遑神 ーいとまがみー

慶光院周

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第2章

うん、色々と間違ってる

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  さて、どうしてこうなったのでございましょうか。

  「なんでこんなに探してるのにいねーんだよ!   依頼主は良く街道付近できのこ食ってるか、腹出した間抜け面三つ揃えて昼寝してるっていってたのに。
  おーい、キマイラ出ておいで!  でてこないと新技でぶっ殺すぞ!!」

 
 皆様ご存知まっくろ●ろすけの歌が物騒な歌として改良されたものを歌いながら朝比奈さんが木に八つ当たりをした。餌食となった木はミシッ 、  という嫌な音を立て目に見えて曲がっている。(※自然は大切にしましょう)
 それでも朝比奈さんの進行は止まらない。つーか祟り神みたいに歩けば歩く程黒いオーラが増してるんだけど怖くね?

 「あ゛ぁ゛? なんか言ったかクソガキ」
 「イエナニモ」

 うわ、こっち向いた怖!!! この人初めて会った時はまだキチンとしていたけど今は染めた緑色の髪にジャラジャラピアス、ド派手なメイクだから余計に怖ぇ!!  本当は山姥じゃないのかと聞きたい。

 「朝比奈さんもそうイライラしないでく、
 「もう丸二日も探してんだけど?」    
 わ、悪い」

 慌てて伸さんが宥めようとすると矛先が伸さんへと変わりなぜが伸さんが謝る羽目になった。
 うわー、俺より後ろにいた伸さんに顔を向けたのに背中から溢れ出すこの黒いオーラ!  まるでこちらを般若が向いているような雰囲気だ。前は山姥、後ろは般若か、おそロシア。

 「っていうかいつまで探せばいい「ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
……の? 叫び声? まさかキマイラだったりして……ふふふ、みぃーつけたぁぁ!!」
 「うわ怖え!!!   山姥が走っとる!」

 朝比奈さんがイライラを伸さんにぶつけようとしたその時、突然子供の悲鳴が全ての音を掻っ攫った。
 しかしこれを聞いた山姥は全力で走って行ったため思わず俺も本音が出てしまい「稔~ぅ、あとで覚えてろよぉ~……」という有難くない寧ろこっちが逃げたい言葉を頂戴してしまった。こうなったら、

 「よし、逃げるか!!」
 「俺達も向かうぞ!!!」
 「マジで?!」

 例え地の果てまで走ることになっても逃げたい。そう思った俺は山姥とはUターンして逆方向行こうとする体を伸さんに掴まれて山姥が在わす方向へと走り出された。嫌だ!!! 俺まだ死にたくないぃぃいい!!!

 「いや、自分から死亡ブラグを目指す奴なんていないでしょ?! 後生だ、伸さん離してくれ!  俺は死ぬなら美女に銃で撃たれて死にたい!!」
 「あとで謝ればいいだけの話だろ!  それより誰かが襲われているんだ。争っている時間は無いぞ!!」
 「しょんなぁぁ!!」

 全体重で地面を踏みしめてみるが所詮モヤシの体力、
 地面から突き出た根っこにあっさりと足をとられた、その隙に襟を掴まれて引きずりながら運ばれる。
 クソぅ! 母なる大地ですら俺の味方では無いのか?! こうなったらもうなんの神様でもいいから惨たらしく命乞いをしてやる!  

 「多分どこかに在わす神様、仏様よ、俺はまだ死にたくありません。どうかお助けをぉぉぉ!!!」

 何とも無様な俺の神頼みがさらさらと音を立てて森を通り過ぎる風と共に空へと運ばれた瞬間だった。


****

 以降ショタがお送りします

 「Guaaaaーー!!!」
 「やっぱり効果無いじゃん!!!  『ファイヤボール』!!!!」

 ダメ元で『ファイヤボール』をぶつけて相手が怯んだ隙に踵を返し、全力疾走で逃げる。だがあいつもそれで見逃す訳もなくその巨大な身体で木々を薙ぎ倒し、破壊音と共にこちらに突進してくる。
 E,●なんて成功しませんでしたよ新月!  
 心の中で悪態をつきながら地面に突き出る木の根を踏み越えて離れた所にいたツァスタバさんの手を掴んで走る。
 後ろから追いかけてくる存在にツァスタバさんはすぐに勘付いたらしく自分を引っ張っていた俺の手を掴み逆にツァスタバさんに俺が引っ張られる形にシフトチェンジしてしまった。
   
   早っ!  なんであんなブーツ履いてるのにこんなに早く走れるんだこの人?! ってそうじゃない!!

