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第2章
名乗るんかい!
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「……そうか……時期に天罰は降るのか……
だが勇者は何をやってるんだ? アホか」
ほぼほぼこれまでの出来事を知ると茶髪の旋毛が見えるほど魔王は項垂れる。
連れてこられたのは温室だった。日が出ていないことで気温が低いこの国の宮殿には温室があった。まあ大きななガラスの鳥籠のような空間はガラスが割れないよう細心の注意を払って管理されているこの空間の作り手はストーブ16台の力だが。
「まあ向こうの国政もあるからな。ところで何故お前は戦を仕掛ける。南下政策でもして太陽の出る土地がいるか? 土地に困っているようには見えんがな」
苦味が強いハーブティーは日光不足のせいだろうか。しかしこれもこれでありなのだろう。
鼈甲色の取っ手が美しいティーカップを持ったまま白いクロスの先を見る。如何にもといった表情で目を逸らされる。周りの執事、給仕もだ。
余程浅ましい私恨があると見た。
「………よく知ってるな。流石創作神アリアス」
「まあな。でもそれはちょっと違うぞ」
「……は?」
「ほれ、早よ教えぬか」
急かすと白銀に輝く鎧を脱ぎ捨ててハーブティーを一気に飲み干す。
脂汗が滲み出ている以外よく似た目を睨むと口を開いた。
「―――
だってロレーヌがクソ王国の方が可愛い物があるって言うんだ。あと勇者って顔だけは良いと言ったから殺意が決意化した」
「完全に私恨だな」
「「「ごもっとも」」」
魔王の私情に従者はきっぱりと答えた。何をしているんだ暴君が。
視線が室温とは打って変わって冷ややかなものになるなか態度を取り繕った魔王は王の仮面を貼り付けて私を見つめる。
「……あーもう改まった態度取らなくてもいいか? これ以上はもう髪の毛が薄れそうだ」
「いいだろう。髪は大切にな」
「……なんか逆に怖くなってくる返答だな。で、さっきの言葉の真髄を教えてくれ」
ガマガエルのようになった魔王が赦しをこうので許した。不敬であれば自然と撥が当たるのだ。そこまでこだわらなくていいだろう。
食後のハーブティーを回しながら真っ直ぐ前を見ると一同の視線を感じた。なぜか新月が「ライトノベル的ラスボスの存在感を見せつけるがいいのだぁ~(バカボ●ボイス)」と頭の中で囁く。お前の趣味に私をのせるな。
だがまあ長い付き合いになることは分かっている。自己紹介ぐらいするか。
「私は―――
我は時と豊穣の二つを司るもの。
倫理の外部から傍観するものである。呼び方は様々だが神とも呼ばれるな」
「だ、だったら!」
「だが我はこの世界の神に在らず。アリアスは今我兄の側に控えておる。
我はかつて黄金時代を治めた王。ティーターンの王であり時と豊穣を司る神、全知元全能神クロノス。
今やアリアスは部下と言ってもいい」
昔のように上に立つものの言い方をすると魔王も含めて全てのもののものが傅いた。文字通り全てである。植物や温室に住み着く虫出さえ下をを向いて誠意を見せた。
虫はともかく植物も? 力加減を間違えたかと思ったら身体を巡る呪痕と後光(新月はそう呼んでいる)が眩く光り輝いた。後光は大きく伸びて温室からはみ出てガラスが割れた。
取り繕うのをやめて手を振ってすぐに戻す。魔族は全員例外無く屍蝋のように白かった。当たり前か、普通目の前に格上の相手がいたらこうなる。特に相手は私だ。
「く、クロノス! 物語にいる神じゃないか!」
「物語?」
「ああ、この世界で信仰するものはいないがアリアスが人に伝えた物語、確か『ギリシャ』の話だ。今でも童話として語り継がれている。
クロノスの記載は短いが」
目を泳がせた魔王の言葉に驚く。アリアスのやつ信仰集めに私達の世界の話を輸入したらしい。
効果は期待出来なかったようだが。しかしそんな話は聴いていない。そういえばアリアスはあった時からこちらを知っているような素振りだったな。これか、詰め寄りはしないが。
「それでこの後はどうするんだ?」
椅子に体を預けた砕けた口調で話す魔王。これが魔王か。まあいいが。
「そうだな……各国を回りつつ片割れを探す。あのあ……愚兄とプラスαを」
お尋ね者が詳細は話さない方がいいと前に新月から借りたライトノベル小説に書いてあったな。
「そうか……ならしばらくこの魔界に滞在したらどうだ?」
「何故だ?」
「目の前に神様がいたら誰で引き止めるだろう」
「そうか」
「そうだ」
あっさりと肯定された。そういうものなのか?
