遑神 ーいとまがみー

慶光院周

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第2章

きのこパーティー

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 叫ばれると共に肩を掴まれて激しく前後ろに揺さぶられる。首が捥げるからやめろ。
 本当にこれ以上やられると首が捥げるか伸びそうだ。手のひらを新月に見せてジェスチャーするとすぐに気が付いて貰えたらしく慌てて両手が離れていく。

 「という訳だ。一応頭の片隅にでも残しといてくれればいい。さてと、そろそろゲームは終了だ」

 安物のカーテンの隣に付けられた黒縁の時計を見るとツァスタバとハリスが厨房へ行ってから随分と時間が経過していたのでそろそろ戻って来るだろう。
 話を切り上げるため寝転んでいた体を起こす。同時に人差し指を【千里眼】に向けて画面を消し、ゲーム機を【無限の胃袋】へとしまう。

 「えー、コンティニューしたーい。まだ試合は終わってない!(`・ω・´)」
 「散々やっただろこのステージ。終わりだ終わり」
 「ヤダ! あと一回!」
 「却下」
 「ケチ!!」

 勝手にゲームを仕舞われた新月がベットの上にあった枕を投げてきたーーー咄嗟に起こしていた上半身をベットへ預けることで躱す。
 子供か!! 危ないだろ。



 「何をやってるだお前は癇癪持ちの子供ーーーっ!!」
 「引っかかったなクロ! 枕は囮だぜ!! 」

 枕を避けたと思った瞬間背中に新月がのし掛かり重石を背負わされたように重くなる。
 重い、新月の肩を掴み引き剥がそうと腕に力を込めるとタイミングが悪かったらしい。ドアノブが回って錆びた蝶番が耳触りな音をあげる。ハリスが入ってきた。

 「クロス様~、新月さーん夕食が出来ましたよ~。って何抱きついてるんですか」

 続けざまにカップルか、とため息のように呟かれると今度は木製のワゴンを引っ張ったツァスタバが入って来きた。
 そしてそのまま徐に扉を閉めて鍵をかけると私と新月の抱きつくさまを見て一瞬だけ眉を動かすと直ちに表情を優しくした。だが目だけはその奥にいたずらの色が微かに見えた。

 「おやマスターとお嬢様……部屋の中でも離れずにいるとは中がとってもよろしようで、もしやどこかに出掛けられるのですか? でしたらこちらの料理は私とハリスが責任を持って処理をさせて頂きますので是非、お二人で楽しんで来て頂いて結構ですよ?」
 「ちゃうちゃう!! ゲーム取られて仕返しをしてただけ!! ご飯は食べますーーーぅううう!!!」
 「そうだ。散々このアホにこき使われたのに何も無しは御免だぞ」

 何を思いついたのかツァスタバが面白そうに茶化しに入られたので私と新月の二人で全力で否定にはいる。
 新月は全力でやり過ぎて料理は処理すると言われた途端にツァスタバに飛び付くーーーかと思ったが距離が足りず床に撃沈して床で伸びた。死んだか?

 「まだ生きとるわ!! つーちゃんお願いだからご飯抜きはやめて!  お腹が空いて力が出なくなっちゃうから」
 「ふふ、冗談ですよ」

 死んだかと思ったが生きていた新月がバッタのように飛び跳ねて華麗に着地する、と再度抱きついて懇願する。無様だな。
 抱きついて、というより引っ付かれているツァスタバは必死の表情をする新月の頭を撫でて冗談だと言った。よかった、冗談でよかった。ツァスタバの目は本気だったから本当に処理(食われる)かと思ったぞ。

 「さ、冷めないうちに食べないと不味くなってしまいますから早く頂きましょう」

 どうぞ、と言われて部屋に備え付けされた簡素な木製の椅子に座るとテーブル上に色鮮やかなきのこの料理が次々と並べられる。




 ハゴロモダケの傘が皿の中で円状になっているポタージュ、
 グリルされたきのこ(あとで調べたらバセウムというらしい)の傘にポークか何かのパテと微塵切りの野菜が詰められているもの、
メインディッシュは肉料理アントレ、アンズタケに似たきのこ(調べたらフロンドと出た)と何か……の肉。のロティールと赤ワインのソース添え、
 最後にデザートのコーヒーゼリー、


 おい、この肉なんだ。どこから調達した?

