな。
スタシスを金塊の首に当てる。さてどうやって切ってやろうか。
「まるで罪人の命を刈り取ろうとする死刑執行人みたいだなクロ。でも少し待て」
新月がスタシスを振り下ろそうとした瞬間、私の動きを新月が遮る。
「なんだ新月。お前まさか情けをかけろとでも言うのか?」
「ちゃうちゃう、どうせなら一回こいつの詳細を調べてみようよ。見た感じ金ピカでしょ? なら金になるかも!」
3秒計画を止められて少しムッとするが新月の言い分を聞く。
確かに、こいつは全身が金塊かと言いたくなるほど金ピカだ。もしかしたらレアアイテムを持ってるモンスターかもしれない。鎌を構えるのを止めて【世界の図書館】を開いてみる。
『【世界の図書館】を使います。対象:黄金鳥 ゴルトゴー
検索します。……検索が完了しました。
黄金鳥 ゴルトゴー
全身が黄金に見えるのは金に卵を接着させ金の成分を栄養にして孵化するせいで、成長しても孵化する為に使った成分は抜けることはない。
肉食で肉を持つものなら何でも食べるので一般的なゴルトゴーは50m程で強い魔獣に分類される。
備考:素材として嘴、翼、羽、尾羽、足、目、心臓が採取出来きます。
羽以外は装飾としてでは無く錬金術の材料に使われることが多い』
本当だ。以外と使える鳥だった。が、50m? こいつはそれ以上の60~70はありそうだぞ?
「な、俺が言った通りだろ? じゃ、あとは任せたぜ」
「……分かった、教えてくれてありがとう。次からはちゃんと詳細を見る」
新月が言ってくれないと木っ端微塵にするところだった。危ない。
ある程度採取出来るものを取ってから首を跳ねると金塊から降りて止めていた時間を戻す。
再生ボタンが押されたように動き出した身体はズッドンという音がして金塊が落る。首は宙を舞うが何が起こったのか分かっていない。
ごとりと地面に首が転がって来たので留めを刺してからハリスを呼ぶ。
倒れた金塊の塊(見苦しくないように綺麗な背中をこちらに向けている)を見たハリスは怯えたとした表情で固まってしまった。
「ハリス、動け。そろそろずらかるぞーー「「「魔獣か?!!!」」」……」
ガザガサという音がして目だけを音のした方へ向けると大勢の冒険者がこちらに向かって走って来ていた。
身なりからして初級の冒険者が多いな。中にはそこそこ腕が立ちそうなやつらもちらほらいるが。
走って来た冒険者は私が倒した金塊を見るとハリスのように呆けた顔をして顔を見合わせる。
私の本能が面倒な事になる気配を察知し、すぐさま退却することを提案して来たのでそれに従いスタシスを担ぐ。とてもじゃないが今この場で新月に戻って貰えるような状況じゃない。
空いている左手でハリスを抱えて歩き出そうとするといかにも新米だというような格好の冒険者が1人で声をかけてきた。
「な、なぁ、このゴルトゴーあんたが倒したのか?」
聞いてきたか。正直に言って無視したいが答えないと集まった冒険者が通してくれないだろう。面倒だ、
「……そうだが? ハリスとっとと行くぞ」
「は、はい! 」
一言だけ言ってハリスを抱え直し、早足でこの場から逃げる。
「あ! 待ってくれー!」
待たない。無視だ無視、この場合は待ったら冒険者に質問責めにされて有名になるorあとあと噂になって有名になるしかない。どちらもあまり大差がないだろうが私なら後者を選ぶ。冒険者に揉みくちゃにされるのはごめんだ。
「ヤバいことになったなクロぉ~。どうするよ、もうあとちょっとでギルドに着くぜ。今日は噂が広がる前に依頼をクリアにすればいいが明日からは……」
「分かってる。だが仕方ないだろ、人の口に戸は立てられないんだから。
……そろそろギルドが見えてくるな。袋出してておくか」
「新月さんこれは仕方がないことだったと思いますよ。クロス様がゴルトゴーを倒すのは早かったですけど逃げる時間はありませんでしたし」
「あーもういい。 分かったよ、こぼれたミルクはもう元には戻らないってやつだろ?! あーもうこの話は終わり! とっとと帰ってゆっくりしよう」
仕方がないのは新月も分かっているだろう。だがこの旅の目的は人気になることではないので問題視しているだけだ。
打ち切るように話を区切った新月、やつはそう言ってギルドの前にある依頼主のアクセサリーショップ猫の目に入ってしまった。
私とハリスはやれやれと肩を落とし続いて猫の目に入る。
「いらっしゃいませー」
扉の近くにいた店員がいち早く気づき挨拶をしてきた。
こいつにレインバードの羽を渡せばいいのか? だったら新月が適任だろうな。
「新月、これをそこにいる店員に渡してこい」
羽を渡すと新月は首を縦に振り目線をアクセサリーの方を向けてた。約束を果たせと言いたいのか。
「依頼が終わったらな」
「ほーい! すみません、依頼でレインバードの羽を取ってきたものなんですが」
「は、え?! 早かったですねぇ。レインバードの羽ですよぉ~? 普通ならもっと遅いのに~」
店員はニヤニヤとした顔で羽を隅々まで観察する。これはどう見ても疑いの目を向けられているな。そんなに時間がかかる代物だったのか。これ、尚更三分ぐらいで片付けましたとは言えない。
新月はどうやって誤魔化すんだ?
