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第2章
妖怪白子泣き爺
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以降、巻き込まれよりお送りします。
さて、今日はいつも以上に頑張らないといけない。なぜかって? 今日はパーティのランクがBに上がって初めての本当にBランク相当の依頼を受ける日だ。
俺たちのパーティ『巻き込まれ』がBランクになったのは一カ月程前なのだが伸さんの慣れてからの方がいいという意見を尊重した。おかげでここ一ヶ月はCとBの中間層辺りの依頼を受けまくっていた。
けど普通ならそんな面倒なことしないよな? 大体のやつはBランクに上がったらすぐにそっちを受ける。
しかし俺達は日本人であってこの世界の人達のように強くない。日本人の筋肉を考えろ。
現に何回か死にかけてその度に朝比奈さんのチートでなんとかしてきたんだぞこのやろう。でも他のBランクのパーティに比べればずっと怪我の率は低いと思う。それも伸さんの冷静な判断と特訓、俺の弓での遠距離で的を倒せる利点+αで朝比奈さんのチートの連携プレーのおかげだ。
なんでも伸さんは日本では大学生で剣道サークルで特訓のメニューを考えていたらしくこういったことには慣れているそうで中々に鍛えられました。
いや~、俺だって本当はすぐにBランクの依頼を受けたかったよ? けど伸さんは、
「Bランクに昇格した冒険者は大体が調子にのってBランクの依頼でヘマをするか大怪我を負っている。この世界の人間がそうなるなら俺達が普通に死ぬだろ。今はギルドマスターと相談してC以上、B未満の依頼をこなして慣れてからBランクの依頼を受けよう」
って言って俺と朝比奈さんがどれだけぶうぶう言ってもオリハルコンの意思を曲げないだもん。嫌気が差して仕方がなかったってもんだったよ。
あ、ここ「だった」ってのがミソね。
今は伸さんの意見が正しかったって思ってる。実際にCとBの中間をやってみたらすっごくキツかったし。伸さんの言う通りだったから朝比奈さんと一緒に土下座して謝ったのもまだ記憶に新しいし。
けど伸さん凄くね? 普通ならランクが上がったっていう喜びに浮かれるところなのにそれを我慢して鍛錬に一カ月も費やしたんだぜ? 俺なら普通に誘惑に負けてBランクの受けるwww
で、多分調子に乗ってお亡くなりしてるわ。頭の中で遺影に入った自分の写真がお鈴でチーン……と鳴らされているシーンを想像する。イヤダ、俺まだ18歳なのに死にたくない。
「おーい、稔。そろそろ出発するぞ~」
「早くしろよ~、今回の依頼は長丁場になるんだから~」
今日までの出来事を振り返っていると依頼書を受理してきたらしい伸さんと朝比奈さんがいた。
ヤベェ、早く行かないと今日の特訓メニューが1.5倍になる。王都一周が二周に増やされる。イヤだ、まだ僕ちゃん死になくない。
ただえさえこの世界に来るまではもやし生活を謳歌していたから今のメニューで死にそうなのにこれ以上増えたら魂飛んでく。
考える人もやしver.をやめて急いでこの世界でちまちまと魔獣に石投げで挑んだ努力の結晶である弓ちゃん三号、正式名称『アポロンの弓(音楽が好きなやつが使うと攻撃力が10上がるってだけで本物じゃないんです。すみません)』を掴んで二人の元へ走る。ちなみに一号、二号はお亡くなりになられました。すまぬ。
「ごめんごめん! ちょっと考えごとしてたからさ。で、初のBランクはどんな仕事で御座いましょうか?」
「ん? あぁ、「これだ」」
「へぶっ!」
怒られたくなくて話題を変えると朝比奈さんが俺の顔に依頼書を貼り付ける。
まっくらぁ~!