 「ツァスタバさん!  あの未確認生命体はなんですか?!」
 「未確認生命体ではなくキマイラですね、頭はライオン、胴は山羊、尾は毒ヘビという生き物です。こんな所にいるとは思いませんでしたが」
 「同じ山羊仲間でどうにかなりませんか?!」
 「確かに私も元は山羊から出来てはいます。が、無理です」
 「そんなぁ!」

 説得して貰おうとすると無理ですと切られた。もう打つ手立てが無い
 終わりか、そう思った時先を走っていたツァスタバさんは足を止めて走ってくるキマイラと向き合った。

 「どうして止まるんですか!!」

 腕を引っ張って走ろうとするもツァスタバさんは動かず、キマイラを見上げる。確実に何かする気だ、そう思った。俺と同じことを考える知能はあったらしいキマイラも足を止め立ち止まり俺達を見下す。
 風が葉を撫でる音だけがこの場に響く唯一の音楽になるとやっとツァスタバさんは動いてくれた。

 やった、これで逃げられると思ったらツァスタバさんは足ーーーだけじゃなくって手を上げてゆっくりと何かの構えをした。
 もしかしてこいつと闘おうとか思ってないよな?!

 「も、もしかしてこいつ倒そうとか考えてないですよね?!」

 否定して欲しくて思わず聞いてしまった。やばい、嫌な予感しかしない。

 「倒す、とは違いますね。前に船の料理長と話をした時に教えて貰ったのですが魔獣は適切な処理をすればとても美味しい肉として食べれるそうなんです。
今の私達は肉を探している。そんなところに現れたのがこれですよ? 
ーーーこれは絶対にマスターとお嬢へと捧げる食材にせよという天からの思し召しでしょう!!!」

 マジですかーーーー??!!!! ていうかこの人魔獣を調理する気で満々じゃないか!!!

 「マジですか?!」
 「マジです!!  さぁ、大人しく我が主人の糧となりなさーーー「捕まえつぁぁああああ!!!!」……い?」

 瞳孔を細めて山羊モード全開になったツァスタバさんが手を動かそうとした瞬間、風の音色をぶった切るような怒声と複数回連なった金属音がさらさらとした音を全てかき消した。




 うわ、顔怖!!!

 何事かと声が聞こえた上の方に顔を上げると巨大な刃で首を切り落とされてなお、何度も刃の餌食にされるキマイラの上に人……山姥がいた。
 革製+胸元全開のロング巻きスカートに緑髪、ジャラジャラピアスにド派手な化粧、背中に邪悪なオーラを背負った女性、あれはまさしく山姥だ、間違いない。

 「フッハハハ!!  思い知ったかこのヘボ野郎、てめーのために作ってやった新技『 繰り返される処刑 リピートエクセキューションのお味はどうだ?
 勿論まだ足りないよな? 制限時間まで存分に味あわせてやるよ!!」

 そう山姥が叫ぶと振りおろされる刃は加速した。もう既に半分はミンチ状態なのにまだ止めないだと?! グロい、グロ過ぎる……

 「あぁ、なんということでしょう……これではマスターやお嬢様に食べて頂こうかと考えていたメニューが台無しになってしまします!  
 そこの貴女!  そのキマイラは我が主人の夕食となる食材です!  ミンチはやめなさい。その状態のままもっと切り刻んてしまったらブラットソーセージぐらいしか作れなくなってしまうではないですか!!!」
 「ツッコミ入れるのそこですか?!」

