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《 盛り塩団地のひろきくん 》
1 オカルト趣味の女とその手下
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「ヨシさん、K県の了栗団地って知ってる?」
「心霊スポットの?」
「それ。変な写真がネットで一人歩きしてるとこ」
「それで、いつ車を出せばいいんです?」
「話が早くて助かる~!」
座布団の上であぐらをかいたまま、愛用のノートパソコンを開いた。マップに目的地の名前を入力する。
私の名前は戸羽 心里、21歳。不真面目な大学生であり、ネットでほどほどにフォロワーがいる怪談収集家だ。
「心里さん、女の子なんだからあぐらはやめたほうが」
「ズボンだからいーいの」
座卓を挟んだ向こう側で話を聞いてくれているのは下哭 善太郎さん。46歳。和装がよく似合う、品の良い老け方の見本みたいなナイスミドル。
私はわけあってヨシさんの立派な和風邸宅に下宿している。つまり大家さんであり、怪談収集の助手だ。彼の仕事は物書きで、私の活動からインスピレーションが得られるらしく色々と融通してくれる。
「出発は明日! 荷物はもうまとめてある!」
エンターを押すと、現在地から了栗団地までの運転ルートが表示される。まあまあ遠いが、こんなのは慣れっこだ(ヨシさんが)。
ルート案内のURLをヨシさんのスマホへ送信した。
「荷物? いつもスマホとモバイルバッテリーがあればいいって言ってるのに、今回は何かいるんですか?」
「うん。寝袋とかカップ麺とか。ちょっと前から団地に住んでる人とSNSで繋がってるんだけど、一泊させてくれることになったの。その人はしばらく友達の家に泊まるんだって」
「……なぜです?」
「ひろきくんに祟られたから。──了栗団地のオカルト、《ひろきくん》。写真で有名になったアレ。泊まればさ、私も体験できるかも。そんなのぜ~ったい面白いでしょ?」
「あなたが面白いなら、あなたは面白いでしょうねぇ」
「ヒヒヒ!」
ヨシさんは呆れ顔をしながらも、私の無茶を止めない。そういう、尊重してくれるところがありがたいね。
「あ、女の子の部屋だから、ヨシさんは入室NGです」
「はいはい。僕も仕事がありますから、送ったら一旦帰ります。最終日に迎えに行きますね」
心配する様子がないのは、彼がオカルトを信じていないからではない。私の幸運を信じているのだ。
「心霊スポットの?」
「それ。変な写真がネットで一人歩きしてるとこ」
「それで、いつ車を出せばいいんです?」
「話が早くて助かる~!」
座布団の上であぐらをかいたまま、愛用のノートパソコンを開いた。マップに目的地の名前を入力する。
私の名前は戸羽 心里、21歳。不真面目な大学生であり、ネットでほどほどにフォロワーがいる怪談収集家だ。
「心里さん、女の子なんだからあぐらはやめたほうが」
「ズボンだからいーいの」
座卓を挟んだ向こう側で話を聞いてくれているのは下哭 善太郎さん。46歳。和装がよく似合う、品の良い老け方の見本みたいなナイスミドル。
私はわけあってヨシさんの立派な和風邸宅に下宿している。つまり大家さんであり、怪談収集の助手だ。彼の仕事は物書きで、私の活動からインスピレーションが得られるらしく色々と融通してくれる。
「出発は明日! 荷物はもうまとめてある!」
エンターを押すと、現在地から了栗団地までの運転ルートが表示される。まあまあ遠いが、こんなのは慣れっこだ(ヨシさんが)。
ルート案内のURLをヨシさんのスマホへ送信した。
「荷物? いつもスマホとモバイルバッテリーがあればいいって言ってるのに、今回は何かいるんですか?」
「うん。寝袋とかカップ麺とか。ちょっと前から団地に住んでる人とSNSで繋がってるんだけど、一泊させてくれることになったの。その人はしばらく友達の家に泊まるんだって」
「……なぜです?」
「ひろきくんに祟られたから。──了栗団地のオカルト、《ひろきくん》。写真で有名になったアレ。泊まればさ、私も体験できるかも。そんなのぜ~ったい面白いでしょ?」
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「ヒヒヒ!」
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「あ、女の子の部屋だから、ヨシさんは入室NGです」
「はいはい。僕も仕事がありますから、送ったら一旦帰ります。最終日に迎えに行きますね」
心配する様子がないのは、彼がオカルトを信じていないからではない。私の幸運を信じているのだ。
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