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第2章 俺以外の転生者
第17話 魔力の乱れ
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何で魔物の姿になっているのか、全くもって見当がつかない。
自分の意思で魔物になった訳じゃないから……まさか、異世界での『人間』としての人生が終了したから、次は魔物に転生したっていう事なのか!?
なにそれ!? 何で格下げなの!?
少なくとも、俺がニルに殺される前までの異世界と同じだって事は分かるし……死に戻りした、って訳じゃなさそうだな。それだったら俺が魔物の姿になっている説明がつかない。
ああもう……何で誰も説明してくれないんだよ!!
「もうすぐ……僕らの住処に着きます!」
「え?」
カインズとスラングの後を追いながら森の奥へ進む。すると、生い茂る木々の奥に神木とも言えるほど一際大きな1本の気が見えた。
2体は、その一際大きな木の根元に何の躊躇もなく突っ込んだ。2体の姿は気に同化したかように消え失せる。
「あれ? ど、どこ行った!?」
2体が突っ込んだ木の根元に恐る恐る近付くと、木の根元の藪の奥に子ども一人くらいなら通れそうな穴が開いていた。丁度、薮で木の根元の穴が隠れていたようだ。
穴の中は日の光が行き届かずどこへ続いているかも分からなかった。ただ、微かに誰かの話し声が聞こえてくる。
「おーい! 君も早く下りてきなよ!」
穴の奥からカインズの声が響いてきた。間違いない、この穴の奥にカインズやスラング、他のマガリイノシシもいるんだろう。
早いところ、コルトやむっくんに会いたい気もするけど、この姿でいる以上は勘違いされてしまうかもしれない。コルトの前に出ようものなら撃ち殺されかねないし……。
しばらくはマガリイノシシとして過ごすしかないのか……いいや、元に戻れるとは限らない訳だし、一生このままってことも!?
ううっ……今度は魔物として一生を過ごさなきゃいけないなんて、何で俺ばっかり。
本当、何度も言うけどマジで訳が分かんない!
俺はヤケクソになりながら穴へと飛び込んだ。
「え!? ちょ!? ガッ! ブヘッ! グッ!」
穴は思ったよりも傾斜が酷く、ほぼ直角と言って良いほどの傾斜だった。
上手く自分の体重を支えられず、壁や地面に次々と叩きつけられ、穴を転げ落ちる。
痛みはあまりないけれど、衝撃までは吸収できないのか……この体。
「うわっ!?」
急に体が投げ出されたような感覚がしたかと思えば、すぐに地面に叩き付けられた。
魔物として過ごしていくなら、四足歩行に慣れないとな……バランス崩してばっかりだと今後の生活に支障が出てしまう。
「おいおい、お前大丈夫か?」
「あっ、何とか大丈夫です……って、ええ!?」
アニキと呼ばれていたマガリイノシシの声が聞こえて俺は立ち上がる。
すぐそばに立っていた4体のマガリイノシシの姿に俺は愕然とした。
二本の足で地に立ち、蹄だった手足には5本の黒い指が備わっていた。
オルクスほど醜い姿でないようだが、それでも外見はとても人間だとは言えない。身体中は毛で覆われ、愛嬌のある豚鼻も健在だった。
「な、何で!? さっきまで魔物の姿だったのに」
「ああ……俺達は低級魔種から進化した中級魔種なんだ。俺達はマガリイノシシから進化したオークリア、メスはオークシアだ。俺がフェイス、お前を案内したのがカインズとスラング、女はグリブだ」
中級魔種って……また初めて聞くフレーズじゃないか。マジで頼むから、この世界のいろいろな事を一冊に書き留めたガイドブックを寄越してくれ。大体、どうしてこの世界は俺に不親切なんだよ!
ただ、魔物にも名前があるのは初耳だった。俺達のような人間と同じように生まれた瞬間から名前を付ける文化でも根付いているんだろうか。
「アンタも中級魔種じゃないの? 見たところ低級とは思えない魔破を感じるわよ?」
片目が髪で隠れた野生感のある女性が俺に声をかけてくる。髪は薄い灰色で凛々しい目つきをしていた。
この声……スラングと言い争っていたマガリイノシシだ。
……あれ? 確か、俺の魔破は欠片も無かったはずだけど……転生して姿形が変わったから、そういうところも変化したのか?