まぁ、毎度のことで慣れたけど。
貼り付けられた紙を顔から剥がして読む。ヘェ~、ファンタジーっぽい。いや、リアルにファンタジーなんだけどね。
そこにはこう書かれていた。
ーーーーーーーーーー
【討伐依頼】 キマイラ 報酬:金貨3枚
数:1
ランク:B 場所:王都へ続く街道の山中
備考:王都と港町を繋ぐ街道の山中に大型のキマイラが出没して山菜やきのこを食い漁る被害が出ている。最近では人も襲いかかることが多いので倒して欲しい。
倒した者は証としてキマイラの尻尾とコアを採取しておくこと。
ーーーーーーーーーー
****
「つ~~~か~~~れ~~~たぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
「五月蝿い、叫ぶ暇があるなら足を動かんか足を!!」
「お嬢様、休んでばかりではいつまでたっても目的地に着きません、っよ!」
「早くして下さい、っ! いつまでこんなことを続けているんですか! 早く……歩けっ!」
「もう疲れた。歩きたくない! 何でこうなった!!」
「「「(ご)自分のせいだろ(です) (でしょ)!!!」」」
疲れたってそりゃヒールの高い靴で何㎞も歩けばそうなるだろ。
只今街道の山中の木々が日を遮る明るい森の中、新月が道の脇にあった岩にくっ付いて離れない白い引っ付き虫を大きな株宜しく株の葉(新月の服)を引っ張っている。現在進行系で、
巫山戯るな、と言いたい。お前よりももっと歩きづらいブーツを履いたツァスタバでさえ今私の後ろで引っ張っているんだぞ。甘えるな、
ただえさえアホがアホなことを仕出かしてくてたおかげで今の私達は王都プリジーンに続く街道を地味に、ひたすら地味に歩いて進んでやっと道のりの半分程来たというのに……お前が駄々をこねるな。
そろそろ疲れて来たので駄目押しで渾身の力で引っ張る。
「もういやぁ~! 足が棒になるぅ……ちむぅ~。クロぉ、助けて~、っとう!」
強い力で引っ張っると新月がやっと手を岩から話した。はぁ、やっと岩からひっつき虫が剥がれ……
「っ! いきなり背中におぶさるな! 子泣●爺か!」
「オギャー!、オギャー!」
馬鹿か! こいつあろうことが引っ張られた衝撃を利用して渡しの背中におぶさりやがった!
「いい加減にしろこのっ、ババア!! お前よりも歩きづらいブーツのツァスタバや年下のハリスですら自分で歩いてると言うのに年上のお前が私におぶさってどうするんだ!!」
「わわわ~、揺さんといて落ちちゃう!」
「マスターそれはやり過ぎかと」
「こいつにはこれぐらいしたって死なん。もっとやってもいいぐらいだ」
「いやーん、幼児揺さぶられ症候群になっちゃう!」
「ならんわ、お前歳幾つだと思ってるんだ」
「ちゃんちゃーい♡」
「「アホか!」」
ツァスタバが止めに入るがそんなこと知るか。もっと揺さぶってやる。
しかし、そのまま降りない気なのか新月は何も知らないやつが見たら愛らしいと思うであろう笑顔で指を三本立てた。同時に私とハリスのツッコミがかぶる。
可愛らしくしても私達は新月の性格を知ってるので全然可愛いとは思わない。
むしろ引く。ハリスもそう思ったのだろうか、同じタイミングで同じツッコミをした。偉いなハリスは。この白い子泣●爺とは大違いだ。
「おい、そろそろ降りろ。重い」
「えー、もう歩けなーい」
「おや、お嬢様、この木の根元に生えているきのこですが食料として使えるものみたいですよ。如何なさいますか?」
「きのこー? 採るー!」
きのこ、と聞いた瞬間新月が木の根元向けて飛び跳ねた。反動で私も前のめりになり転びそうになる。
猿か、と思いつつ私とハリスも二人のいる場所に足を向けると二人は赤と白の水玉模様のきのこを持っていた。
「ツァスタバ、このきのこはなんだ?」