しかし番狂わせが起きたせいでこうなっているわけだ。強制突破は出来るが面倒なことはなるべく避けたい。
それに私単体で動くのと新月、ハリスのペアかツァスタバ、ロザリアントのペアが動いてくれた方がどうにかなる。あいつらの張り紙は私から見ても適当の一言で片付けられるからな。
それに私が一箇所に腰を据えていた方が向こうも見つけやすいだろう。
「対価は?」
「バレバレか」
ティースタンドに乗ったギモーヴを齧って白い海の先にいる魔王を見る。
いっそ清々しい程笑顔でホールドアップが見れた。手を下ろして身を乗り上げるように立った魔王は真顔で言い放つ。
「滞在時のみだいいのでこの国に平穏を……近年の魔獣の凶暴化が著しい。冒険者を当てがっているがそろそろ限界なんだ。
あのく……カルットハサーズに勇者が召喚されたらしいがあの国だ。期待はしていない。
出来ればこちらも召喚をしたいが異界の者を無理矢理呼び寄せるということにこの国も含めカルットハサーズ以外が難色を示している。魔方陣用意するだけでも浪費だからな。そんな金があるなら別に回して自国から勇者を探し出す」
もっともな意見だ。こちらは殿がしっかりとしていて助かる。だが、
「あまり贔屓をすると世界の均衡が崩落するぞ」
「ヴェレンボーンのように発展させてくれとは言わない。だが農民の無駄死を防ぎたい。本来であれば冒険者金を出しているから死人が出るなんてことは滅多に無い。しかし今じゃ食い止めるのに誠意杯で全ての農村にまで手が行き届いていないんだ。頼む」
魔王自ら頭を下げたことによりこの場にいた魔族全員が深々と頭を下げた。
―――頼まれ請われるのが神の諚である。まあ上乗せすればいいか。
「ならこちらもさらに条件を付けたさせてもらう。アリアスが信仰不足でアリの姿しかとれない。今は鳩に進化したが鳩止まりだ。祀ってやってくれ」
「対価が信仰か……む、難しい、いなぁ……は、鳩が進化することを望むぅ! ははは」
「は、はとぉ~……!」
「―――ププッ!」
「や、やめさな……モフォ!」
「あ、ありぃ!」
鳩、蟻に失笑される。アリアスお前哀れだな。
「―――ははは!!! ……はぁ、笑った笑った」
たっぷり時間をとって約十分、ここにいる全員が一度静かになって誰かが吹き出す。それにつられてまた全員で思い出し笑いのループ。
魔族にとっては『イエスキリストが本当はリアクション芸人を目指していた史実が判明した』というレベルらしい。
「そうそう神父がこの国からも勇者供と同行するやつが出て来ると特殊スキル【未来視】で見たそうだ。本当か?」
やっと収拾がつくと一番笑い上戸だった魔王が髪を跳ねさせながら私に質問をしてくる。
周りの給仕の召使いに「セバスティアン様カッコつけてももう遅いです」と言われて新月が使う『(´・ω・`)』という顔をしていた。
あー、それか。あまり私からは言いたくないな。
「それか。……まあ時期に分かるさ」
「なんか含みのある言い方だな。聞いているこっちの方が不安になるぞ」
じっとりと湿った目つきで睨む魔王が見えたが私は知らないふりをした。
実は新月にも言ってはいないものがいくつかある。まあなんとかなっていくからいいか。
****
ハリス視点
あーこの先すんごい心配。クロス様いないし新月さんあの状態だしアリアス様は死体のフリから動こうとしない。
もしかして俺が大黒柱しなきゃいけないのか?
