俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね？〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

53．シャルドナ王国の英雄

「補強…？そんなことしなくたって充分強いのに」
「まだ憶測の範囲は超えないけれども、軍の要であるゾーイ大将軍に関係しているんだろう」

シャルドナ王国の大将軍ゾーイ・ライアンは生ける伝説と称される人物だ。

18年前、隣国キリムドゥーサ帝国から侵攻されたシャルドナ王国は王都のカシュヌが陥落する寸前にまで追い詰められた。
国民はおろか王族ですら、敗北を覚悟するほどの危機だった。
しかしながら、当時近衛隊隊長であったゾーイだけは
まだ勝利を諦めていなかった。

兵力が激減した不利な状況下でも自身が得意とする土魔法を駆使して、押し寄せるキリムドゥーサ帝国の軍勢をねじ伏せるという目覚ましい活躍を見せたのだ。
彼の働きに鼓舞されたシャルドナ王国軍は劣勢だった戦況を覆し、ついには侵攻を退けるに至った。

この戦果によって彼は英雄として国内外にその名を轟かせ、今でも畏怖と憧憬の対象として、その動向が注目され続けている。

「半年弱、彼は表舞台から姿を消している。噂では大将軍の座を辞職したとか。その真偽は定かではなかったが、シャルドナ王国をこの目で見て、噂は真実である可能性が非常に高いと感じた。ゾーイ大将軍はどれだけ忙しかろうと常日頃からリリオ王に侍っていた。なのに、今回は1度も彼を見かけていないんだ」