追放された俺は逆行転生した〜TS吸血姫は文化を牛耳る〜

石化

文字の大きさ
35 / 49
第1章至る平安

後始末

しおりを挟む
酒呑童子が死んでてんやわんやしている邸宅。
その中庭で、源頼光と、夜。そして、この前であった老人の中でも一番身分が高そうだった男が顔を付き合わせていた。

「⋯⋯。私の筋書きがめちゃくちゃになったんだが。」
「そうだ、君—。応神天皇でしょ。久しぶりだね。なんで神になってるの?」
「やりにくいことこの上ないわ!今は八幡さまと呼んでくれ。形式だけでも⋯⋯、な。」
「仕方ないなあ。私は優しいからね。何か事情があるんでしょ。」
「八幡さま?」
「ああ、私が八幡神だ。こいつの言うことは気にしないでほしい。」
「なんでよどう考えても応神天皇じゃん。毎年お金ありがとーね!」
「頭がいたい⋯⋯。なんで酒呑童子と正面から戦って叩き伏せてるんだこの規格外は⋯⋯。」
「褒めてるー?ありがとー!」

夜は、久々に血を浴びるほどに飲んで興奮している。
一応女言葉は戻ってきたが、性格的な緩みは隠せない。

「本来なら、寝て体が動かなくなった酒呑童子を殺してもらうつもりだったのだが⋯⋯。まあ、結果は同じだから良いか。私の役割の存在理由が問われるな⋯⋯。」

「どうしたどうしたー? 元気ないぞー応神くん!」

「だからその名前で呼ばないでくれ!」

嫌がる八幡神の頭を撫でる夜。
それでも振り払えないあたり、明確な力関係がうかがえる。

「⋯⋯、あの、夜は、妖怪なのか?」

「んー?言ってなかったけ?まあ、私は人を食べないし、無害な妖怪だから気にしないで。」

夜はひらひらと手を振った。

「八幡さまが認めているとはいえ、俺は魔に連なるものを許せない。」

だが、そのおちゃらけた雰囲気は、頼光の態度によって霧散した。
腰刀の鯉口を切って、頼光は夜に敵意に満ちた視線を送る。

「へーえ。やるの?」

「ああ。」

「夜!頼光を殺すのはダメだからな!」

「わかってますよ応神くん。私も疲れましたし、そんな余裕ないですって。」

「そうか⋯⋯。ならいい。」

老人は疲れたようで引き下がった。

「おしゃべりとは随分と余裕だな。」

抜刀した頼光の刀が夜へと襲い掛かる。

「へえ。滅魔の剣か。大層なものを持ってるね。」

「少しでも触れたら終わりだ。」

「でも、当たると思う?式神形代!」

夜の求めに従って、紙の式神が、頼光の刀にまとわりついた。
そのまま刃の部分を完全に覆ってしまう。
もうまともに切るのは難しいだろう。

「卑怯な!」

「いやいや一撃必殺を持ってる方が卑怯でしょうよ。」

「抜かせ。」

「⋯⋯うーん。相手してもいいけど、疲れてるんだよねえ。また今度でいい?」

「は?俺が見逃すとでも?」

「陰陽術はすごいよ?」

夜の周りを紙吹雪が取り巻いていく。

これは夜が晴明と対戦した時に、敗因となった技だ。

彼女は、無事にこの技を習得した。
一度その力を知ってしまったからこそ、熱心に習得に励んだのだ。

「転移。」

彼女の姿がその場所から消える。


「どこに行った!」

「じゃあね。私は、あなたのこと、結構好きだよ?」

置き土産のように夜の声が木霊する。

それは四方八方から響いてくるようで捉えどころがなく、頼光に、夜が逃げてしまったことを知らせていた。

さらわれた者たちを集めることに成功したと言う報告を聞き、頼光は一旦夜のことは後回しにすることにした。

彼女らを庇護者の元に送り、天皇に酒呑童子の首印を渡す。その仕事を終える方が大事だ。
なぜか八幡さまはいつの間にか消えいていた。
随分威厳のない八幡さまで、本当に武家の守護神として尊敬していてもいいのか少し疑問に思ってしまったが、気のせいだろう。あの神酒の効果は、うまくハマれば絶大だったはずだ。夜さえいなければ八幡さまの加護に絶大な感謝を抱いていたことだろう。

「夜、か⋯⋯。」

彼女に対する感情は、複雑だ。仲間であり、敵でもある。様々な顔があってとらえどころがない。
だが、何はともあれ妖怪なのは確かだ。
今度、京の街で見かけることがあれば絶対に切ってやる。
頼光はそう心に誓うのだった。



「師匠—!酒呑童子一人で倒したのに、何もなかったんですけど!なんですかあの頼光って人!」

「あー、お前、妖怪ってバレたな?あいつは兄弟を妖怪に殺されたとかで憎んでるからな。」

「いや知りませんよ。あんなに頑張ったのに何もないんですか。ひどいですよ国家権力は!」

「別に知らんよ? オメーの対応は悪かったんだろ?目立つなよ。」

「いや普通にしてただけです。目立っちゃったのはたまたまです。」

「絶対嘘だが、自分で信じ込んでるからタチが悪(わり)い。」

晴明は呆れたようにため息をついた。

「とりあえず、なんの報酬もないなんて信じられません。師匠がなんとかしてください!」

「そうは言われてもなあ。」

「そこをなんとか。」

「うーん。⋯⋯ん? そうか。そういえばそうだな! よし、しばらく待っとけ。」

晴明の表情がとても生き生きし始めた。なんらかのいたずらでも思いついた顔だ。

「ひどいことにはしないでくださいね。」

「我の経験値をなめるなよ?取り繕うくらい簡単だ。」

晴明が意気揚々と内裏に向かうのを見ながら、夜はとても不安になっていた。
師匠は、時々とんでもないことをしでかすからなあ。

まあ、待てと言われれば待とう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...