 疑問が体内で生み出されるが聞いたら後悔する気がしてポタージュと一緒に喉に流し込む。
 うん、塩がきのことの相性が合っている。確かに合うなハゴロモダケ、しかし他にもきのこの風味がする。入っていたのはハゴロモダケだけではなかったらしい。

 料理を黙々と口に運びながら何気なくテーブルの向かいを見る、料理を食べる順番は決まっていない筈なのにハリスが前菜に手を付けていない。メインディッシュに眉を寄せながら肉より先にきのこを食すのが見える。



 あー……肉の正体が分かった、もしかしなくてもあれだろう。でももう食べてしまったではないか。

 「ねぇ、ねぇ、つーちゃん、これってなんの肉? 美味しいの?」

 肉の正体がわかったところで同じくメインディッシュまできた新月がメインディッシュの何かの肉に質問を投げかけた。
 食べてから聞けば良かったのにと思い心の中で合掌をする。と何かの肉についての説明が始まった。

 「はい、マスターやお嬢様が冒険者の方々と話されている間にキマイラの使えそうな部分を回収しておきました。
 いや、中々に骨が折れる作業でした。なにせ錬金材用になる部分も食用部分も殆どが内臓、脂肪、骨などが混ざったミンチ状になっておりましたから。でも今回の夕食分は無事でしたので回収出来ました。そうそう、その前菜に使ったパテもキマイラのものなんですよ」
 「Oh……おーまいごっと。食べてから聞けば良かった。つーかもう食べとる!!」

 聞かなければ良かったものをわざわざ自分から知りに行って真実に打ちのめさせたアホはテーブルに突っ伏し、顔のすぐ横にある赤ワインのソースが添えられた肉を目で睨んだ。
 それを尻目に私はレアで焼かれた肉を切って口へと運ぶ。美味い、案外魔獣は食べれるな。

 「あーでも食べないとな~。クロは平気なの? 嫌悪感とかないの?」
 「ああ、腹に貯まって美味しいならなんでもいいだろ」

 この肉が嫌ではないのかと机の上に広がる白い髪から覗く赤色の目に肉を食べるところを観察したあとため息混じりに聞かれる。大丈夫だと答えると驚きと呆れが入り混じった目がが私の目を見て話す。

 「つよぉいー。ていうかつーちゃんはどうやってこの肉調理したの?」

 どうして? 教えてー! と声をあげたところで口を手で塞ぐ。
 言いかけた言葉が喉に戻ってきたことで新月は踠き始めた。前にやらさせたくだらないことをやらないなら手を退けてやる、と言うと首を縦に降ったので手を離す。

 「私はマスターとお嬢様に仕える執事ですよ? 私はただ当たり前のことをしたまでです」
 「でもツァスタバさん調理するの大変だったみたいですよ。
 食べれそうな部分だけ選り分けて香草やら塩なんかで臭みを取ったりするのと同時にポタージュの味付けしてきのこの串をひっくり返してだの、デザートを冷凍してだのって。
 俺が手伝ったのってデザートのゼリーを冷やすための氷出しただけですからね。それ以外のこと全部この人が一人でやってたんですよ。」

 胸を張って答えた返答にハリスから現場であった出来事が次々に飛び出てくる。慌ててツァスタバはハリスの口を塞いで裏事情を言わないでくれと珍しく焦りをみせた。
 やはりツァスタバ一人では出来なくはないが難しいこともあったらしい。もう一人ぐらいはツァスタバのようなやつがいるかもしれないが一旦、この話は後回しにして明日はこの国の城に行こう。
 一日歩いて辿り着ける位置に王都があったとはいえあのアホが馬車を断っているから早めに行かないと面倒なことになるだろうしな。