「グリシュプリズンというきのこですよマスター。これは小さいサイズなので串に刺して焼いて食べるのが主流なんです。それとこちらが……」
口に微かな笑みを浮かべてツァスタバは幹に生えている笠の大きなきのこをもぎ取る。
「スイタケです。このサイズならステーキにしても大丈夫そうですね」
「ステーキ?! じゃあ他の山菜と一緒にもっと採ってこよう。今夜の夕食はきのこパーティーじゃあぁああ!」
ステーキと聞いて新月が目を光らし森へと突進しそうになるのを襟を掴んで阻止する。
ぐぇ……! と鳴くアヒルの声かカエルが潰れる音ような声が絞り出た。
「待て、そんな暇があったら早く先を急がないといつまで経ってもプリジーンに着かないぞ」
「今更じゃん、どうせ遅れてるんだから少しぐらい道草したってバレないって」
そう言われて私は頭の中で天秤を思い浮かべてみる。
遅れているとわかっていて尚、先を急いで勇者とやらを見に行くか。それとも少しだけ休憩がてらきのこ採りをして今晩のおかずを豪華にするか。
次に泊まろうと考えている宿はプリジーンの前にある村で私達がいる山中の街道を歩けばあと数時間で着く距離だ。今はまだ昼過ぎ、寄り道をしても夕方には宿に着く。しかしここで先を急ぐと夕食は最悪貧しい村なら茹でたジャガイモと薄いスープもしくは普通の村であれば一般的な宿で出る野菜スープと黒パン……頭の中の天秤が一気にきのこに勝敗が上がる。
「少しだけだぞ」
「「やったー!」」「かしこまりました」
「ただし二人一組で動け、街道からあまり離れるなよ」
「「はーい」」「了解です。マスター」
少しだけと言った瞬間、子供二人から喜びの声が上がる。
こうして第一回きのこ狩り大会が幕を開けることとなった。
「クロ、ダッコ! それか肩車して」
「ほらよ」
「ありがとう~クロ」
新月にダッコか肩車をするように言われて肩車を選ぶ。
あの後、じゃんけんで私と新月、ハリスとツァスタバのペアが決まった。私は新月に私はきのこを採ろうとすると破壊してしまいそうだから【鑑定】で食べられる物かを見分けて袋に入れる係を任されたという名の雑用を押し付けられた。
私自身やりかねないので何も言い返せなかった。
「クロ、もうちょい前」
肩車をすると前へと言って新月が前のめりになる。ついでに太ももが私の頭をヘッドロックし、頸でスカートだか下着だかの布が擦れて痒い。
おまけに頭を新月の女性特有の柔らかい両手を頭に乗せられて見た目同様に気分は完全にパレードを子供に肩車をして見せる父親だ。
言われた通りに足を前へと動かし土で出来た高さ3m程の崖のようになった場所に近づき、新月が右手で私の頭を支えとばかりにがっしりと鷲掴みにして反対の手できのこを鷲掴みにする。
「よし、採ったど!! クロ鑑定士よ、出番でごさる」
「はいはい」
なぜか武士口調で話す新月を降ろして【鑑定】を使う。
『【ハゴロモダケ】
薄衣のように薄い笠が何枚も重なった形のきのこ。
なぜか高い位置に生えるので採取が困難で高値で売れる。珍味でありスープの素材にされることが多い。』
美味しそうだな。
見た所ここにあるハゴロモダケはそこそこありそうだがこういうのはストックしておきたいから少し量が欲しい。
ツァスタバ達がこれを採っていてくれるとありがたいなと思いつつきのこを袋に詰める。
きのこは新月が食用のきのこばっかり集めてくれたおかげて今じゃ袋がぱんぱんに膨れ上がりサンタクロースが背負っているプレゼントの袋のようだった。
「よし、結構な量が集まったしそろそろ……
「ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!」」
「「? 防犯ブザー?」」
ツァスタバ達と合流するかと言おうとした時、突然のハリスの断末魔のような響きにぶった切られた。一体なにがあった?