無理。
大体俺に新月の手綱を握るだなんて巧妙な技出来るわけ……
『藁ふっかふか! 昨日の疲れがこれで取れますね。鳥の巣用の藁を貰えたことに感謝です!』
『わー凄い貢物! 新月くん喜んじゃう! しかも食料に宝石に寝袋完備! 嬉しいねー! いやっふー! (*´∇`*)』
「そこ!!! 真面目に今後のこと考えろ!!!」
『ウッス、サーセン』
『すみませんでした……』
投げ込まれた旅人用だというテントのような家の中でベットで飛び跳ねる呑気なアホ神が二匹。もう嫌だ。
村長の孫に新月さんがやらかした結果一度は村を追放されるかと思った。
でもそこは新月さんが有る事無い事混ぜ混ぜしてでっち上げ話とも言えるが事実とも言える大作話を披露して今はここにいる。
確か自分のことは喋りたくない面倒くさがり。でも実は神様が大切にしている神聖な武器である~とか、村長の子供であるおっさん獣が見たのが真の姿で~とかだった。
友人である創作神アリアスの頼みで友人である神様は勇者を見守るために拾い子で弟子とした俺、眷属二人を引き連れて密かに降臨した。なのに恩を仇で返したあのクソ王国。しかも勇者一行の一部を見殺すことも視野に入れた使い捨てとしていた。
そこで神様は勇者一行の使い捨てにされそうになった男女二人を元の世界に返した。
だがその事実を脚色したクソ王国は神様だとは知らずに国際指名手配。逃走中に神様は大事な武器と俺、眷属二人と世界中に散ることで追っ手の目を誤魔化した。その罰当たりを天罰で潰すために神様は今機会を伺っている。
という嘘と事実半々の話だった。
『俺や妹である神は人間以外の種族を迫害していたのを見た! 貴方方もあの神聖カルットハサーズの犠牲者は多かった筈だ。奴らの愚行を野放しにしておいていいのか?!!』
「「「違う―――!!!!」」」
『悪しき魂に鉄槌を下すことはこの国の精霊は容認していないのか!!!』
「「「違うーーー!!!!」」」
「精霊も正しき行いに罰は降らないと教えを説いている!」
『では皆の者見るがいい!! これこそが精霊を従えこの世界の神として君臨するアリアスだ!!!』
確かここで新月さんがアリアス様に魔力ぶち込んで大きくしてた。村長の家大破。でもそれ以上にアリアス様の姿に腰が引けてた。
でみんな拝み倒していた。アリアス様が倒れた重圧で爆風が吹いたけど会場はさらにヒートアップしてた。あのジンニーヤーさんのこともちょっと教えたらネームバリューで村全体が集まって来たし。あの人意外と神話では有名人だったんだなーって思った。この時頭の中でジンニーヤーさんとあのカエル頭の集団がピースしているのが想像出来た。あのカエル頭怖かったなー。
『今一度答えよ! アリアスや精霊を崇める君達が望むのは?!!』
「「「闇に葬られた同士達の魂に安らぎを! 生きている者達の生還!!!」」」
『ならばやつらの穢れた魂に与えるものはひとーつ!!!』
「「「神聖カルットハサーズに罰を!!!」」」
なんていうエピソードがありました。なんでこういう時だけ新月さんって上手く人を動かせるんですかね? いや普通に凄いと思いましたよ? 冒頭のベットで飛び跳ねた二人が天井に足形の穴を開けるまでは。