 ふと思考から手を離して前を向くとまだツァスタバがハリスに言われて焦っていた。その様子を見ながら焼かれたきのこと肉を口へと運ぶ。
 
 うん、美味い。




****
勇者(?)達、~美海side~



同時刻、神聖カルットハサーズ、宮殿


 「で、あの種族のサラダボールからやって来たという冒険者供はどうなったのだ?」
 「はっ、それが城の門が閉まる時間を知らされていなかった様子でして今日の夜に到着したらしいようです。門が閉まっていると一人が騒いだあと明日に出直すと言って今晩は王都の宿に泊まっている。とのことでございます」

 絢爛豪華を具現化させたように一級品だけで誂えられた王の間、夜になったことにより謁見にくる者がいなくなった部屋にてその会話は進められている。
 かたやこの国の国王、かたやこの国の大臣、互いに身分は上のもの同士ではあるが王は勇者と顔合わせをしたときよりも随分と雰囲気が変わっていた、話の雲行きは悪い方向へと向かっていく。

 「ははは、門限に引っかかったのか。馬鹿なやつらだな。迎えの馬車に乗っていれば半日程でここに着いたものを」

 大臣の報告を聞いた王は最高級品の生地で作られた王座の座面に深く体重をかけて笑った。王の笑い声を聞いた大臣は深く頷き話を進める。

 「まったくでございます。我が国の王都は港町から馬車で行けば数時間で着くものを、街道を歩きながらきのこ狩りをしていたなどあり得ません!」
 「は? きのこ狩り?」

 玉座から気の抜けた声が落ちる。
 なぜきのこ狩りなのかと王は呆れた。きのこ狩りなど今の時期とは関係のないものの筈だ。いや、決してきのこが無いわけでは無い。
 氷の大陸に近い自国ではあるが年がら年中きのこだけではなく山菜などが取れる山もある。しかしその場所が問題なのだ。そのような場所でこの王都とヴェレンボーンの船が到着する港で一番近いのは今現在でも使われている街道が通る山だけだ。
 さらに運が悪いことに最近では凶暴化したキマイラが住処にしている。そこで呑気にきのこ狩りをしたというのか?
 半信半疑になっていると大臣が一枚の紙を持って来た。目を通すと《討伐済》と赤色のインクで印が押された今現在話の一部に出てきたキマイラの討伐依頼書だった。

 「左様でございます。しかもことあろうに今巷で話題のキマイラが縄張りにしている山の中でです。キマイラはそちらに書かれてある通り今日で私立ギルド『女王の涙ラーニ・アース』の冒険者によって討伐されはしましたが」

 渋い顔をした王は大臣に依頼書を渡して眉間に手をやり深いため息をついた。丁度いいタイミングで召使いがワインを運んできたので口直しに喉に酒を流し込む。

 「はぁ……強いからこその余裕なのか間抜けだからか。はたまた、その両方なの分からないやつらだな」

 同じくため息をついた大臣は呆れた顔で《討伐済》の印を押されたキマイラを一度睨んでから依頼書を巻き直す。

 「大方両方を持った人間でしょう。あの国の人間特徴ですからね。ギルドに馬鹿な者達しかいなければその上も高が知れています。
 しかし、一体何を考えているのでしょうかねあの国の女帝は。はじめは自分に使える魔道師を送ると言っていたのに突然魔道師では無く自国の冒険者を送りたいなどと」
 「まあまあ、そう怒るな大臣よ、こちらに来たという冒険者はあの国の女帝が考えた新しいギルドカードの持ち主、実力は未数値だぞ? 下手に強かったら怒らせた時に我らにも被害が及ぶ。確と見張れよ」