「行くか」
「行こうか」
私と新月は短かく会話を済ませると叫び声が聞こえた方角へと走り出した。
****
以降ショタの提供でお送りします。
「街道を少し外れただけでこんなにも多くの種類のきのこが生えているとは……これだけあればマスターやお嬢様でもご満足して頂けるでしょう。早速、今からでも夕食のメニューを考えておかねば。
まず前菜にハゴロモダケを使ったポタージュ、メインディッシュにグリッシュプリズンのステーキ、この二つは確実でしょうか? あぁ、クロスティーニも捨てがたいですね。ハリスは何が食べたいですか?」
「ツァスタバさんが何を言っているのかわからないので美味しいものならなんでもいいです」
クロスなんとかってなんだろうということしか頭に浮かばない。クロス様がどうしたんでしょう。
「そうですか? では、このメニューでいきましょうか。しかしきのこだけではカロリーに問題がありますね。肉料理が一品は欲しいところですね。肉料理はブレゼ、グリエ、ロティールなど辺りがいいでしょうか?」
「ブレゼ? ロティール? なんですか?」
何それ呪文? 食えるの? 俺が頭の上にハテナマークが宙を舞う。思わずツァスタバさんに聞き返してしまった。
「すみません、ハリスには知らなくても当たり前ですね。これはマスター達の世界の料理方法です。
ブレゼとは少量の液体を加え、蓋をしたあとゆっくりと火を通す方法。
グリルは肉や魚、野菜などを網焼きにする方法。
ロティールは肉をオーブンで焼き上げるか直火で串焼きにする方法ですよ。しかし山では牛肉などはありません。鹿や野鴨などを捕まえてくるとしましょうか?」
「鹿肉ですか?!」
ツァスタバさんは誤り、説明をする。謝らなくていいのに。
しかし次の瞬間俺の頭の中はハテナマークから鹿肉という単語にすり替わる。肉、しかも鹿肉。結構前に一回だけ食べただけだけど凄く美味しかったのを覚えている。
またそれが食べれるーーー?!
「はい! はい! はーい! 食べたいです鹿肉!!」
「ふふふ、そうですね。ハリスも食べたいのですか? なら、マスターとお嬢様もお喜びになられるようなものを作らないといけませんね」
「っ! ぐぅ……」
「? 、どうしました?」
嬉しそうに口元を緩めて笑うツァスタバさんに一瞬だけ、本当に一瞬だけだけど母さんの笑った時の口元に似ていて身がこわばる。
いけね、家を出てから泣かないって決めてたのに。涙が出そうになり慌てて目に意識を集結させて押し留める。あー、まずかった。もう少しで涙が出てくるところだった。
話を変えようときのこをぱんぱんに詰め込んだ袋を担いで森の奥へと足を向ける。
「い、いえ! 大丈夫です。それより早く鹿を探しにいきましょう!」
「?、ええ」
ガザッ
物音がして足を止める。耳を済ますと俺達のいる場所より右側の俺より背が高い草の奥から再度物音が聞こえる。
鹿? でも鳴き声も何もしない。
それにクロス様と新月さんが行った方角だ。もしかしてクロス様かもしれない。また新月さんに振り回されるのかな?
いつも一応姉に当たるがそうは見えない新月さんが思い浮かぶ。
いつものやらかしているところを思い出して鼻で笑いそうになるのを堪え、ハテナマークを浮かべたツァスタバさんをおいて俺は自分の身の丈以上に生い茂っている大きな草を掻き分ける。
「クロス様ー、新月さーんありましたか~……ぁ?」
「Guuu?」
緑のカーテンを掻き分けるとそこにいたのは背が高い白目が黒い男でも無く、背がひ……う、うん! 青白い髪の常時ハイテンションの女性でも無く蛇ーーーの尻尾を振りながらきのこにかぶりついていた未確認生命とご対面だった。
確か新月さんは前に未確認生命をも見たらこう言えって言ってたよな?
