異界の師、弟子の世界に転生する

猫狐

文字の大きさ
126 / 198
三章 破滅のタルタロス

タルタロス侵攻 1

しおりを挟む
「……ん」
目を覚ますと横に寝息を立てながら転がるシアを見つけた。見つけたと言うより、包み込まれているの方が正しいか。
(そうか。昨日寝ちゃって……何だったんだろう)
昨日は鍛錬で使いすぎた記憶も特に何もしていた訳では無いのに。気の緩みだと思って光魔法で部屋を照らして時計を確認する。
(三時か。……起こすかな。侵攻開始は四時だ)
そう思って包まれた状態でシアに声をかける。
「シア、シア。起きて」
「……ん……んぅ……?」
いつもよりかなり早いからだろう。とても眠そうな声を上げながら手が離れる。体温が遠ざかる感覚にどこか寂寥感を覚える自分に苦笑しながら言う。
「三時。少し早いけど皆を呼びに行くよ」
「……んぅ!レテ君、大丈夫?昨日倒れていたけど……」
ぱちりと目を開けるとばっと起き上がってこちらを見て問いかけてくる。うん、と頷くとほっとした様子の彼女が見えた。
「良かった。魔力切れで帰っちゃったから……」
「……魔力切れ?」
おかしい。魔力切れなんて感覚では無かった。魔法も使えたはずだ。
「うん。昨日の昼間、皆の魔法を打ち消してくれたから」
「……そんなに魔力使ってないぞ?あれ。ぶつけただし……。まあいいか。ちょっと皆の部屋を回って呼んでくるよ」
そう言って皆の部屋を回る為に門を開く前。シアがぽつりと呟いたのが聞こえた。
「……背負わせすぎた、かな」
その言葉に違うと言うことは出来ず、聞かないふりをして皆の部屋を回りに行った。
数十分後。寝起きが意外に悪かったクロウを叩き起して皆が部屋に集まる。
「少し早いけど恐らく侵攻の準備は既に開始している。……自分達も向かうよ」
そう言ってブレスレットに魔力を通してアグラタムに連絡をする。
「こっちは全員起きた。父さんに見つかるとごたつくから頃合いを見て迎えに来てくれ」
「……了解しました。変な所を気にするのですね、貴方は」
そう言って連絡を切ると、後ろから不思議そうな声が聞こえる。
「なんか……タメ口だよね」
「だよなぁ。守護者様にタメ口かぁ……」
(……突っ込まないでおいてくれると助かる)
自分の失言に軽く後悔しつつも門が開くのを待った。

数分後。門が目の前に現れると中からアグラタムが出てくる。
「どうぞ、こちらへ。玉座の間へと繋がっています」
「ありがとう……ございます。……皆、行くぞ」
軽く口調を直した事にどこか不思議だったのかアグラタムは首を傾げるが、自分はそそくさと門に入った。
門を出ると、朝日が昇る中イシュリア王が戦闘服であろう動きやすそうな服で待機していた。王としての威厳ではなく戦闘のしやすさを重視したであろう服だ。それでも豪華だが。
「……幼き兵士たち。いらっしゃい。ここからは戦場。生きて帰る覚悟をしっかりと持ってちょうだい」
「ハッ!」
そう言って敬礼すると、双子が即座に続き、それに倣うように他の皆も敬礼をする。
「……これで兵は全てでございます。イシュリア王」
玉座の間に所狭しと並んだ兵士を見ながらアグラタムが総括する。その一言を聞いて玉座からゆっくりと王が立ち上がる。
「……往くぞ。我らが国を……世界を護りに。我が民の為に!イシュリアに栄光を!」
「「イシュリアに栄光を!」」
「「我らが民の為に!」」
声高らかに宣言したイシュリア王に続いて兵士が続く。士気を高めるためだろう。実際皆の士気は高い。鼓舞は成功だろう。
「……では先鋒隊!門を開けッ!突撃せよッ!同時にミヤコの裏に一部隊展開!幼き兵士と共に連絡を取り合え!」
その号令と共にファレスとフォレスは前に出て、それぞれが持ち場へと移動する。
「大丈夫。私達なら出来る」
「……平気。私達の愛するイシュリアの為に」
そう言って二人は互いに強く手を握ると、離れて別々の門へと入っていった。
それを見ながらイシュリア王が何かに気づいたようにこっちを見てくる。どうしたのかと思うと直接脳内に声が響いてくる。
(……貴方、洗脳を解いたのね……)
やはり、あれは洗脳だった。イシュリア王は理由を付けて子供を戦場に行かせる気は無かった。けれど……。
(幼き兵士。そう頼りにされ、そう託されたのが我々です。……イシュリア王よ。彼らは、彼女たちは命を失う『覚悟』が出来ているのですよ)
魔力で伝え返す。少し暗い顔をした後、ぐっと持ち直して宣言する。
「……期を待て!そして無駄にするな!」

タルタロス最前線、ティネモシリ。そこにはファレスと兵士が配置されていた。
魔法で援護をかけながら武術に長けた者が突撃して行く。その異変に気づいた住人が慌てて飛び出してくる。
「連絡します」
そう言うと人格を交代した。

タルタロスが首都、ミヤコの裏にて。一部隊が待機している中不意にフォレスと名乗っている少女が話した。
「ティネモシリに動きあり。未だ武装した影は居ない模様」
「了解。こちらの動きもまだ無いと伝えてくれ」
広域探知している魔術師の観測からそう言うと、フォレスの中の『ファレス』は人格を入れ替えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

処理中です...