 ふつふつと怒りを露わにした大臣を諌めながら王思った。明日やって来るという冒険者がヴェレンボーンの女帝が新しく定めたという新しいギルドカードの持ち主であることは知っている。
 勿論自国には無いギルドカードだ。あともう少しでジュエリーカードを手にしそうな冒険者はいるがそれ・・では駄目だ。


 王はこの国にも明日やって来るという冒険者のように新しいギルドカードを持てる程強い冒険者が自国にも欲しかった。
 通常、そこまで欲しいなら王は自ら明日やって来る冒険者を説得して自国に引き込もうとするだろう。現に今までもそうやって説得して連れてきた者が何人かいる。今現在で側ににいるこの大臣だってそうだ。彼はこの国の生まれではない。
 実力が全てのカッパズティットで大臣をしていたもののその地位を叩き上げで登ってきたエルフに奪われた。その恨みから自国を捨ててこの国にやって来たところを王自ら話し合いをして連れてきた男だ。
 だか今回の冒険者は実力が未数値な上、この大臣のように自国を自ら進んで出てきたのではないので下手なことをすれば本末転倒になりかねない。

 とりあえず様子見を大臣に託す。大臣は「かしこまりました」  と言って頭を下げるのを横目で見るがくれぐれも悟られぬように、と言って念を押す。王は慎重だった。

 話し合いが終わったことで王は一息ついた。王と言っても自分はもう老人の域に達しているためここ最近では何をしても疲れてしまう。背もたれに体を預けようとすると扉から控えめな声が聞こえた。

 「お父様、勇者の方々話したいことがあると言って扉の前で待っておりますがお通ししても?」

 寸前のところで体を前に戻して耳を傾ける。末娘で第二王女のアデリーナだった。

 「ああ、いいだろう。大臣、君は下がってくれ」
 「かしこまりました」
 「うむ、アデリーナ通しなさい」

 大臣を下がらせアデリーナに許可を出す。その声は先ほどの政治に関わるような話し合いをしていた王の素顔を隠し一見優しくも威厳のある王の皮を被った姿は正しく勇者達と謁見をしたこの国の王だった。


****
 今日は……というよりここ最近は何時ものことではあるが大変だったと私は思う。
 今日は朝から戦闘の訓練があったが連隊長である女騎士さんと佳奈ちゃんが些細なことで言い争いになり私が止めるまで二人の言い争いは続いた。
 昼は座学だったけど終わったと同時にアデリーナさんが様子を見に来たことがある。そこからお城の栄養管理士をしている女の人が今日の夕食はどうするかと話し合いに来たり、女騎士さんが稽古をすると言って自分の部下も連れて来たり、とみんなが言い争いをして私一人じゃ事態の収拾に時間がかかってしまった。

 そして今は今日はもう公務が終わった王様に拓也が会いたいと言って王の間の前で待っている状態だ。さっき王様が入っていいと言ったから入ってもいいんだろうけどなんだか気が引けるなぁ……

 「皆さん許可が降りました。どうぞ中へ、お父様私は失礼しますわ」
 「うむ、ご苦労だったアデリーナ」
 「はっ」

 許可が下りたところでアデリーナさんは私達を中に案内すると王様に優雅に一礼をして去って行く。その姿を目で追うと扉が閉まり遮られて拓也くんが話を始めた。その表情は何処と無く怒りを纏わせているように見える。

 「失礼します国王様、俺達に教える魔道師が来たって聞いたんだがどこに居るんだ? 早く教えて貰って俺達もこの世界の危機を救いたいんだか」

 やっぱりこれか、そう思った。王様は昨日、冒険者の人は今日中には来ると言っていたが夜になってもいないことから約束事を大事にする拓也くんは許せないのではないだろうかと私は推測する。
 拓也くんが不機嫌になっているのを見て佳奈ちゃんが拓也くんの腕に手を抱きしめた。もしかして気を紛らわせようとしてくれているのだろうか? と思ったが話は別方向へ飛んで行ってしまった。