「おいおい。そんなに顔を近付けてやるなよ。お前の顔面は劇物だから、そんなに近付けたらコイツ失神してしまうぜ?」
俺に声をかけるグリブに横槍を入れるスラング。
グリブはスラングの顔を、眉を寄せてまじまじと見ながら首を傾げた。
「……? 誰?」
「スラングだよ!」
「そんな……アイツはもう今頃、猪鍋になっているはずなのに……まさか、生き別れの兄弟!? いや、腹違いって事もあるだろうし」
「アホか! 本人だよ! 大体なんで兄弟もスラングって名前なんだよ。ややこしいだろ! 母ちゃん大変だろ覚えるの!」
おお……見事なまでのツッコミ。それにあれだけ早口でツッコミ入れたのに一度も噛まなかった。
「私はいいと思うけどなぁ。少なくとも、アンタには似合いの名前じゃない。スラングってさ」
「なっ!? そ、そういうお前こそ、グリブって名前はピッタリだと思うぜ」
そうなのか……って、こいつら、そんな意味の名前を付けられていたのか。イジメられるだろそれ。
カインズは確か『親切』って意味だから、悪いものばかりってことではないと思うけど、じゃあ兄貴って呼ばれていたこのマガリイノシシの名前、フェイスってどんな意味が? 普通に考えたら『顔』だよな? 顔??
「ま、まあ二人とも喧嘩はそのくらいにして……」
「しゃしゃり出てきてんじゃないわよ!」
「引っ込んでろ!」
「ひうっ!?」
またも喧嘩の仲裁に入ろうとしたカインズは逆に二人に気圧されて尻込みしてしまう。
俺……この子が『臆病者』の名前に相応しいと思うんだけど。それを言ったら可哀想だよな。
「まあ、こんな風に騒がしいが許してくれ。悪い奴らではないからな」
「いえいえ……何と言うかその、大変ですね」
「……慣れればどうという事もない」
俺の言葉にフェイスはしばらく沈黙した後、俺から目を逸らしてそう呟いた。
……最初の頃は苦労があったんだな。
「それよりも……お前も俺達と同じ姿になったらどうだ?」
「え? ……えっと」
フェイスに言われて俺は口籠ってしまう。
人型になる方法なんて分かる訳ない……けど、ここで知らないなんて言ったら怪しまれるんじゃないか?
まさか人間が魔物になったなんて思いもしないだろうけど。
「……もしかして、やり方分からないのか?」
「え!? あ、はい! あっ……」
や、やばい! 思わず返事をしてしまった。
教えてもらわなきゃどうにもならないのは分かっているけど……ああもう、仕方ない! なるようになれだ!
「って事は、中級魔種になって間もないって事か……なに、簡単さ。人間の姿をイメージするだけで良い」
「人間の姿をイメージ? それって誰でも良いんですか?」
「まあ、誰をイメージしたところで、その人間の姿形を模倣出来るわけじゃないからな。人間の姿形がどういうものなのかイメージ出来ればそれでいい」
そんな事で良いのか? それだけでいいのなら簡単そうだけど。
イメージの材料は自分の姿にでもするか。その方が無難だし。
俺はフェイスに言われるがまま、自分の人としての姿をイメージしてみた。
頭の中で自分の姿をイメージしだすと、すぐに自分の体から軽く熱した鉄板に水を零したような蒸発音が鳴り始める。
それに伴って、徐々に体が火照り始めた。
「……な、何これ? 体が……熱い」
「最初に、初級魔種が中級魔種に変身しようとすると、そう言った副作用が起こるんだ。まあ、体の急成長が起こるからとか、そんなんだと思うんだが」
「そ……そうなんですか?」
そう話している内にも蒸発音とともに体からいろい煙のようなものが立ち込め始める。
それはどんどん俺の体を包み込み、視界が白くなるほど濃い煙が周りに立ち込めた。
その途端、ゆっくりと目線が上がり、地面についていた両前足が地面から離れる。
「おおっ、無事に完了したみたいだな」
「そうだと良いんですけど」
フェイスの声は聞こえるものの煙で前が全然見えない。
そもそも、無事に完了したって……無事で済まない事があるのか?