『そう悲観的になってても進むしかなんやで工●! 始まりは待ってくれないだ! 決意はここにあるのさイッツマイソウルに!』
「これっぽっちも理解出来ねぇ」
『アウチ!』
空中で二回転横捻りを決めた白い三つ編みを鷲掴みしてチョップをお見舞いする。よし、見事ベットに沈んでいった。もう少し今の状況を汲み取ればこんなことしなかったのになと飛び出た尻を睨んでベットに入る。
「アリアス様も新月さんと一緒に遊んでないで今後を考えた方がいいですよ! なに一緒に遊んでるんですか!」
『いや~クロス様とは遠くても生存が確認出来たからどうにかなる。というか私よりも強いから大丈夫っていう謎の自信があったので」
「え!!! 大丈夫なんですか???!!!!」
愚痴をアリアス様にぶつけていた俺はさらりとした爆弾発言に飛び起きた。外から夜だぞ! という怒鳴り声が聞こえる。やべっ、そういえば今真夜中だ!
『ええ、新月様は言わずとも分かっていらっしゃったようです。しかし側にはいられない。だからああやって無理に騒いで気分を持ち上げていらっしゃるのです。ご理解を』
大量の藁の寝床で寝ぼけ眼で説明したアリアス様はそのまま夢の世界へと旅立っていった。俺は言われた言葉に目を見開いた。二人とも返事をしなくなったので少し頭に手を当てて考えよう。
確かに新月さんではどうしようも出来ない。今の戦争間近では動く手段すらない。それはクロス様も同じ……いや俺達以上に身動きが取れない筈だ。この世界にいる間はずっと死刑台に首輪で繋がれている状況なのにすぐ逢いに行けないのは辛いだろう。
「―――明日からは少し優しくしてあげよう」
ポツリと独り言を吐いて掛け布団を被り直して横になる。
でも天井の穴は自分らでどうにかして貰うからな!
だが勇者は何をやってるんだ? アホか」
ほぼほぼこれまでの出来事を知ると茶髪の旋毛が見えるほど魔王は項垂れる。
連れてこられたのは温室だった。日が出ていないことで気温が低いこの国の宮殿には温室があった。まあ大きななガラスの鳥籠のような空間はガラスが割れないよう細心の注意を払って管理されているこの空間の作り手はストーブ16台の力だが。
「まあ向こうの国政もあるからな。ところで何故お前は戦を仕掛ける。南下政策でもして太陽の出る土地がいるか? 土地に困っているようには見えんがな」
苦味が強いハーブティーは日光不足のせいだろうか。しかしこれもこれでありなのだろう。
鼈甲色の取っ手が美しいティーカップを持ったまま白いクロスの先を見る。如何にもといった表情で目を逸らされる。周りの執事、給仕もだ。
余程浅ましい私恨があると見た。
「………よく知ってるな。流石創作神アリアス」
「まあな。でもそれはちょっと違うぞ」
「……は?」
「ほれ、早よ教えぬか」
急かすと白銀に輝く鎧を脱ぎ捨ててハーブティーを一気に飲み干す。
脂汗が滲み出ている以外よく似た目を睨むと口を開いた。
「―――
