洛楽倶楽部!〜京都のボッチ大学生が学生生活を彩るために京都を堪能するサークルを作ってみます〜

大原銀杏

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第3話 サークル結成!?

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 満開の桜が京を彩る時期はもうすでに終了し、新緑は盛れども初夏と呼ぶにはまだ早い4月の下旬。穏やかな暖かさが生けるものの活動を活発にさせ、冬の忘れ物がそんなものたちの少し火照った体をひんやりと抱擁する。1年のうちで最も過ごしやすい部類に入るこの気持ちの良い爽やかな日に、トオルは陰湿なストーカー行為を受けていた。

「だあ、もう!いつまでついてくるんだよ!」

 忙しない昼休みの大学構内で、トオルは煩わしそうに声を荒げる。

「そんな邪険にしなくても良いではありませんかトオル殿!あたくしたちは己の体の一部を接触し合った仲だというのに」

「意味ありげな言い方しないでくれるかな!?握手しただけだから!」

 トオルが昨日、ふらっと立ち寄った龍安寺で出会ったこの長髪眼鏡の男、山城ススムは、今日の1限から空きコマに至るまでトオルのそばに張り付いて離れなかった。トオルは最初こそススムと話すよう努めたが、それもすぐにやめた。

「とにかく、少しは自由にさせてくれ」

「もう、何をそんなに嫌がっているのですか。仲の良いもの同士が一日中一緒にいることなど、別に普通のことではありませぬか」

「ああ、それは普通だとも。けど、トイレの個室にまで一緒に入ってきたり、自分がとってもない講義にまでついてきたりするのはさすがにおかしいだろ!しかも喋るでもなく、真剣に講義聞いてるのがさらに怖い」

 トオルは、今日1日のススムのおかしなところをつらつらと吐き出しながら、学食のカウンター席に座る。すると、ススムも当然とばかりにトオルの横に座った。

「……山城くん、なんで横に座った」

「あたくしのことはヤマさんとでもお呼びください」

「じゃあヤマさん。俺は自由にさせてくれと言ったはずだが?」

「いやいやトオル殿!これはたまたま席が隣になってしまっただけであります」

 トオルは、カウンター席の仕切りの上から顔を覗かせ、辺りを見渡す。見たところここ以外の席は埋まってしまっているようだ。

「はあ……じゃあまあそれはいいよ。でも、ずっと付き纏うのはやめてくれ。流石にまだそこまでの仲ではないだろ。仲良くしたいとは思っているけど」

 トオルはオブラートに包まず正直に思っていることを伝えた。こういうことははっきり言ってしまった方が、その後の関係を築いていくためにもいいはずだ。仲良くしたいというのは本心なのだから。

「それはそうとしてトオル殿」

「聞いちゃいないな」

「あたくしこんなものを作ってきたのです」

 ススムはリュックの中から一枚の紙を取り出した。

「何これ?チラシ?」

「まあそのようなものでございます」

 トオルは紙に軽く目を落とす。色はなく、殴り書かれたような汚い文字と絵が描かれていた。

「なんだこれ、なんかの建物の絵かな?んーと、サークルメンバー……募集?ん?マジでなにこれ」

「あたくし山城ススム。この度サークルを立ち上げることにいたしました!」

 ススムは拳を体の前で握り、勢いよく席を立つ。

「サ、サークルだと!めっちゃいいじゃんヤマさん!」

 トオルは興奮したように顔を輝かせる。1回生のときに入らなかったことを後悔し、2回生になった今では半ば諦めていたが、トオルはサークルというものに大変興味があったのだ。

「ふふふ、そうでしょう。もちろん、トオル殿はもうサークルの一員でございますよ」

「お、おお……!それはちょっと嬉しいな。ちなみにどんなサークルなの?」

 トオルは好奇心を抑えられない様子でススムに尋ねる。

「ズバリ、京都を観光して満喫するサークルにございます!サークル名は『京都を満喫しようの会』であります!」

 ススムはカウンターテーブルに置いてある先ほどの紙を力強く指差した。指の先には崩れた文字で「京都を満喫しようの会」と書かれていた。

 トオルは眉を八の字にする。

「……なにその謎のサークル。俺やっぱいいや」

「な、なにを申されますかトオル殿!」

「いやそれさ、別にサークルである必要ないじゃん。サークル入らなくても京都なんて観光できるし」

 そう言うと、トオルは冷めたようにスマホをいじり始めた。

「し、しかし!複数人で行くことによって、更に充実した京都観光ができるというものではないですか!」

「それはそうかもだけど、それだったら個人的に誰か誘って行くよ」

「友達がいないのにですか?」

「うぐっ」

 トオルはまるでみぞおちを殴られたかのように疼くまる。

 ススムは疼くまるトオルに近寄り、小さな声で続ける。

「それにトオル殿、サークルにいれば、いつか入ってくるであろう新メンバーと新たな人脈・友情が生まれるやもしれませんぞ」

「そ、それは……」

「さらにさらに、あたくしの膨大な京都の知識を吸収すれば、京都デートをした際に女性を満足させることも可能になります。そうすれば、念願の彼女も……」

「入ろう。俺もこのサークルの一員だ」

 トオルは意外にもゴツゴツとしたススムの手を握る。龍安寺でした純な握手とは違う、少しよこしまな握手だ。

「そう言ってくれると信じていましたぞトオル殿。では!善は急げです!早速このチラシを構内に貼りに行きましょうぞ!」

 ススムはリュックの口を大きく開け、トオルに見せる。そこには先ほどの簡素なチラシが大量に入っていた。

「え、今から!?ちょっと待ってよ、飯も食べてないのに。てか、その汚いチラシ作り直そうよ!あとサークル名もダサいから変えない?」

「汚いとはなんですか!それにサークル名も昨日徹夜して考えたのです!変えるつもりはありませぬ!ほらトオル殿、立った立った!」

 ススムに腕を引っ張られたトオルは、困惑しながらも学食を勢いよく飛び出した。
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