遑神 ーいとまがみー

慶光院周

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第1章

超魔法?

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 「疲れた~。昼飯! 飲み物!」

 王都を出てゲルを建てた瞬間新月がリビングに置いてある私が出した大型クッションにダイブした。

 「飯! 飲み物! デザート! クロなんか作って! 俺はダラける! 」

 そのあと、次々に注文が飛び交い、床からズブッ、グサッっという消して小さくはない音がする。
 なんだこの音。

 「新月あんよ上げろ」
 「む~。はい」

 うつ伏せのまま海老反りをする新月の足を横にどかす。

 ……床に微かなへこみがあった。


 神通力を使って直し新月の足につけてる防具兼武器を外す。お嬢様の靴を脱がず執事じゃないが私が注意しても今の新月は自分でやるとは思えないので仕方がない。

 「せめてこれは脱げ。床に穴が空くだろうが」
 「分かりましたって、それより飯!」

 全部脱がし終わってから新月に軽く注意するが、怒鳴り声の命令で返される。
 はいはい、作ればいいんだろ。我儘で傍若無人なお嬢様がこれ以上不機嫌になる前に昼食作りに取り掛かるとしよう。


 キッチンに行き【無限の胃袋】からバタールを取り出して半分に切る。バタールとはフランスパンの一種でバゲットよりも小さめのパンのことだ。その内側にバターを塗って馴染ませるために少し置いておく。

 「クロス様このパンはこの前に行った異世界で買った物ですか?」

 パンの形を不思議に思ったのかハリスが聞いてきた。

 「あぁ、ハリスついでに手伝ってくれ。そこの棚にある皿とコップだ。そう、それ。出して置いてくれ」
 「はい」

 食器の準備をハリスに任せて今度は具材を作る。
 生ハムとモッツァレラチーズ、バジルの葉、赤玉ねぎとレタスを出す。
 まずは赤玉ねぎからか。皮をむいて軽く水で洗い、半分にしてから薄くスライスする。
 モッツァレラチーズは一回包丁を水洗いしてからゆっくりとスライスする。前に普通に切ろうとしたら潰してしまったことがあるのでここは力を入れないようにする。
 パンがバターと馴染んで来たのでレタスとバジルの葉を適当にちぎって乗せて、赤玉ねぎとモッツァレラチーズ、生ハムを順に乗せ、もう片方のパンで挟む。
 最後に上から岩塩と粗挽きのコショウ、少量のオリーブオイルを軽くかけて味を整える。適当に作ったがこれでいいだろう。あとはオレンジをくし切りにして皿に乗せたものと紅茶を用意をする。
 

   テーブルを見ると食器を出し終わって手持ち無沙汰で座っているハリスの隣に紅茶の匂いに誘われたのかクッションを持ったままの新月がいつの間にか椅子に座っていた。
  視線に気づいたのだろう。新月がこちらに首を傾ける。

 「出来た?」
 「あぁ、とっとと食え」

 出来たばかりのサンドイッチを皿に載せてテーブルに置くとでは遠慮なく、といって新月がサンドイッチを齧る。
 むすっとしていた顔が少し和らぐ。もう一口食べたあと皿の上を視線が泳ぎ、シュンっとなる。なにが気に入らなかったのだろうか?
 
 「そこそこうまい。けど一種類だけ?」
 「私に料理を求めるな。ハリス食うぞ、いただきます」
 「イタダキマス……」

 一種だけって、そんな短時間で何種類も作れるだけの技量は私にはない。
 ちなみに、ハリスのいただきますががカタゴトなのは私達の真似をしているせいだ。こちらでは一応お祈りをしてから食べるらしいから慣れないのは仕方ない。
 私もハリスに続いてサンドイッチに齧り付つく。まあまあだな、



 一通り食べたので一旦、休憩をしてるとハリスが私の顔色を伺いながらのぞき込んできた。

 「あの、クロス様このあと何もすることが無かったら魔法の練習をして貰ってもよろしいですか?」
 「魔法?」
 「あ、俺は服作るからパス」

 魔法と聞いた途端新月がパスした。おい、逃げるな。逃げるんだったら私も連れていけ。

 「なぜだ。お前も練習は必要だろ」
 「服がボロくなってるんだよ。直すついでに洗わないと、クロとハリスの服も作るから免除してって」

 私とハリスの服か。そこを言われると許せざるおえないな。
 服は、新月>私>ハリスの順で汚れていた。確かに服は必要か。これからも必要なものだし、私が出すのなら新月のアイデアが必要になってくる。ならついでに何着か作って置いて貰うとしよう。