俺は勇気を振り絞って一歩前へ出ると右の人差し指を伸ばす。
「E、E.●~」
「Gu? guaaaa!!」
ですよね~! 想定内の反応ありがとうございます! という訳で案の定の反応だった。うわぉ、失神するかもしれない……今までの俺なら。
そう、今までなら。でも今の俺は違う。クロス様達と今まで行動していたおかげで俺は逞しくなったんだ。これはクロス様が言っていたから間違いない。俺の頭の中は冷静だった。
さて、こういう時はどうするか。まだツァスタバさんはこいつに気づいていない。どうしよう……時間が無い。
確か前にも同じようなことがあった筈だ。新月さんに抱えられて空を飛んだ時だ。あの時は確か新月さんに太ももを撫で回されてあまりの気持ち悪さに思わず叫んだんだ。なら今回も―――
口を大きく開いて息を吸い込んで腹を限界まで膨らませる。準備完了、ではいきましょう。
「ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
さて、今日はいつも以上に頑張らないといけない。なぜかって? 今日はパーティのランクがBに上がって初めての本当にBランク相当の依頼を受ける日だ。
俺たちのパーティ『巻き込まれ』がBランクになったのは一カ月程前なのだが伸さんの慣れてからの方がいいという意見を尊重した。おかげでここ一ヶ月はCとBの中間層辺りの依頼を受けまくっていた。
けど普通ならそんな面倒なことしないよな? 大体のやつはBランクに上がったらすぐにそっちを受ける。
しかし俺達は日本人であってこの世界の人達のように強くない。日本人の筋肉を考えろ。
現に何回か死にかけてその度に朝比奈さんのチートでなんとかしてきたんだぞこのやろう。でも他のBランクのパーティに比べればずっと怪我の率は低いと思う。それも伸さんの冷静な判断と特訓、俺の弓での遠距離で的を倒せる利点+αで朝比奈さんのチートの連携プレーのおかげだ。
なんでも伸さんは日本では大学生で剣道サークルで特訓のメニューを考えていたらしくこういったことには慣れているそうで中々に鍛えられました。
いや~、俺だって本当はすぐにBランクの依頼を受けたかったよ? けど伸さんは、
「Bランクに昇格した冒険者は大体が調子にのってBランクの依頼でヘマをするか大怪我を負っている。この世界の人間がそうなるなら俺達が普通に死ぬだろ。今はギルドマスターと相談してC以上、B未満の依頼をこなして慣れてからBランクの依頼を受けよう」
って言って俺と朝比奈さんがどれだけぶうぶう言ってもオリハルコンの意思を曲げないだもん。嫌気が差して仕方がなかったってもんだったよ。
あ、ここ「だった」ってのがミソね。
今は伸さんの意見が正しかったって思ってる。実際にCとBの中間をやってみたらすっごくキツかったし。伸さんの言う通りだったから朝比奈さんと一緒に土下座して謝ったのもまだ記憶に新しいし。
けど伸さん凄くね? 普通ならランクが上がったっていう喜びに浮かれるところなのにそれを我慢して鍛錬に一カ月も費やしたんだぜ? 俺なら普通に誘惑に負けてBランクの受けるwww
で、多分調子に乗ってお亡くなりしてるわ。頭の中で遺影に入った自分の写真がお鈴でチーン……と鳴らされているシーンを想像する。イヤダ、俺まだ18歳なのに死にたくない。
「おーい、稔。そろそろ出発するぞ~」
「早くしろよ~、今回の依頼は長丁場になるんだから~」
今日までの出来事を振り返っていると依頼書を受理してきたらしい伸さんと朝比奈さんがいた。
ヤベェ、早く行かないと今日の特訓メニューが1.5倍になる。王都一周が二周に増やされる。イヤだ、まだ僕ちゃん死になくない。
ただえさえこの世界に来るまではもやし生活を謳歌していたから今のメニューで死にそうなのにこれ以上増えたら魂飛んでく。
考える人もやしver.をやめて急いでこの世界でちまちまと魔獣に石投げで挑んだ努力の結晶である弓ちゃん三号、正式名称『アポロンの弓(音楽が好きなやつが使うと攻撃力が10上がるってだけで本物じゃないんです。すみません)』を掴んで二人の元へ走る。ちなみに一号、二号はお亡くなりになられました。すまぬ。
「ごめんごめん! ちょっと考えごとしてたからさ。で、初のBランクはどんな仕事で御座いましょうか?」
「ん? あぁ、「これだ」」
「へぶっ!」
怒られたくなくて話題を変えると朝比奈さんが俺の顔に依頼書を貼り付ける。
まっくらぁ~!