だってロレーヌがクソ王国の方が可愛い物があるって言うんだ。あと勇者って顔だけは良いと言ったから殺意が決意化した」
「完全に私恨だな」
「「「ごもっとも」」」
魔王の私情に従者はきっぱりと答えた。何をしているんだ暴君が。
視線が室温とは打って変わって冷ややかなものになるなか態度を取り繕った魔王は王の仮面を貼り付けて私を見つめる。
「……あーもう改まった態度取らなくてもいいか? これ以上はもう髪の毛が薄れそうだ」
「いいだろう。髪は大切にな」
「……なんか逆に怖くなってくる返答だな。で、さっきの言葉の真髄を教えてくれ」
ガマガエルのようになった魔王が赦しをこうので許した。不敬であれば自然と撥が当たるのだ。そこまでこだわらなくていいだろう。
食後のハーブティーを回しながら真っ直ぐ前を見ると一同の視線を感じた。なぜか新月が「ライトノベル的ラスボスの存在感を見せつけるがいいのだぁ~(バカボ●ボイス)」と頭の中で囁く。お前の趣味に私をのせるな。
だがまあ長い付き合いになることは分かっている。自己紹介ぐらいするか。
「私は―――
我は時と豊穣の二つを司るもの。
倫理の外部から傍観するものである。呼び方は様々だが神とも呼ばれるな」
「だ、だったら!」
「だが我はこの世界の神に在らず。アリアスは今我兄の側に控えておる。
我はかつて黄金時代を治めた王。ティーターンの王であり時と豊穣を司る神、全知元全能神クロノス。
今やアリアスは部下と言ってもいい」
昔のように上に立つものの言い方をすると魔王も含めて全てのもののものが傅いた。文字通り全てである。植物や温室に住み着く虫出さえ下をを向いて誠意を見せた。
虫はともかく植物も? 力加減を間違えたかと思ったら身体を巡る呪痕と後光(新月はそう呼んでいる)が眩く光り輝いた。後光は大きく伸びて温室からはみ出てガラスが割れた。
取り繕うのをやめて手を振ってすぐに戻す。魔族は全員例外無く屍蝋のように白かった。当たり前か、普通目の前に格上の相手がいたらこうなる。特に相手は私だ。
「く、クロノス! 物語にいる神じゃないか!」
「物語?」
「ああ、この世界で信仰するものはいないがアリアスが人に伝えた物語、確か『ギリシャ』の話だ。今でも童話として語り継がれている。
クロノスの記載は短いが」
目を泳がせた魔王の言葉に驚く。アリアスのやつ信仰集めに私達の世界の話を輸入したらしい。
効果は期待出来なかったようだが。しかしそんな話は聴いていない。そういえばアリアスはあった時からこちらを知っているような素振りだったな。これか、詰め寄りはしないが。
「それでこの後はどうするんだ?」
椅子に体を預けた砕けた口調で話す魔王。これが魔王か。まあいいが。
「そうだな……各国を回りつつ片割れを探す。あのあ……愚兄とプラスαを」
お尋ね者が詳細は話さない方がいいと前に新月から借りたライトノベル小説に書いてあったな。
「そうか……ならしばらくこの魔界に滞在したらどうだ?」
「何故だ?」
「目の前に神様がいたら誰で引き止めるだろう」
「そうか」
「そうだ」
あっさりと肯定された。そういうものなのか?
