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死にたがりオーディション
衝撃
しおりを挟む…そうだ。
どうしてオレはこんな当たり前のことに気づかなかったんだろう。
死にたがりオーディションなんて、そんな大それた名前ばかり気にして肝心なことを忘れていた。
重要なのは、名前なんかじゃない。
「…知りたい?」
「……当たり前だよ。オーディションっていうからには、その先に必ず何かあるものでしょ…?」
終夜くんは絶えず笑っている。
…なにが、そんなにおかしいんだろうか。
「…ごめん。兎馬くんが心配してくれてるのはわかってるんだけど…つい…ふふっ…」
「…もうっ!ついじゃないよ!一体、オレがどんな気持ちで…!!」
「うん…知ってるよ。なんたって親友だもん」
「…っ…」
…つい、黙ってしまった。
どうやら僕は終夜くんの親友という言葉に弱いらしい。
「…あのね、その資料の一番最後のページを見てみてよ」
「え、でもこういうのは普通順番ずつ…ッ」
「いいからいいから」
「ちょっ…!」
終夜くんに急かされて、一気に最後のページ…五ページ目を開く。
一気に開いたおかげか、そのページは見開きになっていることが分かった。
中央には【合格後】の文字。
…そして、その下には、こうつづられていた。
【合格後】
私達マネージメントのもとで、合格者全員の人生の成功を約束する。
「…え?」
そう、たったこれだけの記載だった。
わざわざ見開きにまでして、書くことなんだろうか。
…いや、それよりも、この人生の成功って…
「あ、あの…終夜くん?」
「ん?」
「その…これはどういう…」
もはや理解の域を超えていた。
ただただ、意味が分からない。
人生の成功?
なんだよそれ、いくら馬鹿なオレだってこんなのに騙されるわけがない。
「?どうって?」
「だ、だって、いくらなんでもこんなの明らかに詐欺じゃないか!」
「え、どうしたの急に…」
「どうしたのじゃないって!いくら終夜くんが優しくてお人好しだとしても、こんなのに騙されちゃ駄目だよ!!」
「そ、そんな…!僕はべつに騙されてなんかないよ…!」
珍しく終夜くんが声を上げる。
ああもう…ほんっとはこんなこと言いたくないけど、終夜くんを止めるにはこの方法しかない…っ!
「…ああもう!!そんなに言うなら、この資料、終夜くんのお父さんとお母さんに見せるからね!!」
「…僕のお父さんとお母さん?」
「そう!いくらなんでも嫌でしょ?両親にこんなオーディションを受けようと思ってるなんてバレたくないよね?」
なんたって、最初の応募資格が【死にたいって思ってる人】なんだもん。
普通こんなの見たら、親なら尚更オレ以上に止めるはずだ。
…だけど、終夜くんの口から出た言葉は思いがけない台詞だった。
「それは無理だよ」
「え、無理って?何でなの」
「だって、僕のお父さんとお母さん…ついさっき、死んだから。」
「……は、…?」
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