死にたがりオーディション

本音云海

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死にたがりオーディション

始動

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オレの名前は月鎖兎馬(ツキクサ トウマ)
どこにもいる普通の高校生だ。

…いやオレの場合は一般の、普通以下かな。

男子高校生にしては低い身長で158㎝しかないし、体力的にも圧倒的に他の男子より身体も弱かった。
オマケに頭もさほど良くないときた。

だからこそ、オレは格好の的だったんだ。
…単にいじめやすいという理由で学校ではいつもいじめられていた。

毎日毎日、影で陰口を言われるがままだ。
もちろん学校には友達なんて呼べる人はいなかった。


「はぁ…今日もつまんなかったな…」


学校はつまらない。
そりゃあこんな毎日を過ごしているんだから、楽しいわけないよね。
最初は嫌で嫌で仕方なくて、学校なんて行きたくなかったけど…今は意外とそうでもないんだ。

こんなオレでも密かに楽しいと思えることが出来たんだよ。



「ーあ、兎馬くん!」

「ごめん、待った?」

「ううん、じゃあいこっか」

「うん!」


学校の校門から出ると、彼がいつものようにオレを待っていてくれた。

そう、これがオレの楽しみの一つ。

彼…入原終夜(イリハラ シュウヤ)くんとは、塾で知り合った。
学校は違うけど、少しずつ話していくうちに気があって、今となってはこうして一緒に塾へ行くくらい仲良くなった。


「ごめんね、終夜くん。いつも迎えに来てもらっちゃって」

「え、いいよそんなの。僕が好きで来てるだけだから」

「そう?ならいいんだけど」

「うん!だって、兎馬くんは大事な友達だから…これくらい全然平気だよ」


そう言って、終夜くんは笑う。

ほんと…終夜くんは優しい。
笑うとふにゃっとした顔になるところとか、男のオレから見ても可愛いなって思う。

別にオレはソッチのけがあるわけじゃないけど、唯一出来た大切な友達だからこそ、余計にこんなことを思うのかもしれない。



「?どうしたの…?なんか顔、赤いけど…」

「別に何も。それよりもさ、終夜くん…なんか元気ない?」

「え…そう…かな?」

「いやオレの気のせいだったらいいんだけど…無理して笑ってるように見えたから…」

「…」


オレがそういうと終夜くんは俯いて、そのまま黙り込んでしまった。


「えと…無理に言わなくてもいいから。オレも…終夜くんの気持ち、分からないわけじゃないから…」


そう、学校で上手くいっていないのはオレだけじゃない。

それは終夜くんも一緒だった。

彼もまた学校でいじめられていた。

しかも、そのいじめは単なる陰口だけでないらしくて…詳しい内容はまだ聞いてないから分からないんだけど相当酷いらしい。


「終夜くん…?」

「…」


何故か終夜くんは黙ったまま、その場から動こうとはしなかった。



「ご、ごめん…余計なこと言っちゃったね。ほら早く行かないと塾に遅刻しちゃうよ?」


こういうところが多分、オレがいじめられる原因の一つなのかもしれない。

無闇に聞いていい話でもないってことくらいちょっと考えれば分かるはずなのに、どうしてオレはこうも無神経なんだろうか。

とにかく、今のオレに出来ることは今の話の流れを変えるくらいだ。

そ、そうだ。
せめて塾に着くまでの間に楽しい話でもしたら、終夜くんの気を紛らわすことくらい出来るかも。


「あ、そだ。せっかくだしアニメの話とかする?」


オレはさっきの話をなかったようにするかのようにするべく出来るだけ明るく、終夜くんに話しかけた。


「………兎馬くん」


オレの気持ちが届いたのか、終夜くんはやっと答えてくれた。


…けど、その後に続く言葉はオレの思い描いた答えとは全く違っていた。









「………………あのさ、死にたがりオーディションって知ってる?」
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