 思わず吐きそうになるのを手で押さえて我慢するとツァスタバさんの空気を読まなさ過ぎ発言に貴女どれだけクロス様と新月さんが好きなんだ、と嘆きたくなった。



 俺が悲観しているとキマイラとご対面した緑のカーテンが掻き分けられて山姥vs女執事の言い争いの場と化したこの場に誰かが飛び込んできた。クロス様かと思ったけど違った。

 なんでもこの国の私立ギルドのパーティでキマイラの討伐依頼を受けた人達らしい。
 一人はもう片方を引きずっている顔以外をプレートアーマーで武装し、背中に大剣を背負ったクロス様程では無いが背が高くて体格ががっしりとした男。
 もう一人の引きずられているのは灰色のマントを被り弓を装備した男。体格はこの前新月さんが調理していたモヤシという野菜に似ている。心なしか顔も白いし、あ、首が絞まっているから白いのか。
 
 二人は俺達に気付くとまずツァスタバさんに謝罪し、それから山姥に声をかけた。


 「恐ろしいな、瞬殺じゃないか。しかもミンチ……」
 「ふん、あいつが油断してたからだ。ざまぁ無いさ」
 「マジか!!  流石ですね朝比奈様!  よっ!  チート!  日本一!!  だから殺さないで下さい俺まだ死にたくないです!  っていうか伸さんも話してくれないと俺マジであの世あっち行きそうなんだけど?!  次は絶対片道切符しか無いし死にだくないでずぅぅ!!」
 「おぉ!  すまん」
 「うはっ!  稔顔が真っ青通り越して白くなってる!  これじゃぁ完璧にモヤシじゃねwww髪の毛黄色に染めてみる?」
 「謹んでお断り申し上げます」
 「ッチ!」
 「「怖っ!!」」

 山姥の舌打ちの音に俺とモヤシさんの言葉が被った。自然とお互いの顔を見合わせる。

 「「あのーーー「「そこまでだ!!」」……」」

 同時に互いに声をかけようと歩み寄ると緑のカーテンを一気に開いた音と一緒に空から白黒の物体が華麗に着地した。

 「そこまでだこの世に蔓延る悪の根源共ショタコン!! 全ての始まりはこの俺から、古より白き輝き放つは我が魂!  キュ●レモーネ!」

     ドン!

 「古より時を司り人を見やるは我が眼。もう一つの光の祭典、キ、キュ●サター●」

     ドン!!

 「「共鳴し共にあるは二つで一つの魂、俺(私)達を止めることはもう誰にも出来ない!  未来へと突っ走るハレー彗星、二人はプリキュ●!!!」

   ドドン!!!



 互いに背中で同じポーズを決める真顔のデッカい男(クロス様)とドヤ顔のちっちゃい女(新月さん)。
 固まる冒険者パーティの人、半ミンチにされた魔獣、プルプルしてる女執事、渋い顔をしているであろう俺。
 さらさらと心地よい音を奏でる草木、風に吹かれて揺らめくはきのこ詰めの袋、めちゃくちゃだ。
 この場の静寂が消え去ったのは何秒後だろうかもしかしたら数分は立っていたかもしれない。



   はじめに動いたのはツァスタバさんだった。

 「お二人とも何をされておられるのですか!!」

 あー良かった、この人がいてくれて。

 「お二人だけじゃ駄目です! ここは僭越ながら私も参加させて頂きます」

 はい?!  なんかこの人まで参加しちゃったよーー!!!

 「穢れた器は神の御手により生まれ変る。神の威光を享受し光り輝くは我が魂、気高く艶めくは我が誇り ー!  キュ●ゴート!!
 この身は真実に見初められし母なる大地に祝福された盾と矛!  さぁ、貴方を砕いてあげます!!」

    ペッペラー!!!!

……………………………………………………
…………………………
……………


 「何やってんだあんたらーーーー!!! ツッコミ不在か!!!!」

 俺の怒りがピークに達し森に木霊した瞬間だった。
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