そう考えているうちに、立ち込めていた煙は晴れ、フェイス達の姿が現れた。
フェイスとは背丈が違うようで、頭一つ分俺の方が低いようだ。それ以外ではあまり見かけは変わらず、他の3人と背丈は同じだった。
手にも足にもちゃんと左右五本ずつ指が備わっているが、人間と比べて全体的に皮膚が硬く分厚い。手や足の皮膚も硬いが指を曲げられる程度には余裕があるようだ。
どうやら本当に、俺の体は獣人へと姿を変えたようだな。
本当……どうなってんだよ。次から次へと、色々と謎過ぎて頭が付いていかないんだけど。
「というか、何でマガリイノシシの姿からオークリアの姿になれるんですか? そもそもどっちにも変身できるなんて事、普通はあり得なくないですか?」
正直、ゲームやアニメの知識しかないけれど、どの魔物も変異や進化した魔物が元の姿に戻れるなんてものはなかった。変異や進化後の魔力がかなり減った時に一時的に元の姿に戻るなんてことはあったけれど。
「あの一帯の魔力が乱れているせいだろうな。ここ2、3日の間であの街付近の土地の魔力が乱れているんだよ。誰かが馬鹿みたいに魔力を使ったのかもしれないけど……そのせいで、ここ以外でこの姿ではいられなくなったのさ。ここから抜ければ強制的に一つ下の姿になってしまうんだよ」
「まったく、酷いものッスよ。オークリアの姿でいられれば人間なんて二秒でチョンなのに」
スラングは不満げに顔を顰めて溜息を吐く。
魔力の乱れか……最近でいえば、クローディアとの戦闘の時は多くの人が魔法とか色々使っていた訳だし、ここら一帯は被害が大きかったはずだ。今思えば、焼け跡も綺麗さっぱりなくなっていたから、その修復のために魔力を使ってしまったせいで乱れているって事なのか?
「そんな事を言っても仕方ないだろ? 俺達はそれに適応していくしかない。しばらくは様子を見るしかないと思うぞ」
「わ、わかっているッスよ!? ただ不便だなって思っただけで」
フェイスに諭され、スラングは慌てて弁明する。
何にしても、とりあえずは落ち着いたって事で……って、あれ? あ、あれれ!?
とりあえず自分の状況を把握出来たところでホッとしたのも束の間、すぐに新しい疑問が沸き起こる。
……俺の武器、どこいった!?
自分の意思で魔物になった訳じゃないから……まさか、異世界での『人間』としての人生が終了したから、次は魔物に転生したっていう事なのか!?
なにそれ!? 何で格下げなの!?
少なくとも、俺がニルに殺される前までの異世界と同じだって事は分かるし……死に戻りした、って訳じゃなさそうだな。それだったら俺が魔物の姿になっている説明がつかない。
ああもう……何で誰も説明してくれないんだよ!!
「もうすぐ……僕らの住処に着きます!」
「え?」
カインズとスラングの後を追いながら森の奥へ進む。すると、生い茂る木々の奥に神木とも言えるほど一際大きな1本の気が見えた。
2体は、その一際大きな木の根元に何の躊躇もなく突っ込んだ。2体の姿は気に同化したかように消え失せる。
「あれ? ど、どこ行った!?」
2体が突っ込んだ木の根元に恐る恐る近付くと、木の根元の藪の奥に子ども一人くらいなら通れそうな穴が開いていた。丁度、薮で木の根元の穴が隠れていたようだ。
穴の中は日の光が行き届かずどこへ続いているかも分からなかった。ただ、微かに誰かの話し声が聞こえてくる。
「おーい! 君も早く下りてきなよ!」
穴の奥からカインズの声が響いてきた。間違いない、この穴の奥にカインズやスラング、他のマガリイノシシもいるんだろう。
早いところ、コルトやむっくんに会いたい気もするけど、この姿でいる以上は勘違いされてしまうかもしれない。コルトの前に出ようものなら撃ち殺されかねないし……。
しばらくはマガリイノシシとして過ごすしかないのか……いいや、元に戻れるとは限らない訳だし、一生このままってことも!?
ううっ……今度は魔物として一生を過ごさなきゃいけないなんて、何で俺ばっかり。
本当、何度も言うけどマジで訳が分かんない!
