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死にたがりオーディション
目的
しおりを挟む「ね?だから初めからそんなに心配する必要はなかったんだよ」
あっけらかんとそう答える。
それも、笑顔でそう答えていた。
…どうして?
資料も資料でおかしいところが沢山あるのに、どうして終夜くんはそのことに何一つ疑問を抱かないんだ…?
「…大丈夫?顔色悪いよ…?」
「べつに…平気…っ」
いつのまにか空になったオレンジジュースを手に取る。
オレは空っぽのままストローですすった。
最初は単なる緊張だったのに…今はとてもじゃないが、緊張なんて言葉に済まされるものではなかった。
…今はただ、平静を装うのに精一杯だった。
「…写真、そんなに気持ち悪かったの?」
「……ちがう…ッ…」
あえて、ちがうと答えた。
それ、だけじゃない。
オレからしたら、今の終夜くんの方が何よりも気持ち悪いと思った。
写真だけじゃない。
資料だけじゃない。
終夜くんの今までの言動、すべてにおいて気持ち悪かった。
それでもまだ終夜くんを嫌いになれないのは、やっぱり親友だと思っているからなんだろうね。
「…でも、その様子だと、もうこれ以上話出来そうにないよね…?」
「話…?話なら散々したじゃない…。これ以上、何を話すって言うのさ…」
「え、まだ本題に入ってないんだけど…」
「…本題?なにそれ…」
「だから、今日の目的だよ」
「?目的ってオーディションの話でしょ?」
「それは、あくまで前置きだよ。ただ本当に話するだけなら、わざわざ家に呼んだりしないよ」
「…やけに刺のある言い方だね」
「あ…ち、違う!そういう意味じゃなくて…。え、えっと…」
「?」
なんだろう?言いにくい話?
…でも、今更言いにくい話なんてあるんだろうか?
「なに?」
「あ、あのね。ここまで話しちゃったから、この際言うんだけど…実は兎馬くんにお願いがあるんだ」
「お、お願い?」
「う、うん!兎馬くんにも、このオーディションを受けて欲しいんだっ!!」
「…え?」
…受ける?オレが…?
「あ、もちろん僕は受けるよ!なんたって、資料請求までしたんだもんね!だから、一緒に受けてみようよ!」
終夜くんは何故か興奮気味だった。
…ああ、そっか。これはオーディションだっけ。
オーディションってことは…資料請求だけで終わるわけじゃない。
受けてこそ、始まる
それが、オーディション…。
「終夜くん?聞いてる?」
「え!あっ…」
どうしよう、なんかもう頭がぐちゃぐちゃで何も考えられない。
大体なんでオレにこんなこと言うんだろう。
さっき、散々巻き込みたくないって…。
昨日だって、泣きながら言っていたのに。
「…ね?終夜くんは僕が心配なんでしょ?心配なんだったら…一緒に受けてくれるよね?」
「ーーー!!」
終夜くんの顔がグッと近付いた。
その瞬間、ぞわりとした悪寒が背筋をなぞった。
…心配。たしかに、オレはそう言った。…けど。
「…や、やめてよッ!!」
オレは思わず突き飛ばした。
反射的だった為、思いっきり突き飛ばしてしまったせいか終夜くんは部屋のドア付近でもたれかかるようになっていた。
「ご、ごめん…!!」
無意識だったとはいえ、突き飛ばすつもりはなかったのに…ッ
慌てて終夜くんの元に駆け寄った。
「だ、大丈夫…?」
すかさず、手を伸ばす。
けど、手を取ってはくれなかった。
「…………平気。慣れてるから」
…慣れている。つまり、こういうことも日頃からあったということだ。
珍しく声に怒気があるように聞こえた。
怒っているんだろうか…。
「あ、あの…終夜くん?」
おそるおそる声を掛ける。
…言いにくいけど、今のうちにハッキリと断らなきゃ。
「なに?」
「…ご、ごめん…!!悪いけどオレは…受けるつもりはないから!」
ハッキリと言い切った。
…大丈夫だよ、いくら終夜くんでもここまで言えば分かってくれるはずーー
「ーダメ」
だけど、そんな願いも終夜くんには届かなかった。
オレと同じく、終夜くんまでもがハッキリとそう言い切った。
「な、何で…!!?」
当然の疑問だった。
何で、どうして。
「……ダメ、だよ…。だって、親友でしょ?僕たち…」
終夜くんはそういうと、ゆっくりと立ち上がってドア付近に手を伸ばしていた。
「ちょ…ちょっと…何、してんの…?」
「ん…?別に何もしてないよ…?」
「じゃあ…その手は何ーー」
ーその時だった。
カチャリという小さな音が聞こえた。
「しゅ、終夜くん…今、なにしたの…?」
ま、まさか…。
「ただ…鍵を掛けただけだよ」
さも当然のように、終夜くんはそう言った。
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