まぁ、毎度のことで慣れたけど。
貼り付けられた紙を顔から剥がして読む。ヘェ~、ファンタジーっぽい。いや、リアルにファンタジーなんだけどね。
そこにはこう書かれていた。
ーーーーーーーーーー
【討伐依頼】 キマイラ 報酬:金貨3枚
数:1
ランク:B 場所:王都へ続く街道の山中
備考:王都と港町を繋ぐ街道の山中に大型のキマイラが出没して山菜やきのこを食い漁る被害が出ている。最近では人も襲いかかることが多いので倒して欲しい。
倒した者は証としてキマイラの尻尾とコアを採取しておくこと。
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「つ~~~か~~~れ~~~たぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
「五月蝿い、叫ぶ暇があるなら足を動かんか足を!!」
「お嬢様、休んでばかりではいつまでたっても目的地に着きません、っよ!」
「早くして下さい、っ! いつまでこんなことを続けているんですか! 早く……歩けっ!」
「もう疲れた。歩きたくない! 何でこうなった!!」
「「「(ご)自分のせいだろ(です) (でしょ)!!!」」」
疲れたってそりゃヒールの高い靴で何㎞も歩けばそうなるだろ。
只今街道の山中の木々が日を遮る明るい森の中、新月が道の脇にあった岩にくっ付いて離れない白い引っ付き虫を大きな株宜しく株の葉(新月の服)を引っ張っている。現在進行系で、
巫山戯るな、と言いたい。お前よりももっと歩きづらいブーツを履いたツァスタバでさえ今私の後ろで引っ張っているんだぞ。甘えるな、
ただえさえアホがアホなことを仕出かしてくてたおかげで今の私達は王都プリジーンに続く街道を地味に、ひたすら地味に歩いて進んでやっと道のりの半分程来たというのに……お前が駄々をこねるな。
そろそろ疲れて来たので駄目押しで渾身の力で引っ張る。
「もういやぁ~! 足が棒になるぅ……ちむぅ~。クロぉ、助けて~、っとう!」
強い力で引っ張っると新月がやっと手を岩から話した。はぁ、やっと岩からひっつき虫が剥がれ……
「っ! いきなり背中におぶさるな! 子泣●爺か!」
「オギャー!、オギャー!」
馬鹿か! こいつあろうことが引っ張られた衝撃を利用して渡しの背中におぶさりやがった!
「いい加減にしろこのっ、ババア!! お前よりも歩きづらいブーツのツァスタバや年下のハリスですら自分で歩いてると言うのに年上のお前が私におぶさってどうするんだ!!」
「わわわ~、揺さんといて落ちちゃう!」
「マスターそれはやり過ぎかと」
「こいつにはこれぐらいしたって死なん。もっとやってもいいぐらいだ」
「いやーん、幼児揺さぶられ症候群になっちゃう!」
「ならんわ、お前歳幾つだと思ってるんだ」
「ちゃんちゃーい♡」
「「アホか!」」
ツァスタバが止めに入るがそんなこと知るか。もっと揺さぶってやる。
しかし、そのまま降りない気なのか新月は何も知らないやつが見たら愛らしいと思うであろう笑顔で指を三本立てた。同時に私とハリスのツッコミがかぶる。
可愛らしくしても私達は新月の性格を知ってるので全然可愛いとは思わない。
むしろ引く。ハリスもそう思ったのだろうか、同じタイミングで同じツッコミをした。偉いなハリスは。この白い子泣●爺とは大違いだ。
「おい、そろそろ降りろ。重い」
「えー、もう歩けなーい」
「おや、お嬢様、この木の根元に生えているきのこですが食料として使えるものみたいですよ。如何なさいますか?」
「きのこー? 採るー!」
きのこ、と聞いた瞬間新月が木の根元向けて飛び跳ねた。反動で私も前のめりになり転びそうになる。
猿か、と思いつつ私とハリスも二人のいる場所に足を向けると二人は赤と白の水玉模様のきのこを持っていた。
「ツァスタバ、このきのこはなんだ?」