俺はヤケクソになりながら穴へと飛び込んだ。
「え!? ちょ!? ガッ! ブヘッ! グッ!」
穴は思ったよりも傾斜が酷く、ほぼ直角と言って良いほどの傾斜だった。
上手く自分の体重を支えられず、壁や地面に次々と叩きつけられ、穴を転げ落ちる。
痛みはあまりないけれど、衝撃までは吸収できないのか……この体。
「うわっ!?」
急に体が投げ出されたような感覚がしたかと思えば、すぐに地面に叩き付けられた。
魔物として過ごしていくなら、四足歩行に慣れないとな……バランス崩してばっかりだと今後の生活に支障が出てしまう。
「おいおい、お前大丈夫か?」
「あっ、何とか大丈夫です……って、ええ!?」
アニキと呼ばれていたマガリイノシシの声が聞こえて俺は立ち上がる。
すぐそばに立っていた4体のマガリイノシシの姿に俺は愕然とした。
二本の足で地に立ち、蹄だった手足には5本の黒い指が備わっていた。
オルクスほど醜い姿でないようだが、それでも外見はとても人間だとは言えない。身体中は毛で覆われ、愛嬌のある豚鼻も健在だった。
「な、何で!? さっきまで魔物の姿だったのに」
「ああ……俺達は低級魔種から進化した中級魔種なんだ。俺達はマガリイノシシから進化したオークリア、メスはオークシアだ。俺がフェイス、お前を案内したのがカインズとスラング、女はグリブだ」
中級魔種って……また初めて聞くフレーズじゃないか。マジで頼むから、この世界のいろいろな事を一冊に書き留めたガイドブックを寄越してくれ。大体、どうしてこの世界は俺に不親切なんだよ!
ただ、魔物にも名前があるのは初耳だった。俺達のような人間と同じように生まれた瞬間から名前を付ける文化でも根付いているんだろうか。
「アンタも中級魔種じゃないの? 見たところ低級とは思えない魔破を感じるわよ?」
片目が髪で隠れた野生感のある女性が俺に声をかけてくる。髪は薄い灰色で凛々しい目つきをしていた。
この声……スラングと言い争っていたマガリイノシシだ。
……あれ? 確か、俺の魔破は欠片も無かったはずだけど……転生して姿形が変わったから、そういうところも変化したのか?
「おいおい。そんなに顔を近付けてやるなよ。お前の顔面は劇物だから、そんなに近付けたらコイツ失神してしまうぜ?」
俺に声をかけるグリブに横槍を入れるスラング。
グリブはスラングの顔を、眉を寄せてまじまじと見ながら首を傾げた。
「……? 誰?」
「スラングだよ!」
「そんな……アイツはもう今頃、猪鍋になっているはずなのに……まさか、生き別れの兄弟!? いや、腹違いって事もあるだろうし」
「アホか! 本人だよ! 大体なんで兄弟もスラングって名前なんだよ。ややこしいだろ! 母ちゃん大変だろ覚えるの!」
おお……見事なまでのツッコミ。それにあれだけ早口でツッコミ入れたのに一度も噛まなかった。
「私はいいと思うけどなぁ。少なくとも、アンタには似合いの名前じゃない。スラングってさ」
「なっ!? そ、そういうお前こそ、グリブって名前はピッタリだと思うぜ」
そうなのか……って、こいつら、そんな意味の名前を付けられていたのか。イジメられるだろそれ。
カインズは確か『親切』って意味だから、悪いものばかりってことではないと思うけど、じゃあ兄貴って呼ばれていたこのマガリイノシシの名前、フェイスってどんな意味が? 普通に考えたら『顔』だよな? 顔??
「ま、まあ二人とも喧嘩はそのくらいにして……」
「しゃしゃり出てきてんじゃないわよ!」
「引っ込んでろ!」
「ひうっ!?」
またも喧嘩の仲裁に入ろうとしたカインズは逆に二人に気圧されて尻込みしてしまう。
俺……この子が『臆病者』の名前に相応しいと思うんだけど。それを言ったら可哀想だよな。
「まあ、こんな風に騒がしいが許してくれ。悪い奴らではないからな」
「いえいえ……何と言うかその、大変ですね」
「……慣れればどうという事もない」
俺の言葉にフェイスはしばらく沈黙した後、俺から目を逸らしてそう呟いた。
……最初の頃は苦労があったんだな。
「それよりも……お前も俺達と同じ姿になったらどうだ?」
「え? ……えっと」
フェイスに言われて俺は口籠ってしまう。
人型になる方法なんて分かる訳ない……けど、ここで知らないなんて言ったら怪しまれるんじゃないか?
