運命の番じゃないあなたを愛している

明太子

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29.運命の番に捨てられた身

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それどころか今思えばレイモンドに対しても性的な衝動に駆られたことはなかった。
だから2人は長いこと清らかな関係のままであり、そこを浮気相手であるメイリンに上手いこと突かれてしまったのだが。

しかしながら、ソニアは護衛対象であるヴォルフとの関係が変わっていくかもしれないことに戸惑いを覚えつつも、なぜだか彼と性的な関係を結ぶ可能性に不思議と嫌悪感は全くなかった。

「どうせ運命の番に捨てられた身なんだ。どうとでもなりやがれ!」

投げやりが入り混じった決意をソニアは独りごちた。

そして丸1日休んで、翌晩からヴォルフに貰った抑制剤を飲み始めた。
次の日から復帰したものの、どうしても互いに意識してしまって、ソニアとヴォルフの仲は少しぎこちない。
幸いにもその機敏を幼いベリルには気付かれることはなかった。

上辺だけ取り繕った冷戦のような2人の関係は反比例して、彼らの心の水面下でそれぞれ熱を高めていった。
特にソニアに至っては何食わぬ顔をしながら、時折ヴォルフに抱かれる自分を想像した。

誰にも触れられたことのない場所をヴォルフだけが触れる。
誰にも見られたことのない惚けた表情をヴォルフだけに見せる。
誰にも聞かれたことない甘い喘ぎ声をヴォルフだけが聞く。
そう考えるだけでたまらなく興奮した。

しかし、そういった経験が一切ないソニアは結局いつも最後まで上手く思い浮かべることはできなかった。
それでも毎回その後には必ず自身の中にあるオメガの部分がどんどん芽吹いているのだと自覚させられた。
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