「グリシュプリズンというきのこですよマスター。これは小さいサイズなので串に刺して焼いて食べるのが主流なんです。それとこちらが……」
口に微かな笑みを浮かべてツァスタバは幹に生えている笠の大きなきのこをもぎ取る。
「スイタケです。このサイズならステーキにしても大丈夫そうですね」
「ステーキ?! じゃあ他の山菜と一緒にもっと採ってこよう。今夜の夕食はきのこパーティーじゃあぁああ!」
ステーキと聞いて新月が目を光らし森へと突進しそうになるのを襟を掴んで阻止する。
ぐぇ……! と鳴くアヒルの声かカエルが潰れる音ような声が絞り出た。
「待て、そんな暇があったら早く先を急がないといつまで経ってもプリジーンに着かないぞ」
「今更じゃん、どうせ遅れてるんだから少しぐらい道草したってバレないって」
そう言われて私は頭の中で天秤を思い浮かべてみる。
遅れているとわかっていて尚、先を急いで勇者とやらを見に行くか。それとも少しだけ休憩がてらきのこ採りをして今晩のおかずを豪華にするか。
次に泊まろうと考えている宿はプリジーンの前にある村で私達がいる山中の街道を歩けばあと数時間で着く距離だ。今はまだ昼過ぎ、寄り道をしても夕方には宿に着く。しかしここで先を急ぐと夕食は最悪貧しい村なら茹でたジャガイモと薄いスープもしくは普通の村であれば一般的な宿で出る野菜スープと黒パン……頭の中の天秤が一気にきのこに勝敗が上がる。
「少しだけだぞ」
「「やったー!」」「かしこまりました」
「ただし二人一組で動け、街道からあまり離れるなよ」
「「はーい」」「了解です。マスター」
少しだけと言った瞬間、子供二人から喜びの声が上がる。
こうして第一回きのこ狩り大会が幕を開けることとなった。
「クロ、ダッコ! それか肩車して」
「ほらよ」
「ありがとう~クロ」
新月にダッコか肩車をするように言われて肩車を選ぶ。
あの後、じゃんけんで私と新月、ハリスとツァスタバのペアが決まった。私は新月に私はきのこを採ろうとすると破壊してしまいそうだから【鑑定】で食べられる物かを見分けて袋に入れる係を任されたという名の雑用を押し付けられた。
私自身やりかねないので何も言い返せなかった。
「クロ、もうちょい前」
肩車をすると前へと言って新月が前のめりになる。ついでに太ももが私の頭をヘッドロックし、頸でスカートだか下着だかの布が擦れて痒い。
おまけに頭を新月の女性特有の柔らかい両手を頭に乗せられて見た目同様に気分は完全にパレードを子供に肩車をして見せる父親だ。
言われた通りに足を前へと動かし土で出来た高さ3m程の崖のようになった場所に近づき、新月が右手で私の頭を支えとばかりにがっしりと鷲掴みにして反対の手できのこを鷲掴みにする。
「よし、採ったど!! クロ鑑定士よ、出番でごさる」
「はいはい」
なぜか武士口調で話す新月を降ろして【鑑定】を使う。
『【ハゴロモダケ】
薄衣のように薄い笠が何枚も重なった形のきのこ。
なぜか高い位置に生えるので採取が困難で高値で売れる。珍味でありスープの素材にされることが多い。』
美味しそうだな。
見た所ここにあるハゴロモダケはそこそこありそうだがこういうのはストックしておきたいから少し量が欲しい。
ツァスタバ達がこれを採っていてくれるとありがたいなと思いつつきのこを袋に詰める。
きのこは新月が食用のきのこばっかり集めてくれたおかげて今じゃ袋がぱんぱんに膨れ上がりサンタクロースが背負っているプレゼントの袋のようだった。
「よし、結構な量が集まったしそろそろ……
「ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!」」
「「? 防犯ブザー?」」
ツァスタバ達と合流するかと言おうとした時、突然のハリスの断末魔のような響きにぶった切られた。一体なにがあった?