しかし番狂わせが起きたせいでこうなっているわけだ。強制突破は出来るが面倒なことはなるべく避けたい。
それに私単体で動くのと新月、ハリスのペアかツァスタバ、ロザリアントのペアが動いてくれた方がどうにかなる。あいつらの張り紙は私から見ても適当の一言で片付けられるからな。
それに私が一箇所に腰を据えていた方が向こうも見つけやすいだろう。
「対価は?」
「バレバレか」
ティースタンドに乗ったギモーヴを齧って白い海の先にいる魔王を見る。
いっそ清々しい程笑顔でホールドアップが見れた。手を下ろして身を乗り上げるように立った魔王は真顔で言い放つ。
「滞在時のみだいいのでこの国に平穏を……近年の魔獣の凶暴化が著しい。冒険者を当てがっているがそろそろ限界なんだ。
あのく……カルットハサーズに勇者が召喚されたらしいがあの国だ。期待はしていない。
出来ればこちらも召喚をしたいが異界の者を無理矢理呼び寄せるということにこの国も含めカルットハサーズ以外が難色を示している。魔方陣用意するだけでも浪費だからな。そんな金があるなら別に回して自国から勇者を探し出す」
もっともな意見だ。こちらは殿がしっかりとしていて助かる。だが、
「あまり贔屓をすると世界の均衡が崩落するぞ」
「ヴェレンボーンのように発展させてくれとは言わない。だが農民の無駄死を防ぎたい。本来であれば冒険者金を出しているから死人が出るなんてことは滅多に無い。しかし今じゃ食い止めるのに誠意杯で全ての農村にまで手が行き届いていないんだ。頼む」
魔王自ら頭を下げたことによりこの場にいた魔族全員が深々と頭を下げた。
―――頼まれ請われるのが神の諚である。まあ上乗せすればいいか。
「ならこちらもさらに条件を付けたさせてもらう。アリアスが信仰不足でアリの姿しかとれない。今は鳩に進化したが鳩止まりだ。祀ってやってくれ」
「対価が信仰か……む、難しい、いなぁ……は、鳩が進化することを望むぅ! ははは」
「は、はとぉ~……!」
「―――ププッ!」
「や、やめさな……モフォ!」
「あ、ありぃ!」
鳩、蟻に失笑される。アリアスお前哀れだな。
「―――ははは!!! ……はぁ、笑った笑った」
たっぷり時間をとって約十分、ここにいる全員が一度静かになって誰かが吹き出す。それにつられてまた全員で思い出し笑いのループ。
魔族にとっては『イエスキリストが本当はリアクション芸人を目指していた史実が判明した』というレベルらしい。
「そうそう神父がこの国からも勇者供と同行するやつが出て来ると特殊スキル【未来視】で見たそうだ。本当か?」
やっと収拾がつくと一番笑い上戸だった魔王が髪を跳ねさせながら私に質問をしてくる。
周りの給仕の召使いに「セバスティアン様カッコつけてももう遅いです」と言われて新月が使う『(´・ω・`)』という顔をしていた。
あー、それか。あまり私からは言いたくないな。
「それか。……まあ時期に分かるさ」
「なんか含みのある言い方だな。聞いているこっちの方が不安になるぞ」
じっとりと湿った目つきで睨む魔王が見えたが私は知らないふりをした。
実は新月にも言ってはいないものがいくつかある。まあなんとかなっていくからいいか。
****
ハリス視点
あーこの先すんごい心配。クロス様いないし新月さんあの状態だしアリアス様は死体のフリから動こうとしない。
もしかして俺が大黒柱しなきゃいけないのか?
無理。
大体俺に新月の手綱を握るだなんて巧妙な技出来るわけ……
『藁ふっかふか! 昨日の疲れがこれで取れますね。鳥の巣用の藁を貰えたことに感謝です!』
『わー凄い貢物! 新月くん喜んじゃう! しかも食料に宝石に寝袋完備! 嬉しいねー! いやっふー! (*´∇`*)』
「そこ!!! 真面目に今後のこと考えろ!!!」
『ウッス、サーセン』
『すみませんでした……』
投げ込まれた旅人用だというテントのような家の中でベットで飛び跳ねる呑気なアホ神が二匹。もう嫌だ。
村長の孫に新月さんがやらかした結果一度は村を追放されるかと思った。
でもそこは新月さんが有る事無い事混ぜ混ぜしてでっち上げ話とも言えるが事実とも言える大作話を披露して今はここにいる。
確か自分のことは喋りたくない面倒くさがり。でも実は神様が大切にしている神聖な武器である~とか、村長の子供であるおっさん獣が見たのが真の姿で~とかだった。
