俺のこと、冷遇してるんだから離婚してくれますよね？〜王妃は国王の隠れた溺愛に気付いてない〜

88．王は秘密を抱えている

2人の幸せな様子に俺は胸を熱くした。
それはキースも同じだったようで、満足そうに微笑んでいる。

そんな横顔を見つめながら、先程ゾーイ大将軍に言った『秘めた想い』や『打ち明けなかった後悔』という言葉がふと脳裏をよぎる。

あれには俺とのことも含まれているのだろう。
たぶん不倫の件も。
キースは俺が不倫現場を目撃したことを気付いていないから、モネとの関係も知らないと思っているに違いない。

夫婦としての俺たちの関係を修復していくためにも、きちんと不倫について腹を割って話す必要がある。
秘めた想いや後悔なんて失くすべきなんだ。

「あ、あの、キースも何か俺に言いたいことあるんじゃないのか？」

緊張から回りくどい聞き方になってしまった…。
心の中で決意しても、実際に行動に移す時に勇気って半減する気がする…。

「何かってなんだ？」
「隠してることとか…、ない…？」
「そうだな…」

キースの意味深な瞳は口籠る俺を捉えて離さない。
腹に一物ありそうなその顔つきに俺の胸は不安でざわついた。

「秘密ならたくさんある。でも、今はまだ言えない」

キースの返答に俺は頭が真っ白になる。

そして、「どうして言えないの？言ってくれないの？」という俺の中に生まれたたった一言は喉の奥で言葉にならないまま、飲み込まれた。

覚悟はしていたけれども、真実を聞くのが怖い。
想像よりもずっと冷たい現実がそこにある気がして。
だから、それ以上は何も聞けなかった。