「行くか」
「行こうか」
私と新月は短かく会話を済ませると叫び声が聞こえた方角へと走り出した。
****
以降ショタの提供でお送りします。
「街道を少し外れただけでこんなにも多くの種類のきのこが生えているとは……これだけあればマスターやお嬢様でもご満足して頂けるでしょう。早速、今からでも夕食のメニューを考えておかねば。
まず前菜にハゴロモダケを使ったポタージュ、メインディッシュにグリッシュプリズンのステーキ、この二つは確実でしょうか? あぁ、クロスティーニも捨てがたいですね。ハリスは何が食べたいですか?」
「ツァスタバさんが何を言っているのかわからないので美味しいものならなんでもいいです」
クロスなんとかってなんだろうということしか頭に浮かばない。クロス様がどうしたんでしょう。
「そうですか? では、このメニューでいきましょうか。しかしきのこだけではカロリーに問題がありますね。肉料理が一品は欲しいところですね。肉料理はブレゼ、グリエ、ロティールなど辺りがいいでしょうか?」
「ブレゼ? ロティール? なんですか?」
何それ呪文? 食えるの? 俺が頭の上にハテナマークが宙を舞う。思わずツァスタバさんに聞き返してしまった。
「すみません、ハリスには知らなくても当たり前ですね。これはマスター達の世界の料理方法です。
ブレゼとは少量の液体を加え、蓋をしたあとゆっくりと火を通す方法。
グリルは肉や魚、野菜などを網焼きにする方法。
ロティールは肉をオーブンで焼き上げるか直火で串焼きにする方法ですよ。しかし山では牛肉などはありません。鹿や野鴨などを捕まえてくるとしましょうか?」
「鹿肉ですか?!」
ツァスタバさんは誤り、説明をする。謝らなくていいのに。
しかし次の瞬間俺の頭の中はハテナマークから鹿肉という単語にすり替わる。肉、しかも鹿肉。結構前に一回だけ食べただけだけど凄く美味しかったのを覚えている。
またそれが食べれるーーー?!
「はい! はい! はーい! 食べたいです鹿肉!!」
「ふふふ、そうですね。ハリスも食べたいのですか? なら、マスターとお嬢様もお喜びになられるようなものを作らないといけませんね」
「っ! ぐぅ……」
「? 、どうしました?」
嬉しそうに口元を緩めて笑うツァスタバさんに一瞬だけ、本当に一瞬だけだけど母さんの笑った時の口元に似ていて身がこわばる。
いけね、家を出てから泣かないって決めてたのに。涙が出そうになり慌てて目に意識を集結させて押し留める。あー、まずかった。もう少しで涙が出てくるところだった。
話を変えようときのこをぱんぱんに詰め込んだ袋を担いで森の奥へと足を向ける。
「い、いえ! 大丈夫です。それより早く鹿を探しにいきましょう!」
「?、ええ」
ガザッ
物音がして足を止める。耳を済ますと俺達のいる場所より右側の俺より背が高い草の奥から再度物音が聞こえる。
鹿? でも鳴き声も何もしない。
それにクロス様と新月さんが行った方角だ。もしかしてクロス様かもしれない。また新月さんに振り回されるのかな?
いつも一応姉に当たるがそうは見えない新月さんが思い浮かぶ。
いつものやらかしているところを思い出して鼻で笑いそうになるのを堪え、ハテナマークを浮かべたツァスタバさんをおいて俺は自分の身の丈以上に生い茂っている大きな草を掻き分ける。
「クロス様ー、新月さーんありましたか~……ぁ?」
「Guuu?」
緑のカーテンを掻き分けるとそこにいたのは背が高い白目が黒い男でも無く、背がひ……う、うん! 青白い髪の常時ハイテンションの女性でも無く蛇ーーーの尻尾を振りながらきのこにかぶりついていた未確認生命とご対面だった。
確か新月さんは前に未確認生命をも見たらこう言えって言ってたよな?
俺は勇気を振り絞って一歩前へ出ると右の人差し指を伸ばす。
「E、E.●~」
「Gu? guaaaa!!」
ですよね~! 想定内の反応ありがとうございます! という訳で案の定の反応だった。うわぉ、失神するかもしれない……今までの俺なら。
そう、今までなら。でも今の俺は違う。クロス様達と今まで行動していたおかげで俺は逞しくなったんだ。これはクロス様が言っていたから間違いない。俺の頭の中は冷静だった。
さて、こういう時はどうするか。まだツァスタバさんはこいつに気づいていない。どうしよう……時間が無い。
確か前にも同じようなことがあった筈だ。新月さんに抱えられて空を飛んだ時だ。あの時は確か新月さんに太ももを撫で回されてあまりの気持ち悪さに思わず叫んだんだ。なら今回も―――
口を大きく開いて息を吸い込んで腹を限界まで膨らませる。準備完了、ではいきましょう。
「ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!」
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