友人である創作神アリアスの頼みで友人である神様は勇者を見守るために拾い子で弟子とした俺、眷属二人を引き連れて密かに降臨した。なのに恩を仇で返したあのクソ王国。しかも勇者一行の一部を見殺すことも視野に入れた使い捨てとしていた。
そこで神様は勇者一行の使い捨てにされそうになった男女二人を元の世界に返した。
だがその事実を脚色したクソ王国は神様だとは知らずに国際指名手配。逃走中に神様は大事な武器と俺、眷属二人と世界中に散ることで追っ手の目を誤魔化した。その罰当たりを天罰で潰すために神様は今機会を伺っている。
という嘘と事実半々の話だった。
『俺や妹である神は人間以外の種族を迫害していたのを見た! 貴方方もあの神聖カルットハサーズの犠牲者は多かった筈だ。奴らの愚行を野放しにしておいていいのか?!!』
「「「違う―――!!!!」」」
『悪しき魂に鉄槌を下すことはこの国の精霊は容認していないのか!!!』
「「「違うーーー!!!!」」」
「精霊も正しき行いに罰は降らないと教えを説いている!」
『では皆の者見るがいい!! これこそが精霊を従えこの世界の神として君臨するアリアスだ!!!』
確かここで新月さんがアリアス様に魔力ぶち込んで大きくしてた。村長の家大破。でもそれ以上にアリアス様の姿に腰が引けてた。
でみんな拝み倒していた。アリアス様が倒れた重圧で爆風が吹いたけど会場はさらにヒートアップしてた。あのジンニーヤーさんのこともちょっと教えたらネームバリューで村全体が集まって来たし。あの人意外と神話では有名人だったんだなーって思った。この時頭の中でジンニーヤーさんとあのカエル頭の集団がピースしているのが想像出来た。あのカエル頭怖かったなー。
『今一度答えよ! アリアスや精霊を崇める君達が望むのは?!!』
「「「闇に葬られた同士達の魂に安らぎを! 生きている者達の生還!!!」」」
『ならばやつらの穢れた魂に与えるものはひとーつ!!!』
「「「神聖カルットハサーズに罰を!!!」」」
なんていうエピソードがありました。なんでこういう時だけ新月さんって上手く人を動かせるんですかね? いや普通に凄いと思いましたよ? 冒頭のベットで飛び跳ねた二人が天井に足形の穴を開けるまでは。
『そう悲観的になってても進むしかなんやで工●! 始まりは待ってくれないだ! 決意はここにあるのさイッツマイソウルに!』
「これっぽっちも理解出来ねぇ」
『アウチ!』
空中で二回転横捻りを決めた白い三つ編みを鷲掴みしてチョップをお見舞いする。よし、見事ベットに沈んでいった。もう少し今の状況を汲み取ればこんなことしなかったのになと飛び出た尻を睨んでベットに入る。
「アリアス様も新月さんと一緒に遊んでないで今後を考えた方がいいですよ! なに一緒に遊んでるんですか!」
『いや~クロス様とは遠くても生存が確認出来たからどうにかなる。というか私よりも強いから大丈夫っていう謎の自信があったので」
「え!!! 大丈夫なんですか???!!!!」
愚痴をアリアス様にぶつけていた俺はさらりとした爆弾発言に飛び起きた。外から夜だぞ! という怒鳴り声が聞こえる。やべっ、そういえば今真夜中だ!
『ええ、新月様は言わずとも分かっていらっしゃったようです。しかし側にはいられない。だからああやって無理に騒いで気分を持ち上げていらっしゃるのです。ご理解を』
大量の藁の寝床で寝ぼけ眼で説明したアリアス様はそのまま夢の世界へと旅立っていった。俺は言われた言葉に目を見開いた。二人とも返事をしなくなったので少し頭に手を当てて考えよう。
確かに新月さんではどうしようも出来ない。今の戦争間近では動く手段すらない。それはクロス様も同じ……いや俺達以上に身動きが取れない筈だ。この世界にいる間はずっと死刑台に首輪で繋がれている状況なのにすぐ逢いに行けないのは辛いだろう。
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婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
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◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
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