 「拓也がそんなに焦らなくてもno problemデス!  それよりもワタシと一緒に稽古しまショウ!」
 「あら、食べた後すぐ稽古するのは体に悪いのよ? だったら座学の復習をしましょうよ」

 笑顔で答える佳奈ちゃんに拓也くんのもう片方の腕を掴んで吹雪さんが言い返す。嫌な予感がすると同時に二人の会話は段々ヒートアップし始めた。

 「だったらワタシと一緒にやればOKネ! センパイはいなくてもダイジョブよ?」
 「だったら貴女こそ遠慮していいのよ? 貴女、勉強苦手なんでしょ?」
 「shut up!!」
 「あら、貴女も五月蝿いわよ? 少しは静かにしなさいよ」

 このままでは拉致があかない。急いで二人を拓也から引き剥がして止める。

 「ちょっと二人とも!  喧嘩はあとでにしてよ。国王様の前なんだから。ねぇ薫くんもそう思うよね?」

 ちょっとでも頷いて欲しくて薫くんに同意を求める。しかし反応は薄い。

 「………」
 「薫くん?」
 「……ん? あぁそうだな……」

 再度声をかけると短い返事だけが帰って来た。それを聞いて王様は声を上げて笑う。

 「ははは……勇者達よ、よく来たな。まぁなんだ夕食も食べたことだ。紅茶の一杯でも飲んでいかんか?」
 「紅茶はいい。で、どこにいるんだ?」

 右手を上げて召使いさんを王様は呼ぶとすぐさま召使いさんとが入って来た。が、拓也くんはこれも要らないと突き返し場所を聞くととんでもない返事が返って来た。

 「いや、それが門限に引っかかったらしくてな、明日また来ると言って王都内の宿に泊まっているそうだ」
 「「「「はぁ?!」」」」
 「……ん?」

 あまりにも的外れな答えに薫くん以外全員が間抜けな声を出す。遅れて薫くんも反応をした。

 「なんでもきのこ狩りをしていたらこの城の門限を知らなかったらしくてな、到着が明日になったそうだ」
 「はぁ?! そいつ何考えてんだよ!!  魔獣が凶暴化して一刻も早く原因を突き止めなきゃいけないってのに呑気にきのこ狩りなんかしてんじゃねぇよ!! そんなことしてたら俺がほ―――いやなんでもない」
 「? まったくだな、しかしそれがあのヴェレンボーンという国の人間だからな。仕方ないと言えば仕方ない」

 理由を聞くとどうもこのお城の門限を知らなかったらしい。
 拓也くんの怒りがピークに達するのを見て王様はさらりと受け流すが拓也くんは納得していないらしく地団駄を踏む。

 「仕方ないじゃないだろ国王様! クソッ……明日のこのこと来たら俺がぶっ飛ばしてやる!!」
 「COOL! 拓也ガンバって!!」
 「ぶっ飛ばす……とは言い方が悪いけどこの場合は相手側に問題あるものね。私も力を貸すわよ拓也くん」
 「ちょっと拓也くんストップ!  あったこともない人に喧嘩を売っちゃダメでしょ。確かにその人もマイペースだけどそんなことしたら……」

 怒ったと思いきや拓也くんが物騒な話をし、佳奈ちゃんと吹雪さんが賛成したのを聞いて三人を止めに入るが六つの目に睨まれて言葉を飲み込んでしまった。

 「なんだよ美海、この場合は相手が悪いんだぞ? 俺が怒って何が悪いんだよ。どうせそんなマイペースなやつが強いとも思えないしもしかしたらそいつに習う事なんて一つも無いかもしれないぞ」
 「そうね、この世界の魔法っているのは英語の発音がわかっていれば大抵の魔法は使えるわ。拓也くんの言う通り本当に必要無いかもしれないわよ?」
 「そんな、吹雪さんまで……薫くんも何か言ってあげて!」