「いや~、今日は行って直ぐにレインバードの巣を見つけちゃったんですよね~。偽物だと疑うなら店長呼んでください。本物ですから、あと、偽物だって言って依頼失敗にしようものなら店が破壊されるのでそのつもりで」
特に最後の言葉に力を入れて笑う新月。だが目は笑っていないどころか瞳孔が開いていてなかなか迫力がある。
これはかなりイラついている時の顔だな。
店員は疑いの色を恐怖に変えて震え上がると「店長ー 」と叫んで奥へ引っ込んでしまった。しばらくして店長らしき人物が出てきた。
「大変申し訳御座いませんでした。そちらの羽を見せて頂いてもよろしいでしょうか」
「ほら、ちゃんと見ろよ」
「はい。……っとこれは本物のレインバードの羽ですね。うちの店員が申し訳御座いませんでした。」
店長がズボンのポケットから木で出来た猫の目と書かれた板を出した。
「こちらが今依頼完了の印です。これをギルドの方に持って行って頂ければ大丈夫です。報酬はギルドの方に支払っております。
あと、この店員はあとできつく言って起きますのでどうぞ今後とも良しなに。おい、お前も謝りなさい」
「っち、申し訳御座いませんでした。」
「ま、今回は謝ったからいいけど……次はないよ?」
「ヒッ! は、はい……」 「はい!」「ヒッ!」
新月がまた店員に向かって鋭い目で睨みを効かせると店員だけでなく店長やハリスまで怯えた子犬のように見えた。
「じゃあもうギルド行こう? クロ、ハリスくん」
「そうだな」「は、はい」
そう言うと新月は私とハリスを置いて一人で店を出て行ってしまった。
あれ、あとで買うんじゃなかったのか?
不思議に思い、首を捻りたくなったが先に行ってしまった新月を追いかけるために私とハリスも店を出た。
しばらくすると後ろで「お前のせいでさっきの客が買い物してくれなかったじゃないか!」という怒鳴り声がした。
新月が女だったからついで買いをしてくれると思っていたんだろう。もしかしたらこの依頼自体客を増やすために発行していたのではないだろうか? だとしたらあれでは確かに駄目だな。
ギルドに入ると新月が扉の横にいたが、相変わらず目付きは鋭いままだった。店員の態度が本当に気にいらなかったらしい。
「あの店員、謝ったけど舌打ちしてたからあそこもう行かない。ああいう店員は嫌いだ」
「嫌いかもしれないが我慢しろ。世の中にはいろんな人間がいるのだからああいう人間だって少なからず存在するから仕方ないことだろう。機嫌を直せ、今日は一杯付き合う」
不貞腐れたまま私の腰にしがみついてきた新月を宥める。頭を撫でてやると警戒の色が滲み出ている猫のように毛を逆立てていたのが落ち着いてきた。
「ッチ! ……オツマミよろ。あとしばらくこのままね」
仕方ないな。私の腰にしがみついたままの新月を足ごと引きずりながら袋も運んでなんとか受付まで行く。
今日はあのリボン……じゃなくて桃色のロングヘアーの受付嬢だった。
受付嬢は私の目を見ると一瞬驚いたような顔をしたが咳払いをして失礼しましたと言い、気を取り直して喋り始めた。
「禁断の書にようこそ。まずこちらにギルドカードを、ご用件は?」
「依頼三つの終了。あとこれを」
ギルドカードを受付嬢に渡したあと、依頼の物とあの金塊の羽と足以外を渡す。
羽と足は素材として新月が欲しいと帰り道で言われたため残ってない。袋を渡した途端、受付嬢の顔が驚きに変わる。
「え?! あぁ、はい! 少々お待ちください」
そう言って他の受付嬢を呼び数人体制で後ろのドアの中に運ぶとしばらく出てこなかった。
五分後、やっと出てきたと思えば受付嬢は両手で何やら大きな袋と小さな袋を抱えていた。
「お待たせ致しました。まず先にこちらが三種類の依頼の報酬です」
先に小さな方を渡される。中身を見ると銅貨が30枚と青銅で出来た硬貨が5枚入っていた。
「次にこちらがっ! っと、ゴルトゴーの嘴、翼、羽、尾羽、目、心臓、その他もろもろの代金です。全部で金貨1500となっております」
ドッシン、という音がして受付嬢はカウンターに大きな袋を乗せた。
多い、そんなにするのかあの金塊は。本当に見た目からして金に変わるやつだったんだな。
「あと、宜しけば明日の12時にこちらの受付まで起こし頂いてもよろしいでしょうか?」
受付嬢が真剣な目付きになる。あの金塊をどうやって倒したか聞きたいんだろうな。
「クロス様どうなされます?」
「これだけあれば明日は棒に振っても大丈夫だ。分かった。明日の12時だな」
「はい、明日の12時ですお待ちしております。では、次の方!」
受付嬢が安心した顔で次の人を呼んだ。
後ろが詰まっていたかと思い振り返ると長蛇の列が出来ていた。しかも全員こちらをじーっと見てる。
急いで小さい袋をハリスに持たせ大きい袋と新月を私が運んで早足でギルドを出た。
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