まさか人間が魔物になったなんて思いもしないだろうけど。
「……もしかして、やり方分からないのか?」
「え!? あ、はい! あっ……」
や、やばい! 思わず返事をしてしまった。
教えてもらわなきゃどうにもならないのは分かっているけど……ああもう、仕方ない! なるようになれだ!
「って事は、中級魔種になって間もないって事か……なに、簡単さ。人間の姿をイメージするだけで良い」
「人間の姿をイメージ? それって誰でも良いんですか?」
「まあ、誰をイメージしたところで、その人間の姿形を模倣出来るわけじゃないからな。人間の姿形がどういうものなのかイメージ出来ればそれでいい」
そんな事で良いのか? それだけでいいのなら簡単そうだけど。
イメージの材料は自分の姿にでもするか。その方が無難だし。
俺はフェイスに言われるがまま、自分の人としての姿をイメージしてみた。
頭の中で自分の姿をイメージしだすと、すぐに自分の体から軽く熱した鉄板に水を零したような蒸発音が鳴り始める。
それに伴って、徐々に体が火照り始めた。
「……な、何これ? 体が……熱い」
「最初に、初級魔種が中級魔種に変身しようとすると、そう言った副作用が起こるんだ。まあ、体の急成長が起こるからとか、そんなんだと思うんだが」
「そ……そうなんですか?」
そう話している内にも蒸発音とともに体からいろい煙のようなものが立ち込め始める。
それはどんどん俺の体を包み込み、視界が白くなるほど濃い煙が周りに立ち込めた。
その途端、ゆっくりと目線が上がり、地面についていた両前足が地面から離れる。
「おおっ、無事に完了したみたいだな」
「そうだと良いんですけど」
フェイスの声は聞こえるものの煙で前が全然見えない。
そもそも、無事に完了したって……無事で済まない事があるのか?
そう考えているうちに、立ち込めていた煙は晴れ、フェイス達の姿が現れた。
フェイスとは背丈が違うようで、頭一つ分俺の方が低いようだ。それ以外ではあまり見かけは変わらず、他の3人と背丈は同じだった。
手にも足にもちゃんと左右五本ずつ指が備わっているが、人間と比べて全体的に皮膚が硬く分厚い。手や足の皮膚も硬いが指を曲げられる程度には余裕があるようだ。
どうやら本当に、俺の体は獣人へと姿を変えたようだな。
本当……どうなってんだよ。次から次へと、色々と謎過ぎて頭が付いていかないんだけど。
「というか、何でマガリイノシシの姿からオークリアの姿になれるんですか? そもそもどっちにも変身できるなんて事、普通はあり得なくないですか?」
正直、ゲームやアニメの知識しかないけれど、どの魔物も変異や進化した魔物が元の姿に戻れるなんてものはなかった。変異や進化後の魔力がかなり減った時に一時的に元の姿に戻るなんてことはあったけれど。
「あの一帯の魔力が乱れているせいだろうな。ここ2、3日の間であの街付近の土地の魔力が乱れているんだよ。誰かが馬鹿みたいに魔力を使ったのかもしれないけど……そのせいで、ここ以外でこの姿ではいられなくなったのさ。ここから抜ければ強制的に一つ下の姿になってしまうんだよ」
「まったく、酷いものッスよ。オークリアの姿でいられれば人間なんて二秒でチョンなのに」
スラングは不満げに顔を顰めて溜息を吐く。
魔力の乱れか……最近でいえば、クローディアとの戦闘の時は多くの人が魔法とか色々使っていた訳だし、ここら一帯は被害が大きかったはずだ。今思えば、焼け跡も綺麗さっぱりなくなっていたから、その修復のために魔力を使ってしまったせいで乱れているって事なのか?
「そんな事を言っても仕方ないだろ? 俺達はそれに適応していくしかない。しばらくは様子を見るしかないと思うぞ」
「わ、わかっているッスよ!? ただ不便だなって思っただけで」
フェイスに諭され、スラングは慌てて弁明する。
何にしても、とりあえずは落ち着いたって事で……って、あれ? あ、あれれ!?
とりあえず自分の状況を把握出来たところでホッとしたのも束の間、すぐに新しい疑問が沸き起こる。
……俺の武器、どこいった!?
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