 「分かった、じゃあ必要な素材を私が出すから着替えなんかを何着か作れ。それが条件だ」

 条件を出して新月に提案すると、そんなのお安い御用だという顔をして新月がオッケーサインをした。本当にちゃんとやるのか少し心配だ。

 「オッケー! じゃあ、リネンとチュールとビロードと綿に絹、あとレースと刺繍道具に金糸銀糸にリボンにエナメ……「待て待て、流石に多すぎる。もう少し減らせ」」

 服の素材の名前が飛び交う。
 多い、いきなりそんなに用意しろと言われても無理だ。布の素材なんて私は絹とリネンぐらいしか実際のものは知らない。他のものは知識としてしか知らないこの二つでもいいじゃないか。
 新月の口を手で押さえてこれ以上の注文が増えないように止める。がすぐに手を跳ね除けられた。

 「無理、あとパールやボタンにファーに金具も欲しいからよ・ろ・し・く」

 語尾にハートを付けるようにいって手を前に出される。しばらくそのまま出された手を見ていると早くといって「ん!」と唸る。

 今すぐに全て出せと申しますか……


 「じゃ、頑張ってね~」
 「しっかり作っておけよ」
 「頑張ってきます」

 新月に見送られて私とハリスは外に出た。勿論、出る前にご所望品は全部出させられた。
 おかげでもう神通力が0だ。もう今日は使えない。
 予定では今から本の知識を私に取り込むのに使う予定だった。計画は新月の手で破壊された。



 「ーーーでは、今から新月が作る間私達は魔法の練習をする。その前に本を全部読むから待っててくれるか?」
 「はい、いいですげどそれを全部読むんですか?」

 近くにあった石に腰掛けると魔法・魔術大全の分厚い背表紙を捲る。とハリスが魔法・魔術大全を覗きながら聞いてきた。
 どれだけ時間がかかるんだろうと言いたいのだろう。

 「いや読むというより捲るだけといった方が正解だな。それだけで覚えるだろう普通」
 「はぁ……いや普通じゃねえ」

 気の抜けた返事の後は間紙を捲る音だけが周りに響く。やがて参考資料のページになったので本を閉じるとボンッ という音がした。


 この本の中に書かれていた魔法や魔術は全て頭の中に記録した。同時に魔法の使い方を全て覚えたぞ。
 本の内容をざっくりまとめると簡単な魔法は呪文無しで出来るが高度なものになると必要になる。
 そして魔法を使う時のコツだが……これは少し驚いた、魔法の操り方というのは案外私が使う神通力とやり方が似たものだったのだ。これなら私が教えても大丈夫だろう。全部出来る確信があった。

 「待たせたなハリス。始めよう」
 「やっとですか~。結構待ったので今日はやらないのかと思いましたよ」

 あらかさまにほっとした顔でハリスが答える。そんなにも時間が経っていたのかと思い時間を調べる。
 あれから30分程経っていた。さっさと始めようと思っていたがここまでかかっていたのか、詫びに何かしてやろう。

 「ではハリス、まず詫びに私から何かやろう。どんなものが見たい?」
 「どんなですか? えっと……」

 突然どんなものが見たいかと聞かれてハリスが固まった。少しの間うーん、と唸っていると。あっ、と言ってこちらを向いた。

 「じ、じゃあ、俺は火属性のものが出来たのでそれから見せて下さい。呪文が要らなくてなるべく凄いので」

 注文が決まった。火属性で呪文無しのなるべく見栄えがいいのか。ならこれか、

 「どんな魔法なのかな……もしかして空まで届くような炎とか?!」

 手を前に出すとまるで子供が遊園地に行くような顔でハリスが私の手元を凝視してくる。……ちゃんと出来てくれ、ここでシーンとかだと私の面目まるつぶれだ。

 「では見てろ『メテオライトファール』」

 神通力を使う時と同じように意識を集中させ力を練るようにして考える。
 この魔法は空から隕石を落下させて爆発させるというものだったが今は練習なのであまり派手なものじゃなくていい。そう念じて魔法を発動する。
 ……だがしっかり唱えたはずなのに辺りはシーンとしている。




 あれ? 何も起こ

ーーーゴゴゴォォォ!!!! 

……たな。

 上を見ると白く輝きながら何かが煙を上げて落下してくる。いや何かじゃなくっても絶対に隕石だなこれ。
 隕石は一瞬赤く光るとまた白くなり今度は辺り一面が光り何も見えなくなる。

 不味い、これは結構大きいかもしれない。素早くさっき読んだ本に載っていた魔法で『アイアンガーディアン』とやらを発動させて王都周辺を囲む。
 次の瞬間、ボッガガガァァァンンンーーーという音と一緒に地面が揺れて爆風が広がり身動きが取れなくなる。
 煙が薄れてくると私達の目の前には直径15m程の決して小さいとはいえないようなクレーターがあった。




 確かこういう時新月ならこう言うな。

 「めんご」
 「殺す気か!!!!」
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