 そんな、確かに吹雪さんの言う通り私達は簡単な戦闘訓練の時に魔法を見せてもらったので英語の発音が大切だとわかってしまっている。
 いきなりそこまで言われると事実ではあるので言い返せない。駄目元で話を薫くんに投げかける。だが、

 「えっ……」
 「あら何か問題でも?」
 「い……いやなんでも無い」

 吹雪さんの声の圧力に負けた薫は縮こまってしまった。そしてその視線が私にも向く。

 「あらそう? ですってよ一条さん?」
 「えっ……あぁ、はぃ……」

 肯定しかできなかった。俯いていると拓也くんに思いっきり肩を揺さぶられる。

 「おいおい、美海は会ったこともないやつの心配なんかするのか?!」
 「いやそうじゃなくて……」
 「まあまあそう怒るでない拓也よ、美海は優しいのだ。そうすぐに問い詰めなくてもいいだろう」

 違うと言おうとするけど王様に宥められて拓也の気が少しだけ治る。

 「いやまぁそうだけどさあ……」
 「何か言いたいことがあるなら件の冒険者に話せば良かろう。なに、明日には来るのだそう待つことでもないだろう?」
 「分かったよ、悪かったな美海」

 弁解をしようとした拓也は言い終わる前に再び王様に宥められた。落ち着いたらしく頭を下げて謝ってくれた。

 「うううん、分かってくれればいいの」
 「十分分かったって、言いたいことがあるなら冒険者に言うさ、んでもって俺がぶっ飛ばしてやる!」
 「イェーイ!  拓也ガンバレ!!」
 「程々にね」



 へぇ?!!!! 違う!! そう言う意味じゃない!!!

 「いやそういう意味じゃないって言って……!」
 「頑張るぞ!!!「「エイ!  エイ!  オー!!!」」」「……」
 「ち、違うのに……!!」

 勝手に進められる話に私と薫くんだけ取り残されていく。違う!  だから冒険者さんを目の敵にするのはやめて!!    
 そう言ったが誰の耳にも届くことはなかった。






??????

 「ねぇそろそろリトライするべきじゃない?」
 「そうだなそうするか」
 「じゃあ明日にでも仕掛けてくるよ」
 「そう?じゃあ、お願い」
 「頼んだ」
 「了解」




****
 一方、その頃の神聖カルットハサーズ北部 にある私立冒険者ギルドでは

 「あ、やっば!  あの背の高いおじ様が付けてたカラコンどこに売ってるやつか聞くの忘れた!!」
 「「おじ様って誰だ?」」
 「ほらキマイラの依頼で会ったやつらがいただろ? あのあとその場の流れに乗っちゃったけど依頼成功の証拠取ってなくって戻ったらいなくなってた人達の中にのっぽのカラコン付けてたおじ様いたじゃん?」
 「あーでもあの人おじ様というよりどう見たって20代~30代じゃないか」
 「だよな伸さん、おじ様呼びは酷くね?」
 「おじ様の話じゃなくって私はカラコンの話をしてるんだよ!  あー聞いとけば良かった……待てよ、ここはメルヘンチックな世界で魔法なんてふざけたものがあるんだからあれもその類かもしれないし……もしかしたらこの世界のアイタトゥーかも……!あーやっぱり聞いとけば良かったーー!!」
 「タトゥー?!  まさか朝比奈さん目にタトゥー入れる気なのかよ」
 「稔の言う通りだ。あの人の目は多分色彩を魔法で弄ってるんだと思うぞ。だから目にタトゥーなんてやめとけ」
 「えぇ!  だってかっこいいじゃん。確かに目にタトゥーはちょっとないかもしれないけど私はやってみたいって考えてるから。
 うし、次にあのおじ様に会ったらどうやって目に色入れたのか聞いてみよう!」
 「「ダメだこりゃ」」
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